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新発売!「経セミe-book No.19:実践で活きる経済学」

突然ですが、経セミe-book No.19「実践で活きる経済学」が発売になりました。『経済セミナー』2020年4・5月号の特集部分だけを電子ブックにバインドしています(税込550円)。新学期がはじまるにあたって、今回の特集をなるべく早く、いつでもお求めいただけて、どこでも読める形で提供したいと思い、このタイミングでのリリースとなりました。

■巻頭では「キャリア」と経済学の話

まずシンプルに、目次です!

コメント 2020-04-18 223331

巻頭の鼎談では、「経済学でキャリアを創る」と題して、経済学を専門的に学び、さまざまな場面で仕事に活かして活躍されている3名の方々にお集まりいただき、ご自身のキャリアを振り返って頂きました。

世界銀行開発金融担当副総裁の西尾昭彦さん
公正取引委員会企業結合課の泉敦子さん
2019年にアマゾンジャパン経済学部門長から東大経済学部へ移籍した渡辺安虎さん

の3名です。渡辺先生は、ワールドビジネスサテライトのコメンテーターとしてもおなじみですね(そして、毎回コメントした内容のバックにある文献をツイッターで紹介されています)。

西尾昭彦さんは現在、世界銀行で開発金融担当副総裁として、世銀の融資政策を統括される立場です。
一橋大学経済学部を卒業され、ケンブリッジ大学ペンブローク・カレッジにて修士号(開発経済学)取得されました。その後、海外経済協力基金(現・国際協力機構)等を経て、1988年に世界銀行入行。
南アジア地域担当戦略業務局長、世界銀行研究所業務局長、中国担当プログラム・コーディネーター、農村開発局インドネシア担当エコノミスト等のポジションを経て、2019年より現職でご活躍中です。

泉敦子さんは、公正取引委員会事務総局経済取引局企業結合課企業結合調査官。成蹊大学経済学部卒業後、日本で証券会社勤務を経て、南カリフォルニア大学で修士号(開発経済)、ワシントン大学でPh.D. (経済学)取得されました。
卒業後は、競争法、知的財産、労働関係の問題を扱うアメリカのコンサルティング会社「Edgeworth Economics, LLC」のエコノミストとして活躍されました。2017年より公取委へ移籍され、経済学の専門知識を活かした審査・分析業務に取り組まれています。

渡辺安虎 さんは、東京大学大学院経済学研究科教授。東京大学経済学部卒業後、西尾さんと同じく海外経済協力基金(現・国際協力機構)にて勤務され、退職してペンシルベニア大学へ留学し、Ph.D. (経済学)を取得されました。
卒業後は、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院、香港科技大学HKUST
ビジネススクールを経て、アマゾンジャパン合同会社に移籍。シニアエコノミスト、経済学部門長として勤務されました。2019年7月には再びアカデミアへ、東大経済に移籍されました。専門は実証ミクロ経済学・計量マーケティングです。

コメント 2020-04-18 223331

この3名が、以下のような筋書きで、それぞれのご経験や苦労をふまえてわいわい議論しています(収録は年明けに、世界銀行東京事務所の会議室をお借りして行いました!)。

1.それぞれのキャリア
2.経済学との出会い
3.世界銀行での歩み
4.アメリカのコンサルから公取委へ
5.大学からIT企業へ
6.実務に進むか、研究者になるか
7.経済学は共通言語
8.これからキャリアを考える方々へ

■IT企業で活躍する経済学者たち

さて、ここからは4本の寄稿記事について少しずつご紹介します。

1本目はこちら。サイバーエージェントAI Labで経済学グループのリーダーを務める安井翔太先生に、「テック企業は経済学をどう使う?」と題した記事を寄稿いただきました。

欧米や中国などでは当たり前になりってきていますが、日本でも徐々に、IT企業が経済学者を採用し始めています。その先陣を切るのがサイバーエージェントです。ではなぜ、IT企業は経済学者を求めるのでしょうか? 話題の機械学習などとは何が違うのでしょうか? そして、この流れは今後も続くのでしょうか?

