おすすめ百合作品100選

執筆:久方楸

 初めに諸注意をば。
 本投稿の筆者である久方楸は2018年初頭に百合にハマったため、どうしてもそれ以前の作品は少なくなります。
 また極力ネタバレをしないように文章を書いたので、考察というよりは簡単な紹介文という感じです。内容は薄いかもしれませんがご容赦ください。最後の方はそこそこ長文になってたりしますが。こんな薄さじゃ納得できねぇぜ! という方は是非語り合いましょうか。
 さらに、誰もが手に取れるということを重視したため、同人誌の作品はGWを除きはじきました。また誰々の作品、という形式をとったためアンソロジーも省いてあります。
 加えて、本投稿はあくまで私個人の感想であり、逆張りから大御所作品がなかったりします。それもご容赦ください。
 最後に、我らが慶應義塾大学には非常に悲しいことながら現状百合サークルが存在していません。私自身が作ろうかと考えたこともありましたが、新型コロナウィルスだったりなんだったり、というか私自身の怠惰さから失敗しました。しかし今ならば、設立の一助ぐらいにはなれるのではないかと。ということで、新入生、もしくは在学生で百合に興味のある人は。ぜひ慶應SF研究会に一度顔を出していただければと思います。


 それでは、百合作品100選始まります。


1、サブロウタ『citrus』『citrus+』(2012~現在)
 私が百合にハマるようになった原点の作品であり、また個人的に百合作品の最高傑作。内容としては、第一印象最悪のまま親の再婚によって突然義理の姉妹となった柚子と芽衣が、徐々に惹かれあっていくという王道ストーリー。下手をすればよくある話で片付けられてしまうが、『citrus』はそうならないだけの魅力がある。まず第1話のインパクトが強く、驚きながらも作品世界にのめり込んでいく。嵐のような幕開けから一転、丁寧な話運びと感情、関係性の記述により登場人物を深堀することによって、誰もが非常に魅力的に描かれている。主人公ふたりが恋人関係になってから失速してしまう作品は多々あるが、『citrus』は恋人関係になってからもふたりの関係性は発展し続け、さらなる加速を見せるのも作品の完成度を高めている大きな要因である。
 百合好き、と名乗るならば読んでおきたい代表的な作品のひとつである。『やがて君になる』と並び、10年代百合作品の金字塔といえるだろう。
 また2018年に第10巻で完結後、現在は続編である『citrus+』が連載中である。こちらではどうしても『citrus』では掘り下げきれなかった人物たちの記述が増えており、ファンにとってはたまらないものとなっている。
『citrus』の大きな魅力のひとつとして、ストーリーの面白さももちろんだが、それ以上に登場人物をどこまでも丁寧に扱う、ということがあげられる。彼女らは一作品のただのキャラクターではなく、実際に生きた人物たちなのだと強く痛感させられるのはきっと私だけではない。それは彼女らの表情が非常に精緻に描かれていることからも明らかである。真の意味で登場人物を愛すること、それを求めたい人にはどこまでもお勧めできる作品となっている。


2、コダマナオコ『コキュートス』(完全版が2016年に発行)
『捏造トラップNTR』で(ある意味では良くも悪くも)有名なコダマナオコ先生の短編集である。収録作品は『コキュートス』『思春期メディカル』『モラトリアム』の3作品。『思春期メディカル』は百合姫Wildroseの収録作品であるためストーリーよりはエロに寄っている節があるが、どれも素晴らしい短編である。コダマナオコ先生の作品は、いずれもそのざらついた巨大感情で殴られることが味であるが、この『コキュートス』は特にむき出しの感情が直に殴りつけてくる。感情の痛み、という点でいえば同じくコダマナオコ先生の『不自由セカイ』に一歩譲るであろうが、物語の完成度という点では『コキュートス』の方が上であると個人的には思う。
 余談ではあるが「今度混ぜてよ、女同士でヤってるところにさ」が独り歩きしている『捏造トラップNTR』も非常に優れた作品なので、個人的にはお勧めしたい。


3、中山可穂『猫背の王子』『天使の骨』『愛の国』(1993年、1995年、2014年)
 俗にいう、王子ミチル3部作である。百合作品、という括りに入れるには多少疑問符の残る部分はあるものの、女性同士の関係性ということで今回は入れさせていただいた。中山さんの作品は様々読んできたが、やはりこの三本が最高傑作に思う。『猫背の王子』で破滅まで疾走する姿を、『天使の骨』では再生の物語を、そして『愛の国』では終わりの物語を、それぞれ一息に見せつけられる。コダマナオコ先生の時にも感情で殴られるという表現を用いたが、中山さんの作品も同様に裸の感情が押し寄せてくる。これほどまでに、痛切に胸を搔きむしられる作品は多くは存在しない、そう確信できるものとなっている。一度は読んで、絶対に損をしない作品であると思う。


4、綿矢りさ『生のみ生のままで』(2019年)
『蹴りたい背中』で芥川賞を受賞した、あの綿矢りさ先生の百合作品である。もうその触れ込みだけで読みたくなってくるが、加えて『生のみ生のままで』はエンタメ作品よりであり〝文学〟が苦手な層にも非常に読みやすくなっている。だからといって、『蹴りたい背中』以降綿矢りさ先生の作品に満ち満ちている、天井知らずの感情表現の上手さが損なわれたわけでは決してない。むしろストーリーを進行させるうえで、よくここまで感情を絡めることができるものだと脱帽する。なお、「綿矢りさ 百合」で検索をかけると『ひらいて』も百合であると書いている人が多いが、あの作品はもっと別の、大きな感情であると個人的には思っている。


5、仲谷鳰『やがて君になる』(2015~2019年)
 最初に紹介させていただいた『citrus』と並び、2010年代の百合作品の金字塔である。『やがて君になる』を読まずして、10年代の百合を語ろうとするのは不可能であろう。いや、不可能ではないかもしれないが、百合ファンを名乗るうえで読んでおいた方が良いことは間違いがない。それだけ『やがて君になる』が百合界に与えた影響は大きい。
『やがて君になる』を端的に表そうと思えば、おそらく「文学」という言い方が適していると、私は個人的に思っている。彼女らの関係性、そして感情の表現はどこまでも深い。
 私は『やがて君になる』をジャケ買い……というよりも、帯の表現が美しすぎて買った。6巻の帯、これほどまでに魅力的な帯を私は知らない。


6、きづきあきら+サトウナンキ『エビスさんとホテイさん』(2010年)
 かつて発行されていた百合誌『つぼみ』の最高傑作だと個人的には思っている。1巻完結型の作品であるため読みやすいことも魅力的。同じ会社の同僚で、反りの合わないエビスさんとホテイさんは、あるきっかけで距離の縮まっていく、という王道ストーリー。読んでいて不快な気分になることはなく、また1巻のうちにここまで情報を上手く詰め込むことのできる手腕に驚愕する。
 また、私は百合作品において、子供をどのようにして登場させるかを常々考えているが、『エビスさんとホテイさん』での登場のさせ方は満点回答に近いだろう。百合界隈で名前が売れている作品とは決して言えないのだが、むしろこれほど完成度の高い作品がなぜ無名なのかと頭を捻るほど面白い。


