見出し画像

【2021年AI最新事例】LINEが「超巨大言語モデル」を開発へ

本記事は2020年11月にLINEが発表した「超巨大言語モデル」の開発について、解説した記事です。本内容は2020年11月27日に公開された以下のLedge.aiの記事を参考にしております。
LINE日本語に特化した「超巨大言語モデル」を開発へ「日本語版GPT-3か」

先に結論を記載しておきます。
・LINEがNEVERと共同開発で日本語特化した「超巨大言語モデル」の開発を発表
・日本語に特化したモデルとしては世界初
・実現すれば、ホワイトカラーの仕事に大きな変化をもたらす可能性がある

この記事のポイントです。
①日本語特化した「超巨大言語モデル」ができると何が起きるのかが分かる

▼「超巨大言語モデル」とは何か

まずは「超巨大言語モデル」とは何かについてです。
Ledge.aiの記事内では以下のように説明されています。

膨大なデータから生成された汎用言語モデル「超巨大言語モデル」は、人工知能(AI)で、より自然な言語処理・言語表現を可能にするというもの。
(…中略)
これらは、新聞記事や百科事典、小説、コーディングなどの膨大な言語データを学習させた言語モデルを構築。そのうえでコンテキスト設定をするために、ブログの書き出しやプログラミングコードの一部などを与える「Few-Shot learning」を実行するだけで、さまざまな言語処理(対話、翻訳、入力補完、文書生成、プログラミングコードなど)が可能になり、個々のユースケースを簡単に実現できることが期待される。

一度、別のnoteで解説させて頂いた「GPT-3」の日本語特化バージョンとなっており、実現すれば、様々な業界、業務に影響がある可能性があります。
(GPT-3についての解説はこちら

例えば、GPT-3ができることの一例としては、以下です。
①文章作成(専門的な記事や文学作品など多岐にわたる)
②乱暴な文章を丁寧な文章に変更する
③楽譜を自動生成
④質疑応答(かなり自然な対話に近い形で)
⑤命令の解釈と命令に沿った簡易なプログラミング

GPT-3ではこのようなことができ、今回LINEが開発するものも、
同じような性能になる可能性が非常に高いと思います。

▼どんな影響があるのか

<コールセンターや店舗の電話対応>
まず、短期的に分かりやすい部分での変化としては、コールセンターなどへの導入が進み、電話対応やチャットでの対応が自動化されていくことが予想されます。
企業に問い合わせたり、お店の予約をする際にAIが対応するという世界観です。

実はすでにコールセンター現場や店舗へのAIの導入が進んでおり、一部AIが対応するような企業も増えてきております。
以下はLINEが提供しているAI Callというサービスになります。
https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1273585.html

しかし、まだコールセンターへの導入は市場全体の10%にも満たないのが現状です。理由としては、導入にかかる費用が高いためです。

現状のコールセンター向けのAIシステムは大別すると以下の2つです。
 ①企業ごとに学習させた特化型モデル
 ②GoogleやAmazonが提供するAPIを利用して作られた汎用型モデル

結論から申し上げますと、②は安価であるものの、専門用語などを用いるコールセンターでは実務に耐えず、導入されているものの多くは①になります。
しかし、①は企業ごとに学習するなどの工数やそれに伴うコストがかかります。場合によっては数千万円から数億円レベルになる場合もあり、一部の企業にしか導入が進んでいないのが現状です。

しかし、今回の汎用モデルが完成すると、このコストと精度の問題が解消され、一気に導入が進む可能性があります。そうなると、基本的な質問内容はAIが答えて、より高度で専門的なことや情緒的なことのみを人が対応する可能性があります。

<ライター>
より中期的には、ライターなどの仕事への影響も考えられます。
GPT-3では最初の見出しを書くだけで、その後の文章を生成することができました。恐らく、同様のことができるようになると思います。

文章にはいくつかのタイプがあるかと思います。
①創作物やその方の体験談といった一次情報
②比較や解説記事など一次情報を整理した二次情報(まとめサイトみたいなもの)

①については体験やアイデア自体がオリジナルであるため、文章作成の補助的な役割はできても、完全な代替は難しいと思います。しかし、すでに物語を作成するAIはあるため、AIが多作してそこから人は選定したり、繋ぎ合わしたりする「DJ」のような役割になる可能性はあります。

②については、完全代替の可能性があります。
WEB上における文章の評価は検索エンジンの検索結果で何番目に表示されるかです。検索に最適化して上位に表示させることをSEOなどと呼びますが、世の中の多くのライターがこのSEOを意識した文章を作成しており、上位に表示できるスキルが重要になります。

しかし、今回の汎用モデルができるとAIで大量に文章を作ることができます。
(しかも高精度のものができる可能性が高いです)

AIで多作した文章を、繰り返しSEOで評価がされるようにテスト(いわゆるABテスト)すれば、恐らく人は太刀打ちができなくなるのではないかと思います。

最終的にどういう文章が検索上位になるかはGoogleのAIが判断をしており、どういう風に評価をしているかはブラックボックスのため、本当にそうなるかはわかりませんが、このような変化が起きることは可能性としては高いと思います。

<エンジニア>
さらに中長期になると、エンジニアへの影響も考えれています。
GPT-3が世界を驚愕させたのは、簡単なコードであれば、自動で生成できた点です。また、その指示は大雑把なものでよく、抽象的な概念から具体的なプログラングを行うという、まさに人しかできなかったことができるようになりました。

もちろん、高度なプログラミングや、そもそもどんなものを作ればいいのか、どんな画面なら使いやすいのかなどは人が考える必要があります。
しかし、今後、技術が発展していけば、「こんなアプリを作りたい」とアイデアを投げれば、AIが勝手にアプリを開発してくれるという未来も考えられます。
最近はノーコードやローコードなども盛り上がりを見せていますが、単純にコーディングしかできないエンジニアは今後厳しくなる可能性があると思います。

▼まとめ

いかがだったでしょうか。

中長期で見るとあらゆる可能性がある取り組みだと思いますし、そこにはチャンスがたくさんあると思います。

AI分野では、日本は中国やアメリカに遅れをとっており、画像認識の分野などでは日本市場においても日本の企業はなかなか勝てない状況です。
ただ、言語を扱う分野では、まだ日本企業にもチャンスがあります。
なぜなら、日本語は世界的に見てローカルかつユニークな言語です。そのため、世界の巨大企業も本腰を入れて、日本語の研究には取り組んでおりません。
そのことが日本市場では参入障壁になっていることもあり、この分野は少なくとも日本市場では日本の企業が勝つ可能性があると思います。

これだけの巨大なモデルを作れるのは、日本だと3大キャリアか、LINE、Yahooぐらいだと思っていましたが、LINEはこの分野で日本を引っ張っていく覚悟を感じました。これからも動向に注目していきたいと思います。

今回の記事は以上になります。
ご一読いただき、ありがとうございました。

この記事が参加している募集

最近の学び

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?