サイバーエージェントで経済学の活用をリードしてきた安井先生がが、自らのご経験もふまえて、テック業界における経済学活用の現状と、今後の展望を語ってくださいました。

ご著書『効果検証入門~正しい比較のための因果推論/計量経済学の基礎』(技術評論社)も非常に話題です。データから因果関係を読み解き、マーケティング施策などの改善につなげるための考え方と分析手法が開設され、かつRで自分で実践もできる! 事例も、ダイレクトメールの効果検証など、普通の教科書にはない面白いものが多いです。

■経済学を学んだ人財が、組織を強くする

2本目は、「人と組織を経済学で活かす」と題した記事で、早稲田大学の大湾秀雄にご寄稿頂きました。「経済学の知識は、経営の現場でも威力を発揮する」というメッセージを伝え、採用や評価、組織設計で経済学はどのような貢献が可能かを、事例を交えて紹介しています。

大湾先生のご著書『日本の人事を科学する』(日本経済新聞出版社)は、刊行当時非常に話題になりました。大湾先生は、企業の人事部門の方々向けに勉強会も主催され、そこで採用・評価等々の人事業務にデータ分析、因果推論の手法を生かすための指南も行っておられます。その経験が凝縮された一冊です!

■経済学の視点で、より効果的なマーケティングを!

3本目は、ハーバード・ビジネススクールで教鞭をとる天野友道先生による「マーケティングに活かす経済学」です。マーケティングと言われると、「広告や販促の話かな??」と思われがちかもしれませんが、企業の活動に占めるその役割は、実はもっと幅広く重要です。

この記事で、天野先生は実践的な分野であるマーケティングの学問、社会科学としての側面に注目し、ビジネススクールで教えられる分析のためのフレームワークを紹介しながら、顧客の意思決定の背後にあるメカニズムと、それに対応するための企業のさまざまなマーケティング戦略の構築のために、経済学の知見が訳に立つんだと語っています。特に密接に関連する分野は、「実証産業組織論」です。

■実務に直結するファイナンス理論の知識

4本目は、早稲田大学ビジネススクールの鈴木一功先生による、「コーポレート・ファイナンス理論と企業価値評価の実務」です。ファイナンスや財務の実務と経済学やファイナンス理論の知識が密接に関係するのはイメージしやすいかなと思いますが、この記事では「企業価値評価」業務に着目して、その背後にあるアカデミックな理論との関連を具体的に解説します。

鈴木先生は著書も多数ご執筆されていますが、中でも本特集と関連が深いのは、『企業価値評価【入門編】』(ダイヤモンド社)です。基礎理論と実践例が有機的に結びついた解説書となっています。

■経済学×コンピュータサイエンスが社会問題を解く!

本書の最後の記事は、経済学とコンピュータサイエンスの知見を活用したプロダクトで事業化を目指す東大経済学研究科の大学院生方々へのインタビューです。お話を伺ったのは、池上慧さん、奥村恭平さん、松下旦さん、八下田聖峰さん。インタビューを行った2020年1月時点では、皆さん東大の大学院生でした。

皆さんは、実証産業組織論、ゲーム理論やメカニズムデザイン、行動経済学などをご専門とされています。このインタビューでは、そんな皆さんが、経済学の知見を活かして「混雑緩和」に貢献すべく研究を進め、さらには事業化も目指しているという噂を耳にし、お願いして実現したインタビューです。実際、池上さんたちのプロジェクトは、情報処理推進機構(IPA)が主催する「未踏アドバンスト事業」という研究アイデアの事業化プログラムに採択され、「メカデザ × 機械学習による混雑コントロールシステムCRABの開発」として、大きな研究資金を獲得して実施されてきました。

さらに、今年の2月には、アメリカ・ニューヨークで開催された人工知能分野のトップカンファレ ン ス で あ る AAAI(Association for the Advancement of Artificial Intelligence)において、 "A Simple, Fast,
and Safe Mediator for Congestion Management" というタイトルで報告されました。これから経済学を学んでみよう、あるいはいま学んでいる、という皆さまにも、きっと刺激になるお話をご覧いただけると思います!

■おわりに

以上、経セミe-book No.19「実践で活きる経済学」の内容をざざざっと、ご紹介しました。今回の特集は、これまであまりフォーカスしたことのないテーマでの鼎談や、インタビューの収録があったり、実務と学問の結びつきを強く感じられる記事をご寄稿いただいたりと、編集部としても作っていてとても楽しい内容でした。ぜひぜひ、ご覧うれけると嬉しいです。



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