7、青谷真未『鹿乃江さんの左手』(2013年)
 文章が上手い、本当に上手い。私も文字を書く端くれであるが、ここまで文章自体に羨望を抱いたのは、中島らもの切れ味の鋭すぎる一節と青谷真未さんの文章のみである。よく漫画の表現で音楽が踊りだしたり、文章が情景になったりするが、それに近い感覚を覚えた。文章自体に色がついている、といっても過言ではないかもしれない。
 話自体も、謎は謎のまま、それでも非常に美しく、ありていに言って「素敵」なミステリー仕立てになっている。短編三本が収録されているが、私は二本目の『闇に散る』に登場するふたりの関係性が理想に近いそれであり、引き込まれずにはいられなかった。一読を強くお勧めする。


8、U-temo『百合オタに百合はご法度です⁉』(2020~現在)
 正直にいって、連載開始時はここまで素晴らしい百合作品になるとは思っていなかった。どちらかといえばギャグよりの、ライト百合作品かと思っていれば一転、とても関係性の深い最高の百合になっていた。現在連載されている百合作品の中で、最も勢いのある一作であることは間違いない。同じくU-temo先生の『今日はまだフツーになれない』も、社会通念と自分の中の価値観とが合わない主人公たちの人生の一片を描いた、非常に素晴らしい作品。ぜひ読んでおきたい。


9、宮木あや子『雨の塔』(2011年)
 社会から隔絶された、少女たちの物語。少女性、という観点から描かれた本作は、胸が非常に痛くなる、彼女たちの最果てを見せつけられる。最果ての中で、それでもと動き続ける4人の少女の感情は、文を追うごとに切なさを感じさせる。どちらかといえば文学よりの作品であるため苦手な人もいるかもしれないが、かつて一迅社の発行した『百合作品ファイル』にも収録されている有名な作品なので、ぜひ読んでみたい。


10、澄谷ゼニコ『魔女が恋する5秒前』(2020年)
 ハイテンション、砂糖多めの百合作品。脳がとろける、頬がにやつく、ともかく喧嘩とイチャイチャが読みたいときに心からおすすめできる一作である。かつて百合姫で『デモンズハーレム』を読んだとき、その完成度の高さから驚愕したのはきっと私だけじゃないはず。『デモンズハーレム』の続き読みたいです。
 ゼニコ先生は現在主にBL漫画の方で活躍されており、『恋ではないと思いたい』『息ができないのは君のせい』はどちらも素晴らしい作品であった。興味のある方はそちらも是非。


11、西島克彦『プロジェクトA子』(1986年)
 おっとやべぇのがぶち込まれたな、と思った人もいるかもしれない。うるさい百合だ、Kなんていない。A×Bは『A-Ko The VS』の方で多元宇宙で大勝利したんだから百合に決まってるだろ。Q.E.D。
 感情的な文章はさておき、80年代のバカアニメのひとつである。合わない人にはとことん合わないであろうが、刺さる人にはとことん刺さる。私は後者だ。セーラー服を着た女の子がネタ満載でドンパチやる作品がつまらなくなるなんてそんなわけがないんだ(?)。宮崎駿はぶち切れていましたが。
 ともあれひとまず何も考えずに視聴してみて欲しい。dアニメストアで配信中である。


12、犬井あゆ『定時にあがれたら』(2019~2020年)
 社会人百合として非常に完成度が高く、また感情表現がどこまでも丁寧。犬井先生の作品は安心して読める、ともっぱらの噂。読んでいて心が浄化される感覚を覚える。全4巻完結で読みやすい一方、完結と発表されたとき非常に悲しかったことは記憶に新しい。現在は百合姫にて『今日もひとつ屋根の下』が連載されているので、こちらも注目したい。


13、雨水汐『欠けた月とドーナッツ』(2020~現在)
 続いても社会人百合作品、というかここから社会人百合を少し連続して紹介させていただきます。理由はそういう気分だからです。
 第1話掲載時の衝撃はいまだに鮮明に覚えている。自分のことを好きになれない宇野ひな子の赤裸々な感情が、これでもかというほど上手く描かれている第1話は、近年の傑作のひとつといっても過言ではない。事実、雨水汐先生自身がTwitterで1話を公開したときは、正直読者数が多いとは言えない百合界隈とは思えないほどのRT数を見せていた。
 通常の作品では勢いや決断力で突っ走ってしまうようなところを、主人公が迷いながら進んでいく様は、もどかしくもあるがそれ以上に素晴らしくよくできた物語進行である。現実ならきっとこうだろうな、と思わせるだけの説得力があるところが、この作品の完成度を底上げしている。
 雨水汐先生が現在同時連載している『女ともだちと結婚してみた。』は、本作と比べてライト百合で読みやすい。正直な話、第1話掲載時は「あれ?」と首を傾げたのだが、第1巻中盤から面白くなってくる。こちらも併せて読んでみたい。


14、宮原都『一度だけでも、後悔してます。』(2020~2021年)
 えっち、ですね……。最初に出てくる感想は正直それかもしれない。直接的で過激なエロ表現をしている作品は他にもたくさんあるが、これほど関係性を深めながらえっちな作品は中々ない。8話……うん、8話ですよ。8話のすばらしさは筆舌に尽くしがたい。大家さんがとにかく可愛い。全3巻であり、また非常に入り込みやすい世界観となっているため、百合初心者にも自信をもっておすすめできる一作である(えっち耐性ある人に限る)。


15、ばったん『かけおちガール』(2021年に書籍版発行)
 名前の通りかけおち系の百合作品。これは本当に、傑作である。ばったん先生は、いま非常に勢いのある漫画家だと私は思う。『かけおちガール』の素晴らしさを文章で伝えるのはかなり難しく、正直「読んでみて」としか言えないのが心苦しい。頑張って言語化すれば、女女の巨大感情が渦巻く作品、ということになるのだが……いや、ぜひとも読んでもらいたい。また、先ほど『エビスさんとホテイさん』で語った子供の出し方だが、本作品もまた満点回答に近い一作であると思う。


16、藤松盟『姉の親友、私の恋人』(2021~現在)
 個人的に藤松先生は『ユニコーンと寂しがりや少女』の時から大好きだったため、これほどパワーアップした百合の新作を発表してくださったことに、本当に感謝しかありません。
 本作は丁寧な話運びに加えて、前後話のつなぎがすべて非常にスムーズでストーリー重視の作品として完成度がかなり高い。感情表現に割く文字数が多いながらも、頁を繰る手が止まらない。一話一話読むよりも、単行本でまとめて読む方が絶対に面白さが引き出されるタイプの作品。それほどまでに、一話一話ごとの話のぶつ切り感が皆無である。今後絶対に〝来る〟作品として、ずっと応援していたい。


