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広告会社の営業に求められているもの

広告会社に勤めて10年。営業に出て5年。
万人ウケする“これ”といった正解はないだろうと思ってはいるものの最近考える事を書いてみようと思う。

だって広告はあんまり好きではないんだもの。

広告会社にいながら、自分は広告があまり好きではない。
先日もクライアントの方から“あなたは広告を売りつけてこないから大きな案件(TVCM)を取り逃がしてるよ”と言われました。私のことを思ってクライアントさんも気にかけていただいた発言なので本当に有難い。でも言われて直ぐに出た言葉が「いやー、あんまり広告自体に興味ないんですよね」だった。
上司が聞いていたら怒られていたと思う。テレワーク禍における電話越しでの発言で良かった。


発言が矛盾しそうだが「広告」自体は非常に好きですし、興味はある。
日清のいかれたTVCMを見るのは楽しいし、
ドラえもんのコロナ禍での新聞広告がTwitterでバズったのも知ってる。
日能研の電車の広告はいつも考えさせられるし、
宮崎県のPR動画「ウダモシタン小林」は秀逸だと思う。
そう自分にとって広告は「面白いモノ」であって「売るモノ」ではないのだ。

「広告」というアウトプットを求められすぎている
広告会社という立場で提案をするので当たり前ではあるが、クライアントは答えを広告会社に求めすぎていると思う。
なんか今の課題を解決してくれるCreativeが出てくるのでは?
安くて便利な方法知ってるでしょ?
これ旨い事やっておいてほしいな!
こんな場面や話をいただくことが山ほどある。

非常に有難いし、事実上のような話は大体対応できる。
なぜならこなしてきている案件の数がクライアントと圧倒的に違うからだ。
○○という会社が直面している課題は、他の■■という会社でも似たような課題があり、それを解決してきた実績が広告会社にはある。だからクライアントにとって難解な問題であっても、広告会社からすれば左程難しい問題にならない場合が多い。
だからこそアウトプットの「形」を求められることが多くなってしまっているのも事実だ。

その課題、本当に解決する必要あります?

大きな部署になればなるほどよくあるのだが、「何のためにその課題を解決しなきゃいけないのか」を分かっていないクライアントさんは多い。
・予算が余っているから
・上層部から言われているから
・自分(担当者)がしたいから
といった背景で落ちてくる案件は多い。

昔、チラシの制作コンペで半年に一回切り替えているクライアントさんに言ったことがある。「予算もったいないんで年間で使いませんか?」
でもこう返された。「僕もそう思うんです。でも予算決まっちゃってるんで…すいませんがお付き合いください。」
何も間違ってはいない。担当者は予算を正しく消化するために、お客様へのアテンションを再度上げるためにチラシコンペを開催している。
意味がないことは決してないのだ。
だが前のデザインがダメだったとか、効果があったとか、評判が悪かったとかそんなことは関係ない。ここに問題があると個人的には思っている。

そう、何のためにやっているか分からないからだ。

以前担当していたクライアントの担当者に言われたことで心に残っているコトバがある、

あなた達は“広告のプロ”でしょ。だから私たちはあなた達に依頼をする際に“発注のプロ”にならなきゃいけないの

言われた時、感動して少しジーンとしてしまった。
多くの案件は“何のためやる必要があるのか”が不明瞭なことがある。
しかしながら広告会社には知見が蓄積されており、それっぽい答えを返せてしまう。またアウトプットされたものが「形」だと何となく“やった気持ち/解決した気持ち”になってしまう。

一番大事なのはプロセスだと思う。

改めて言うが、私は広告があまり好きではない。
結局「広告」というのは結果であり、「結果論」とされることが多い。
でも一番大事なのは「なぜそれをする必要があるのか」「その結果に何を望むのか」といった根本的な原因を見つける事、それを話し合い、解決へ一緒に向かうプロセスではないだろうか。
そこに広告会社に蓄積されたノウハウを披露する価値があると私は考える。
その結果、出口が「広告」であってもなくても良いのではないだろうか。

会社である以上、売上を上げなければいけない。という原則は理解しているが、日々クライアントへの打ち返しに「売上」で返す必要はないと考える。

先日、インフルエンサー施策を実施したクライアントのレポートで“次の打ち手”を入れ込む箇所に
インフルエンサー施策も大事だが、商品提供を自社から自社の熱狂的なファンへすることで、勝手にインフルエンサーになってくれるのではないか?そういった施策を次回はチャレンジすべきだ。とちょろっと書いた。
レポートの報告会の際もその点にはあんまり言及せず、“気づいてもらえたら嬉しいな”程度の書いていたのだが、報告会の際に気づいてもらえ、「そうこれをやるべきだと考えていたんだよ!」といわれた。
きっと次回の施策にはクライアント自ら実行されると思う。

またもう一つ別の話しをすると、クライアントのDX(デジタルトランスフォーメーション)の相談を受けていた。クライアントの担当者のAさんは普段から会社の垣根なく様々な状況を話してくださる方で、50代にも関わらず30代の私の話にもちゃんと耳を傾けてくれる。本当に有難い方だ。そんな関係値もあり、このDXの構成にもフラットな意見をよく私は言っていた。
・この領域はすでに電通さんでやってるからこっちでまとめた方が後々やりやすいです。
・ここは広告会社ではなく、制作会社なので○○の領域が会社としては得意なはずです。
・御社は将来的にアプリに顧客情報を集約した方が良いですよ
・コンサルのNRIさんが言っていることは正しいです。
などと何様だといわれるような発言もあるが、俯瞰で見て話をすることが結構あった。正直、上記の領域は全部私の会社でも受注できる。でも広告に興味がない自分にとっては自社の売上にするよりも、担当者さんにとって最適な形になることを望む結果、俯瞰した物言いになってしまっている。

プロセスを一緒に歩む作業がこの上なく楽しい。 
こうした会社を伸ばすため、成果を生み出すためにクライアントと一緒に考える時間が個人的には非常に楽しい。これは企業規模にかかわらずだ。
先日、縁あって知り合った企業さんは恐らく広告予算は殆どないと思われる企業さんだが、購入者の方がほぼ全てロイヤルユーザーになっているという稀有なビジネスモデルの企業さんだった。その企業さんと一緒にファンマーケティングを一緒に考えましょう!で今話が進んでいる。(多分上司から見たら売り上げが見込めなさそうな企業なので時間を無駄にするなと言われる気がする。)

弁明までに書いておくと、一応クライアントさんからはFeeという形で幾ばくかの対価をいただいている。それはFeeという名目でもらうこともあれば、管理費だったりするけども。普通に見積もりを比較されるとちょっと高くない?といわれかねない時もあるが、プロセスを共有している分、そこにバリューを感じていただき今の所何も言われていない。
お蔭さまで2019年度は売上目標が未達、粗利目標が達成という変わった成績になったが、自分としては考えて実行してきた形が数字でも綺麗に反映された年だったなと思っており、成功と考えている。

広告会社の営業に求められているもの

長くなったが、自分としては以下のポイントが求められているのではと考えている。


・「なぜ」「なんで」を突き詰めた課題の見直し
=クライアントは根本的な問題を分かっていないことがある
・結果をいきなり売らない、売りつけない
=求められているのは必ずしもアウトプットではないし、アウトプットが正解とは限らない
・クライアントの課題を一緒になって悩む・楽しむ
=そのプロセスが後々信頼につながるし、相手をよく知れることになる


こいったことを考えている広告会社の人が今後も増えていければ、もっと面白い業界になるだろうなと考えています。
少しでも同業界の方に共感いただければ嬉しいです。



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