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知っていると思いますが「SWOT分析」って分析ではないです

SWOT分析は長年にわたり戦略策定の基盤とされてきましたが、現代の複雑なビジネス環境ではその効果に限界が見られます。

本記事では、SWOTが単なる「情報の分類」であり、「分析ツール」として機能しない理由を掘り下げます。

あなたの時間の無駄になりかねない既存のアプローチを再考するきっかけになれば幸いです。

SWOT分析の基本概念

SWOT分析とは?

SWOT分析は、企業が戦略を立てる際に用いるフレームワークです。

Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)を識別し、これらをマトリックス形式で整理する方法です。

しかし、このアプローチは情報の整理には有効でも、戦略の具体的な道筋を示すには限界があると言われています。

「新しい経営学」より転載

SWOT分析の歴史的背景と発展

1960年代に開発されたSWOT分析は、時間の経過と共に多くのビジネススクールで使われるようになりました。

また企業の戦略策定においても用いられ始め、日本企業ではいまだにSWOT分析を重要視する傾向があります。

ただ、現代の複雑多様なビジネス環境では、その単純さが逆に戦略立案の妨げになると指摘されています。


誤解されがちなSWOT分析の「分析」

多くのビジネスパーソンはSWOTを「分析ツール」と認識しています。

しかし、実際にはただの「情報の分類」に過ぎません。

強みや弱みなどをリストアップするだけで、具体的な戦略立案のための深い分析まで進みません。

分析とは、「情報をどのように戦略に活かすか」を考察することです。

SWOT単体ではその点が不足しており、「だから何だ?」という疑問が生まれてしまうでしょう。

要するに、SWOT分析が提供するのは表層的な情報のみです。

よって、これをもって戦略的な意思決定を行うのは危険でしょう。

具体的な戦略やアクションプランを導き出すためには、より詳細な市場分析や競争分析が必要と考えます。

したがって、SWOTは戦略的な意思決定のツールとしては不十分といえます。


SWOT分析の問題点

多くの組織がSWOTを使用しても効果的な戦略が生まれない理由は、強みや脅威などの要素を独立して評価し、それらのトレードオフを考慮しないからです。

以下に事例を示します。

強み(Strengths)の過大評価

企業は自らの「強み」を過大評価しがちです。

例えば、ある企業が「高品質な製品」を強みとして挙げることがあります。

しかし、市場が価格競争に移行した場合、この「強み」は相対的な弱みに変わる可能性があります。

このように、SWOTで評価された強みが常に有効であるとは限らず、環境によっては逆効果になることもあります。


弱み(Weaknesses)の主観性

弱みの識別は主観的に行われることが多く、実際の市場や競争環境とは乖離していることがあります。

主観性に基づく分析は、多くの弱みを挙げがちです。

例えば、新製品について内部でテストした場合、すでに製品に慣れ親しんでいる従業員が使用すると、改善点ばかり目に付いてしまうことがよくあります。

そのため、それを組織として弱みと認識してしまい、結果的に不正確な結論を導いてしまうのです。

弱みは、客観的なデータや第三者の評価を基に特定するのが重要です。

弱みの識別が主観的なものになりがちな点を踏まえた上で、機会の評価においても同様の盲点が存在します。


機会(Opportunities)評価の盲点

SWOT分析がもたらす情報の偏りは、機会の評価でも起きます。

市場の機会を評価する際、多くの企業が自社の能力やリソースの適合性を見落としがちです。

事例として、電子機器メーカーが、市場が急速に伸びているウェアラブル製品の事業に参入することを決定したとします。

しかし、この企業は伝統的な電子製品に特化しており、ウェアラブル技術に関する専門知識や経験が不足していたため、多額の投資が必要になってしまいました。

つまり、すべての市場機会が自社に適合するわけではないということです。選択と集中が必要です。


脅威(Threats)と現実のギャップ

市場の脅威を評価する際には、最悪のシナリオが想定しがちです。

しかし多くの場合、これらの脅威は想定するほど即座には影響を及ぼしません。

実際には、適切な対策を講じる時間は十分あるのが一般的です。

よくあるのが、日本の人口減少を「脅威」と考える事例です。

人口減少は間違いありませんが、この国から人がいなくなるわけではありません。

現実的なリスク評価と対策が求められます。


SWOT分析は意味がないか?

SWOT分析は各要素を分離して考えがちですが、実際のビジネス環境ではこれらは相互に影響し合います。

統合的な視点から分析を行うことで、より現実に即した戦略を立てることができます。

その視点から生まれたのが、クロスSWOT分析です。

「新しい経営学」より転載

クロスSWOT分析は、従来のSWOT要素を相互にクロスチェックすることで、隠れた機会やリスクを発見します。

このアプローチは、単一の要素だけではなく、要素間の相互作用を考慮に入れ、具体的で実行可能な戦略を導き出すのに一定の貢献はすると思います。


まとめ

SWOT分析は、MBAのカリキュラムでも頻繁に教えられるフレームワークですが、実際の戦略立案においては限界があります。

クロスSWOT分析などの代替手法を取り入れ、具体的かつ実行可能なツールに移行したほうが良いでしょう。

結局のところ、より広範な市場分析と競争分析が組織の成功には不可欠です。

もし、いまだにSWOT分析を真剣にやっているのであれば、時間の無駄かもしれません。

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