17、ヨドカワ『毎月庭つき大家つき』(2021~現在)
 ここ半年以内に始まった、超弩級の作品のひとつ。『トラとハチドリ』も大変面白い作品であったが、さらにパワーアップしたのが本作。面食いの主人公と、賃貸に(半ば無理矢理)住まう顔面の強い大家さんのホッコリする話。巨大感情で殴り倒される、のようなインパクトには欠けるが、作品としての完成度が高く安心して読めるタイプの作品。『麺麺むすび』も併せて読んでおきたい。


18、トクヲツム『伊勢さんと志摩さん』(2018~2021年)
 お馴染み、トクヲツム先生の作品である。ヘテロセクシャルの伊勢さんと、レズビアンの志摩さんがルームシェアしている話。ふたりの間に恋愛感情はなく、そこがまた素晴らしい。毎日なにかにチャレンジするふたりの姿勢に元気がもらえ、またコメディとしてクスリと笑ってしまう。またトクヲツム先生は、自身のTwitterにて自作の書下ろし漫画を非常に高頻度でアップしてくださるため、供給が尽きない。『終電で帰さない、たった1つの方法』『春綴る、桜咲くこの部屋で』も併せて読んでおきたい。


19、コダマナオコ『親がうるさいので後輩と偽造結婚してみた』(2018年)
 この100選を書くとき、極力同じ作家を2回書くのはやめておこう、と思っていたため『〇〇』も併せて読みたい、という表記にしていた……のだが。まぁ、コダマナオコ先生に関しては『コキュートス』や『不自由セカイ』を描いたダークコダマナオコ先生と、本作を描いたライトコダマナオコ先生は別々としても良い気がしたので、本作を取り上げた。ストーリーはタイトルの通り、先輩と、先輩のことが好きな後輩が偽造結婚する話。ダークコダマナオコ先生特有のドロドロ感はなく、良い意味で非常に読みやすい。百合初心者に「読みやすいイチャイチャ系の百合貸して」といわれた際貸す本の候補を百合ファンにアンケートを取ったら、絶対に名前の挙がる作品である。なお、『好きだからHしてます。』も完成度の高いライトコダマナオコ先生の作品であるが、こちらは本当に非常にHなので、貸す人は選んだ方が良い。


20、道満清明『オッドマン11』(2011~現在)
 社会人百合パートがひとまず終わったと思った矢先、とんでもないものがぶち込まれた、と困惑する人もいるとは思う。私もそう思う。だがやはり、本作は紹介せねばならぬ気がしたのだ……。
 エロ雑誌で連載している、一応は百合作品…………のはずだ。また、道満清明先生の作品の中では、『ヴォイニッチホテル』と同様、かなり読みやすい方だと思う。とはいえ、あくまで相対的な値であり、諸々〝特殊性癖〟の部分も垣間見えるので、自分の性癖力に自信がない人は積ん読にしておいた方が良いかもしれない。


21、高遠るい『ミカるんX』(2008~2011年)

 後述する『少女終末旅行』に並び、百合SFの最高傑作だと私は思う。鯨岡ミカと南るんなは合大(合体+巨大化)することで「裸の巨人」となり、全裸のまま地球に次々と来訪する宇宙怪獣(作中では「航海者」と呼ばれる)と戦う、というなんとも頭の痛くなりそうな話である。2巻の帯にあるように「ラーメン全部のせ! うまい!」という感じの作品であるといえば簡単だが、しかしその実態は非常によくできたSFである。なにより、5巻から始まる第二部の時間概念の説明が上手すぎる。百合を楽しむ、というよりはストーリーの出来を堪能する、というタイプの作品だが、非常に完成度の高い作品となっているため是非とも読んでもらいたい。主題歌『しあわせのスパイラル』はこれがなんとも神曲である。
 また『はぐれアイドル地獄変』もかなり上質な百合を摂取できるくだりがあるため、〝個人的には〟お勧めしたい。ただし、『はぐれアイドル地獄変』を買う前には自分以外だれもいない部屋で、ひっそりと1話を試し読みしてから、本当に自分に合うかを確かめた方が良いかもしれない。私は忠告した。nsfw。


22、つくみず『少女終末旅行』(2014~2018年)
 百合SFの流れで、こちらも同時に紹介したい。2度の戦争ですっかり滅んでしまった都市群を、チトとユーリのふたりがケッテンクラートに乗りながら上層を目指していく、ある種の日常もの。どうしようもなく行き詰ってしまった、それでも終わるまでは終わらない、そんな世界を必死に生きていく少女たちの日常は、多くの読者の胸を打ったと思われる。アニメの出来が非常によく、OPもEDも神曲であるため、原作ではなくアニメから入るのもありかもしれない。


23、しろし『Roid』(2018~2019年)
 とある事件に巻き込まれ足の不自由となった主人公が、また別の事件を解決するために自身の意識をアンドロイドにコピーし、四肢が不自由なく動くもう一人の自分を得る話。人間の彼女は四肢が動くアンドロイドの自分にコンプレックスを、アンドロイドの彼女は自身のオリジナルたる人間の自分にコンプレックスを抱く、なんともはやよくできた作品である。百合SFとして、できれば一度は読んでおきたい作品である。


24、佐藤竜雄『宇宙のステルヴィア』(2003年)
 百合か? はい、百合です。それも地獄の。
 超新星爆発の余波によって大ダメージを受けた地球は、その第二波を防ぐために宇宙に拠点を作り、また主人公たちが奮闘する話。基本的には面白いが、プログラムシーンがもう少しどうにかならなかったのかということ、また主人公たち学生を才能があるという理由で前線に立たせるという異常性に大人たちが気付かないことなど、少々惜しいところはあるのだが、それはそれとして。藤沢と町田の関係性に妄想を膨らませることになる。


25、深海紺『春とみどり』(2019~2020年)
 中学時代の親友にして、好きだった相手つぐみの子供であり、つぐみに瓜二つの少女である春子を、人付き合いの苦手なみどりが引き取り一緒に暮らしていく話。ふたり、いや三人の関係性がとても丁寧に記述されており、一読は必須の作品。春子とみどりにとっての、再生の物語である。百合ファンの間で、おそらく長い間記憶に刻まれ続けるであろう傑作である。


26、吉田秋生『桜の園』(1985年)
 今の百合作品からは摂取することのできない百合を内包した、不朽の名作である。桜に囲まれた丘の上の女子高校に通う、少女たちの物語。優れた作品というのは、ブームや古臭さなどをものともせず、時代を超えて愛されるのだと思い知らされる作品。


27、雨隠ギド『終電にはかえします』(2013年)
『甘々と稲妻』の作者による、百合短編集といえば通じる人も多いに違いない。百合誌『ひらり』にて掲載された作品を集めた本作であるが、収録作はどれも素晴らしく、表題作でもある『終電にはかえします』の感情のぶつけ合いは、まさに天才の所業といわざるを得ない。『永遠に少女』のラスト2頁は号泣必至、また『大人の階段の下』もまたなんと素晴らしい百合作品であることか。『ひらり』というと『加瀬さんシリーズ』の印象が強く、もちろん『加瀬さんシリーズ』も素晴らしい作品なのだが、ぜひ『終電にはかえします』も読んでおきたい。


28、ヨルモ『レゾナントブルー』(2019年)
 ヨルモ先生(高瀬わか先生)らしい、きらきらした顔面の強い女の子の登場率が高い短編集。その中でも私がおすすめしたのはカラーページにもなっている『2人のエコー』である。初めて読んだときの感想は、テンションが上がりすぎたが故の絶叫以外にはないだろう。とても素晴らしい(語彙力)。特に、他人の努力をなかったものとせず、きちんと認知していくという描写が個人的には最高である。そして顔が良い。とても良い。とっても良い。
 高瀬わか先生名義で描かれている『かわいすぎる男子がお家で待っています』も百合ではないが非常にお勧めである。


29、あおのなち『きみが死ぬまで恋をしたい』(2019~現在)
 身寄りのない子供たちが戦争の兵器となるための魔法を習う学校で、魔法の才能が乏しいシーナが、不死の少女であるミミと出会う物語。ミミの感情の発露や、シーナの立ち位置などとても表現が上手く名作に違いはないのだが、百合としてはかなり薄暗い部類に入る。3巻は読者の心を壊しにしていた。私は壊されたつらい。


30、北尾タキ『好きなのは女の子』(2018年)
 つらい百合を紹介した後は、底抜けに楽しい百合をお勧めしたい。
 そこそこ、まぁまぁ、結構かなりエッチな百合短編集である。私は『女ってヤツは‼』が個人的に最推しなのだが、有識者の皆さんはどうだろうか。とにかく読んでいて底抜けに楽しい。元気になりたいときに読むのがお勧めである。


31、田滝ききき、はとむら『性教育120%』(2020~2021年)
 百合漫画であると同時に、性の知識などを漫画形式で楽しく教えてくれる作品。私はこの作品で性的嗜好と性的指向の違いなどを学んだし、知識として普通に有用である。話もギャグテイストで面白く、百合読者以外にもお勧めしたい一冊である。中学生とかの性教育に本当に良いんじゃないかと思っている次第だ。


32、谷口奈津子『教室の片隅で青春が始まる』(2021年)
 ひとつのストーリーの中で様々な人物に焦点を当てた短編集であり、百合と呼べる作品はそのうちの一本である。ただこの作品に関しては、百合であるという以上に、作品としての素晴らしさから紹介したい。少しでも自分の生活に息苦しさを感じている、すべての人に読んでほしい、そんな作品。読むことで、心が晴れやかになるし元気がもらえる。
 というか、最初のころは嫌な感じで出てくるキャラクターって後から背景説明されて良い人になるんでしょはいはい、という斜に構えた態度で読んでいたら、あっけなく「ええ子や……」っていい始めたのでそのあたりもとても表現が上手い。


33、竹嶋えく『ささやくように恋を唄う』(2019~現在)
 えく先生は、とにかく絵が可愛い。『君に好きっていわせたい』や『晴れの国のあっぱれ団』からえく先生が好きだったこの身としては、えく先生の新連載が決まったときはとにかく嬉しかった。3巻への盛り上がりがすごく、その後も安心できる日常が続いている。百合ナビさんの主催した百合漫画総選挙で第1位に輝いたりと、かなり勢いのある漫画である。


34、やとさきはる『二人のアルカディア』(2019年)
 ガレットワークス発行の作品。いわずと知れたやとさき先生の短編集である。表題作『二人のアルカディア』はもとより、『愛とか恋とかわからない』や『かわいくなって、きれいになって』など完成度の高い作品が目白押しである。特に『愛とか恋とかわからない』は、主人公の未来への展望を覗かせる、希望にあふれた終わり方をしている。私、そういうの、好き。


35、よしだもろへ『いなり、こんこん、恋いろは。』(2011~2015年)
 基本的には男女カプの本作であるが、とある女子生徒ふたりの間に特別な関係性がある。この関係性を、百合ファンにこそ読んで欲しいと思ってしまう。いわゆる「百合」と銘打たれた作品からは、決して摂取することのできないような関係性が彼女らの間にはあり、そしてそれは完成されている。百合界隈では決して知名度の高い作品とはいえないが、ぜひとも一読をお勧めする。


36、岡田麿里、絵本奈央『荒ぶる季節の乙女どもよ。』(2017~2019年)
 先ほど紹介した『いなり、こんこん、恋いろは。』と同様に、「百合」と銘打った作品からは摂取が難しい関係性を描いている作品。女性同士の関係性の部分を含め、物語全体として非常によくまとまっており、完成度の高い作品であるといえる。本作はアニメの出来も良かったため、アニメから入ることも可能である。


37、小倉宏文『ぬるぺた』(2019年)
 交通事故で姉、ぺたを失った天才少女、ぬるは姉をロボットとして作り出す……という、かなりシリアスに聞こえるあらすじではあるが、実際にはコメディ色の強い本作。約5分が全12話という短編アニメでありながら、話の起承転結がすべてキッチリとたっており、非常に高い完成度を誇る姉妹愛を描いた作品である。私は放送当時、大学の図書館でこの作品を毎週視聴していた。特に11、12話など、普通に図書館で号泣しかけたので危ない。アニメの後日談にあたるsteamにて配信されているゲームも、レトロゲーを彷彿とさせる隠れた名作なのでぜひチェックして欲しい。


38、境宗久『ゾンビランドサガ』(2018年)
 アイドルを夢見た少女、源さくらはある日命を落とし、そしてまたある日ゾンビとして復活する。そして佐賀県を救うために、アイドルとして活躍していくのだった……。こうして書くと相変わらず意味が分からないのだが、『ゾンビランドサガ』ゆえ仕方なし。『ゾンビランドサガ』ははじめコメディタッチにすることで入りやすくし、中盤に大きな山を持ってきて、その後キャラを深堀りしつつまた大きな山に向かっていく、という非常によくできた物語構成になっている。Blu-ray売り上げでとんでもない数を叩き出したり、放送当時にはかなり話題になった作品である。


39、岩井志麻子『ぼっけえ、きょうてえ』(1999年)
 百合……私は、百合だと思う。女性から女性へ向かう、とんでもない巨大感情が作中の物語本筋に沿うようにして語られている。日本ホラー小説大賞受賞作であるため、もちろん恐ろしいのだが、本作は幽霊や怪異などといった化け物的な作品ではなく、あくまで人間の恐ろしさに着目している。生きている人間が、一番怖いということを再認識させられる。


40、田中ロミオ『人類は衰退しました』(2007~2016年)
 世界最後の教育機関が終わりを迎えるほど、どうしようもなく衰退しきった人類と、隣人として存在する妖精さんとのブラックユーモアを交えたコメディタッチな作品。SFとしても非常に見どころの多い本作であるが、同時に百合的な着目点も数々存在する。私の幻覚ではない、ないったらない。


41、さかもと麻野『パイをあげましょ、あなたにパイをね』(2012年)
 短編集。表題作『パイをあげましょ、あなたにパイをね』は不器用なふたりの感情のぶつかり合いが描かれる、心温まるストーリーになっている。また最後に収録されている『もう好きなんて言わないから』は、時間が経過することの残酷さ、そして恋愛感情が時に人を傷つける無自覚な武器にすらなるのだという残酷さ、このふたつが主軸として描かれている。どこかで見たようで、実は見たことのない、貴重なお話である。


42、散田島子『わすれてしまうわたしたち』(2019年)
 個人的、ここ数年の百合読み切りの中で最高傑作である。現代社会で消費され、すぐに誰かに忘れられてしまう、自分の居場所を失ってしまう、そんな息苦しさを主軸に置いた本作は掲載当時大きな反響を呼んでいた。むき出しの感情で殴られ、そしておそらくSNSに精通した若い人ほど刺さる名作である。WebのコミックDAYSにて無料で読むことができるため、大変お勧めしたい。
 連載決定した『恐怖!! 断捨離エロメイド』も応援しています。


43、押山清高『フリップフラッパーズ』(2016年)
 ふたりの少女が、願いを叶えるとされている石を求めて、異世界ピュアイリュージョンを探索するSF冒険活劇。作画が非常に良く、また神回が多い。最終話付近はもちろん、個人的にはかなりノリのいい8話も大好きである。変身魔法少女ものが流行らない時代なんてないんだ。


44、葦原大介『WORLD TRIGGER』(2013~現在)
 え、ワートリが百合じゃないなんて、そんなまさか、冗談キツいですよ。私にはなにをどうしても、百合に見えますね。いえほら、那須隊とか、香取隊とかね……。
 百合要素はまぁともかくとしても、よく話の練られた作品であると思う。様々な戦法やキャラクターの動かし方など、これだけ多くの人数をよく同時に描けるものだと感嘆する。登場人物の精神年齢がみんなカンストしていることはあまり突っ込んではいけない気がする。一話一話よりも、単行本で一気に読んだ方が面白い作品。テスト前に毎回読み返してしまい勉強時間を爆破してくる作品でもある。


45、柚木涼太『お姉さんは女子小学生に興味があります』(2017~現在)
 おっとタイトルから犯罪臭がするぞ。そして中身もアウトよりのアウトである。ギャグであるためギリギリ成立しているが、稀によくどこかの内山を彷彿としたりしなかったり。かなりアウトの作品なのだが(国によってはマジでアウト)、ギャグの完成度が高くかなり面白いので悔しい…………でも読んじゃう。けどやっぱり略称が『おねしょ』なのはアウトに突っ走ってると思うんだな。


46、むちまろ『世が夜なら!』(2020~2021年)
『おねしょ』の流れでこの作品もいけると思いましたすみません。ギャグ、っていうか、やばいギャグっていうか……。ちょっと最終話のノエちゃんとかほんとヤバかったと思うんですが、これが案外30話とかちゃんと百合してるのでびっくり。道満清明の『オッドマン11』とか楽しめるタイプの人類は、たぶん楽しく読めると思う。


47、くろは『有害指定同級生』(2017~2019年)
 この流れならさらにもう一作ねじ込めると思ってしまった私を許して欲しい。読んでいてここまで頭の痛くなる作品も珍しい、といった感じの本作。かつて21話が私のTwitterに流れてきて初めて本作を読んだときは、さながら宇宙猫のようになってしまった。とんでもねぇやつと同じ時代に生まれちまったもんだぜ……。
 これまた普通にギャグとして完成度がとても高い話が散見されるなど、悔しいでも読んじゃうタイプの作品である。


48、京極夏彦『ルー=ガルー』(2001年)
 百合SF。色々設定を盛り込みすぎな節もあるが、それはそれとしてかなり面白い作品である。さすが京極夏彦としかいいようがない。町で起きる連続殺人を、4人の少女が追い求めていくミステリー仕立ての作品であり、また登場するメカニックに関してはロマンに満ち溢れた作品である。ロマン度でいえば『ルー=ガルー2』の方が高いので、ロマンを追い求める方はぜひ2までの読了をお勧めする。


49、王谷晶『ババヤガの夜』(2020年)

 個人的には、本作の関係性は百合というよりも、もっと他のなにか。言葉をつけることによって鮮明化し、そして同時に矮小化することが惜しまれる関係性ではあると思うが、そういう「その他の関係性」を含めて生物学的な女女の関係性は「百合」といえる便利な土壌があるので、便宜上本作を百合と呼称する。本作もまたミステリー要素が含まれており、頁を繰る手が止まらないタイプの作品である。是非とも、王谷さんの描く濃密な関係性に触れて欲しい。
 また同時に、同じく王谷さんの『完璧じゃない、あたしたち』や『異形コレクション、狩りの季節』に収録されている『昼と真夜中の約束』にもまた深い関係性が描かれている。小説好きなら是非とも読んでおきたい。


50、ほづみみづほ『不死身の女子高生』(2017~2019年)
 私はとっても百合だと思っている。不死身でなにをどうしたって死なないし歳も取らないJKと、たぶん不死じゃなくて死んだら死んじゃうJKの日常物語。ギャグの切り返しや、ふたりの距離感が素晴らしく面白い。オモコロで全話無料で読むことができるため、思い立ったらぜひ読んで欲しい。


51、河合朗『未完成ガール』(2014年)
『ギャルとオタクはわかりあえない。』と『ガールズ×セクハライフ』の同時連載で、ニコニコ漫画のコメント欄に「綺麗な方の河合朗先生」「汚い方の河合朗先生」と書かれていたりした、あの河合朗先生の短編集である。諸々素晴らしいのだが、私は『ひなたの罠』が好きである。この一冊を読んだだけでも、河合朗先生の描ける作品の幅の広さに驚かされる。
 また河合朗先生が現在連載している『推しが妹になりまして。』も大変レベルの高い姉妹百合作品となっているため、ぜひ読んでおきたい。


52、市川ヒロ『ティラとケラ』(2020年)
 ティラノサウルスとトリケラトプスを擬人化した、ふたりの少女の物語である。絵がとても可愛らしく、またストーリーも読んでいて心が癒される。ずっと読んでいたいタイプの癒し漫画であったが、全2巻で完結を迎えた。


53、士郎正宗、六道紳士『紅殻のパンドラ』(2012~現在)
『攻殻機動隊』の前日談。『攻殻機動隊』を読んでいても思うが、士郎正宗って百合好きだよね。百合SFとしてよく名前が挙がる作品であるようにも思う。『攻殻機動隊』を読んでいなくても充分に楽しめる作品となっている。


54、高千穂遥『ダーティペア』(1980~2018年)
 仕事はこなすが、その度に壊滅的なダメージを社会に負わせるため「ダーティペア」と呼称されるケイとユリのふたり組が、様々な星で問題解決を担うスペースオペラ。アニメ版では第1話のサブタイトルが「コンピューターの殺し方教えます」であるなど、80年代の香りをそこかしこに感じることができてとても嬉しい。最近のアニメではめっぽう減ってしまった、次回予告で主人公ふたりが全く本編とは関係ない漫才を繰り広げるあのタイプが見られるのでそれも嬉しいポイントである。また、なにを差し置いてもOPが神である。


55、竹宮ジン『シーソー×ゲーム』(2015年)
 いわずと知れた竹宮ジン先生の短編集である。正直、私が取り上げるまでもなく、百合好きならとっくに知っているような気がしなくもないが、やはり名作なので紹介したい。収録されているどの短編も頁の配分が上手く、短いながらもよく関係性が掘り下げられた作品になっている。このあたり、さすが竹宮ジン先生としかいいようがない。表題作『シーソー×ゲーム』は高身長と低身長の女の子ふたりの作品であり、王道ながらも完成度が高い。
 竹宮ジン先生といえば、併せて『いとしこいし』なども読んでいきたい。


56、こんぱる&ふじしまペポ『ごくちゅう!』(2021年)
 お野菜をゲットしたらポリスにキャッチされ、女性刑務所に入所した主人公と、同室のメンバーとのコメディ。現実の刑務所ならありえないことばかりだが、それは話と話の間のコメントで補足されるため中々に読んでいて面白い。「この世で最も聖地巡礼をオススメできない萌え漫画」という帯の触れ込みが素晴らしい。
 余談だが、刑務所の実態を描いた不朽の名作、花輪和一『刑務所のなか』や、中島らもの『牢屋でやせるダイエット』を読んでおくとさらに面白く感じるかもしれない。薬物を扱った作品なら、同じく中島らもの『アマニタ・パンセリナ』を読むと『ごくちゅう!』で「あ~」となるかもしれない。


57、逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』(2021年)
 本作を簡単に百合といってしまうことに抵抗はあるし、正直私は百合ではないと思うが、この作品もまた『ババヤガの夜』と同様、女性同士の特異な関係性を描いた作品として取り上げたい。
 独ソ戦に巻き込まれ故郷の村を焼かれた少女が、女性狙撃兵として戦争に繰り出される、というのが本作の最もネタバレを含まない紹介だろう。この認識は間違ってはいないが、恐らく正解とも言い難い。というのも、その紹介は本作をひどく矮小化しすぎであるからだ。
 この作品は、戦争の中で揺れ動く少女の精神を残酷なまでに丁寧に描き切り、そして当時繰り広げられ、また今日でも口を噤みたがる戦争犯罪に対して大きく疑問を投げかけている。物語として読ませながらも、常に戦争に対する異常性を投げかける作者の力量には圧巻の一言である。実際のところ私は本作を未だ上手く消化しきれていないので、購入時の帯に掲載されていた桐野夏生さんの言葉を引用させていただきたい。「これは武勇伝ではない。狙撃兵となった少女が何かを喪い、何かを得る物語である。」
 こんなご時世だからこそ、一度は読んでおきたい小説である。2021年度最高の小説であった、と称する人々がいることにも納得できる。


58、タカハシマコ『乙女ケーキ』(2007年)
 百合姉妹創刊号にも名前を連ねている、あのタカハシマコ先生の短編集。私はタカハシマコ先生の作品の魅力は作品に込められた〝少女性〟にあると思っているが、それが余すところなく発揮されている本作。表題作『乙女ケーキ』はもちろんのこと、『ぬいぐるみのはらわた』で錯綜する少女たちの想いにはひどく胸を撃たれる。
 最近発売された『いちゃらぶしかない百合アンソロジー Sugar』にもタカハシマコ先生の作品が収録されており大変素晴らしい内容となっている。というか、『いちゃらぶしかない百合アンソロジー』はこれまで刊行された3巻すべてにタカハシマコ先生の作品が載っているのでその点最高と言わざるをえない。個人的に、タカハシマコ先生の百合作品は傑作ぞろいなので、ぜひ読んでもらいたいと思うところ。


59、まにお『きたない君がいちばんかわいい』(2019~2022年)
 つい最近完結した本作は、ラストの盛り上げ方、そして心情表現がとても素晴らしかった。連載が始まった当初は、かなり特殊な性癖な方が喜ぶ話づくりでストーリーものというよりは単話完結型の作品であったが、途中からストーリーものに転向。そのストーリーがとても引き込まれるうえに、キャラクターの心の揺れ動きを描くのがとても上手い。最初は少し特殊性癖なので読むのがつらい節もなくはないが、ぜひ最後まで読んでもらいたい。
 あとDLsiteで発売されたASMRも要チェック。


60、貴志祐介『新世界より』(2008年)
 個人的に、彼女らの関係性は百合ではなく、あくまで社会的に形作られたストレス発散の手段でしかないと思うのだが、なぜか漫画版の方は百合(というより百合エロ)に全属性を振ってたり、巷では百合と呼ばれることもあるので紹介したい。
 なにを言っても、本作は話が本当に面白い、という一文に帰結する。それはもう『黒い家』『クリムゾンの迷宮』『青の炎』などなど数々の名作をこの世に送り出してきたあの貴志祐介が作者なのだからさもありなんという感じだが。呪力という超常の力を持つ彼ら彼女らの周囲を取り巻く環境はミステリー要素もあり、文庫本3冊という長編でありながら一呼吸のうちに読むことができる名作である。
 漫画版は百合エロが読みたい人以外は読まなくていいと思う。


61、イシイジロウ『under the dog』(2018年)
 百合である(断言)。どこが、といわれれば確かにどこだろう。いや、エステラがね……百合だと私は思うんです。あくまで私は、ですが。
 異能をもった主人子が、自身と家族を人質に取られながら政府の手先として活躍するのが大まかなストーリー。話の構成に多少の粗さが見られるのが残念ではあるが、映像はとても素晴らしかった。また多くは語られないため、考察や話の背後関係を考えるなどを考えるのが好きな人にはたまらないと思う。ただし、本作はそもそもがクラウドファンディングによって作成された作品であり、現在はBlu-rayも売り切れ、配信もされていないため視聴すること自体がかなり困難である。気になる方はぜひ頑張ってほしい。


62、虚淵玄『魔法少女まどか☆マギカ』(2011年)
 今更私がいうまでもないと思うほどに有名な作品である。また百合要素も強く、放送から10年以上が経過した現在でも百合同人誌が発行される。
 願いを叶えるためにキュゥべえと契約し魔法少女となり、魔女と争うことを運命づけられた少女たちの物語。有名になりすぎて今ではそこらじゅうにネタバレが転がっているが、やはりネタバレなしで初めてこの作品を視聴したときの驚きや感嘆は言葉に表しきれないものがある。未だこの作品を見視聴という方は、安易にネタバレサイトなどに走らず、ぜひ視聴してみて欲しい。一度は見てみて必ず損をしない作品である。


63、里好『踏切時間』(2016~2021年)
 踏切で足止めをされている人物らを描いたオムニバス形式の作品。すべてが百合というわけではなく、というよりむしろ男女カプやギャグのみの話の方が多いのだが、収録されている『二人の青春』という続きものが大変な百合である。青春がしたい先輩と、その先輩に密かに想いを寄せる後輩との甘酸っぱいラブストーリー……というのは嘘ではないものの一側面でしかなく、どちらかといえばギャグに寄っている。が、彼女らの想いは本物であり、大変素晴らしい作品になっている。
 百合要素以外でも、『私と重耳おじさん』や『放課後アイアンメイデン』など傑作が多い。オムニバス形式ということもあって手に取りやすく、自分に合う話を見つけやすいというメリットもある。大変お勧めである。


64、大沢やよい『ハロー、メランコリック!』(2019~2021年)
 大沢やよい先生といえば『2DK、Gペン、目覚まし時計』の方を思い浮かべる人も多いかもしれない。言わずもがなそちらも名作であるが、巻数的な読みやすさから今回は『ハロー、メランコリック!』の方を紹介させていただいた。陰の気をまとった、自分に自信のない長身の主人公が、陽の気をまとった、つねに明るい先輩に諸々振り回されながら成長していく話、というのが簡単な(簡単すぎる)あらすじである。無論、さすが大沢やよい先生ということで話はこんなに簡単ではなく、もっと様々な感情の揺れ動きや話の屈折などが充分に描かれている。キャラクターの掘り下げも深く、本当に完成度の高い作品になっている。全3巻という手に取りやすさも魅力的である。
 これから百合作品初めて読みます! という方にも自信をもってお勧めできる一作。


65、姫海月スグル『ふらちな倫理ちゃん』(2020~現在)
 頭の中でふらちな妄想が止まらない主人公が、想いを寄せるお嬢様と同じ高校に入学し高校生活を共に過ごしていく話。一見すれば少々下ネタに寄った作品に思えるかもしれないが、実際には下ネタはそこまできつくない。むしろ、コメディを交えながらもわかりやすく主人公たちの心情を表現していくため、非常に読みやすいと同時にきちんとキャラクターのたっている作品である。特に最新話は、主人公が常にふらちな方向に思考が飛んでしまうことに罪悪感を覚える話であり、そこのあたりのフォローもキッチリとしている。コメディ百合を読みたいひとにオススメ。


66、nonco『のんべれケ』(2019~2021年)
 きれいな下ネタを紹介したからには、ちょっとキツめのエロネタ作品を紹介せねばならぬと指が動いていた。とはいっても、先ほど紹介した『有害指定同級生』ほどぶっ飛んでいるわけではなく、あくまで本作は常識の範囲内でのエロネタである。妖怪が訪れる居酒屋で働く主人公が、妖怪を引き寄せる体質もあり、あんなことやそんなことをされてしまう作品。テンションが非常に高いコメディ作品なので、気楽に読めてかつ読むと元気がもらえる。とはいえまぁエロいものはエロいので、親御さんに見つかるのが怖い場合は電子書籍をお勧めする。余談ですが、私は大家さんが好きです。


67、古鉢るか『はなにあらし』(2018~現在)
 女子高生のカップルが、周囲に自分たちの恋愛関係を秘密のまま、関係性を深めていく話。とても尊い。最初のころは一話完結型で読者を入りやすくし、途中からかなりシリアスな長編が入る、とても上手い構成になっている。連載はサンデーうぇぶりであり、かなりの部分を無料で読むことも可能。とてもいい作品なので、まずは読んでみて欲しい。


68、ピロヤ『でこぼこ魔女の親子事情』(2020~現在)
 ピロヤさんのギャグセンスは本物であり、神がかっているとすらいえることを思い知らされる一作。百合要素は弱めだが、ギャグが本当に面白い。また基本的に一話完結型であるため読みやすく、またキャラクターたちがとても個性的でキャラがたっているのも大きな魅力。また基本設定が、捨て子であった赤子を魔女の主人公が愛情たっぷりに育てるという、とてもいい話なので読んでいて嫌な気分になることもない。ギャグマンガが好きな人には自信をもってお勧めできる一作である。


69、菅野マナミ『ひまわりさん』(2011~現在)
 学校近くにある古くて小さな本屋「ひまわり書房」の店主であるひまわりさんと、そんな彼女に好意を寄せる女子高生まつりとの関係性を描いた作品。本を扱った作品ということで、すでに本好きとしてはたまらないのだが、肝心のストーリーも完成度が高く面白い。また、まつりとひまわりさんとの関係性も絶妙である。頁を繰る手が止まらずスラスラよむことができる作品である。


70、吉屋信子『花物語』(1916~1926年)
 百合の前身であるエス(という書き方は、根本的に百合とエスとは少々描く関係性が異なっているのだから個人的に好きではないが、現状エスがほぼなくなり百合が増えているため便宜的にこのように書いた)を扱った作品、というかバイブル。百合(エス)の原点はなにか、と問われれば100人中100人が『花物語』と答えるに違いない。それほどまでに、『花物語』が現代の百合文化に残した遺産は大きい。女学院内での「お姉さま」という百合は、ここで確立されたといっても過言ではないだろう。
 正直、この紹介文という形式で『花物語』を語ることは不可能である。個人的にもっと知りたい! という方は実際に『花物語』を読んでみる、もしくは『百合姉妹 Vol.1』に掲載されている嶽本野ばら先生による「Welcome to the Sister dome」を読んでみることをお勧めする。また同じく吉屋信子先生の『屋根裏の二處女』もまたエスを扱った作品であり、こちらの方がストレートで分かりやすい、という意見もある。


71、井村瑛『ツミキズム』(2017年)
 短編集。表題作『ツミキズム』は非常に幸せになれる話であり、また『見つけちゃ、ダメ。』もふたりのイチャイチャ度合いに顔を覆いそうになるような素晴らしい作品である。が、私は本作において『感情的日常』を最大に推したい。
『感情的日常』では、メンタルの安定しない女性と、かなり無感情な女性との日々を切り取った作品である。この短編は、始まり方も素晴らしければ、終わり方もまた秀逸である。最後の一文はグッと胸に突き刺さってくるし、スナコの感情が加速していくシーンのセリフはどれも恐ろしいまでに感情的で、しかし同時に心の琴線を刺激してくる。
 百合の短編では(百合に限らず漫画全般に言えることだが)親の顔より見た展開というのが正直散見されるところがあるが、本作、特に『感情的日常』は中々他に類を見ないタイプの名作である。ぜひ一読をお勧めする。


72、入間人間『安達としまむら』(2013~現在)
 2020年にテレビアニメが放送し、またつい最近東海大学の入試問題に出題されたのでご存じの方も多いことと思う。授業をさぼりがちな安達としまむらはある日体育館の二階で知り合い、そして友情を深めていく、というのが簡単なあらすじ。なにはともあれ作者が『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』を執筆したあの入間人間先生なので、心情描写の上手さには定評がある。またコミカライズ版の完成度も高い。百合初心者にも安心してお勧めできる作品である。


73、ゆあま『イケメンすぎです紫葵先パイ!』(2019年)
 現在コミック百合姫にて『君と綴るうたかた』を連載しているゆあま先生の過去作。『君と綴るうたかた』とは全くテイストが違うというか、むしろ『イケメンすぎです紫葵先パイ!』を読んでいた身からすれば『君と綴るうたかた』が連載開始したときにあまりのギャップの大きさに驚いたものだが。ゆあま先生の描ける作品の幅の広さに驚く毎日である。
 少し話がズレたが、本作はタイトルから連想されるように、主人子が先輩である紫葵に惹かれバスケ部に入部する、という話である。キャラクターがたっているうえに、心情の変化が多少急なきらいはあるが関係性の記述が上手い。個人的にはみゃーもと先輩が大好きである。『君と綴るうたかた』は現在人気を博しているが、個人的には『イケメンすぎです紫葵先パイ!』の方も読んでもらいたいと思っている。


74、アジイチ『できそこないの姫君たち』(2018~2021年)
 これまた百合界隈では非常に有名な作品なのでわざわざ私が言うまでもない気がするが。個人的にいろはと泉さんが大好きなので紹介したい。
 オタク陰キャな主人公黒川が、ギャル陽キャな藤白とひょんなことから接するようになり、絆を深めていく話。アジイチ先生の作品の線には勢いがあり、特にハグシーンなど見開きになるような動作が大きい頁は最高である。
 また、本文章では同人誌については取り上げないようにしているため詳しくは紹介しないが、アジイチ先生の同人誌は特に素晴らしいものが多い。死神の話とか、私はとっても好きなんだな。


75、任天堂『ファイアーエムブレム 風花雪月』(2019年)
 百合です。とっても百合です。百合だって言ってるだろ。
 FEのペアエンドは有名だが、本作もその例にもれずペアエンドが存在する。また、『風花雪月』では同性ペアエンドが多数存在するのも素晴らしい(女性同士のエンドは恋愛感情まであるが、男性同士だと友情エンドが多いというのはあるにせよ)。とても評価の高い本作は無論ストーリーの重厚さもさることながら、キャラ同士の掛け合いにおける巨大感情がとっても最高である。エーデルガルトから主人公に向いている矢印はとうとんでもないものだし、ヒルダとマリアンヌの関係性を最高と呼ばずしてなんと呼ぶのか。百合カプではないものの、メルセデスとシルヴァンの関係性は救いでしかない。ただ、まぁ、はい、本作は戦争を描いているといいますか、いろいろと救われねぇといいますか。もうつらいという部分も往々にして存在しますので、魂の強度は上げてから挑みましょう。つらい。察して。


76、市川なつを『みーちゃんとアイリ』(2020年)
 魔法使いのアイリとお人よしな緑が出会い、そして絆を深めていく日常物語。基本的に悪人が出てこないうえ、キャラクターの魅力も充分に表現されておりストレスなしに読むことができる。話としての山場や感情表現もしっかりしており、過激な描写もないため百合初心者にはうってつけの一作。絵柄がとてもかわいい。


77、きあま紀一『ちゅうふれ。』(2015~2016年)
 思えば、私が百合を認識する前に読んだ、百合といえる最初の作品は本作だったのかもしれない。昔電撃大王を購読していた時にはとても楽しく読ませて頂いていた。
 主人公と、その主人公に圧倒的な忠誠心をもって仕える美少女との主従関係を描いたガールズコメディ作品。キャッチコピーの「こんな友情見たことない!」が示す通り、彼女らの関係性は友情という一言では推し量れないものになっている。コメディとしての出来が良く、主人公らのノリには思わず笑ってしまう。こちらのストレスフリーで読むことができ、また過激な描写もないため、ライト百合の入門としてお勧めしたい。


78、くずしろ『姫のためなら死ねる』(2013~現在)
 コメディつながりで本作も。今更いうまでもない気がするほどの、百合界隈では有名なくずしろ先生の作品である。くずしろ先生はとんでもなく筆が早いというか、同時連載作品数がえぐいことになっているので百合以外の作品で知っている、という人も多いかもしれない。
 時は平安時代、清少納言と定子様とを中心に、紫式部や彰子様などを巻き込んだ百合作品。基本的には日常コメディ作品で、一話完結型であるからどこからでも読むことが可能である。またキャラクターはコメディタッチで描かれているため、分類としてはライト百合に属される。
 くずしろ先生の重めの百合作品が読みたい、という人は『ラブデス。』『雨夜の月』『きみのせい』などもオススメ。


79、長門知大『将来的に死んでくれ』(2017~2019年)
 またまたコメディつながりの作品をば。同級生の少女に恋する主人公は、ことあるごとに万札を握らせて円光しない? と誘惑し続ける。……いや、誘惑…………? いや、まぁ、誘惑だきっと。そして同級生の方はそれをつねに断り続ける百合作品。
 1話を読めばもうそれでわかると思うが、話のテンポや台詞回しが非常に良い。読んでいれば自然に笑ってしまうし、次から次へと頁を繰ってしまう。10年代で面白かった百合作品を百合ファンの間で語れば、まず間違いなく名前が挙がって多くの人間が「あ~」となるに違いない一作。ぜひ一読をお勧めしたい。


80、高嶋ひろみ『あさがおと加瀬さん。』(2012~現在)
 これまた非常に有名な作品。映画化も果たし、多くのファンによる根強い人気がある。クラスでは目立たない方の主人公と、陸上部のエースである加瀬さんとの恋模様を描いた作品。ふたりの関係性についてストーリーが骨太で、詳細に記述されているのも非常に嬉しい。
 漫画版はもとより、映画版の出来も非常に良かったため、初見の方は映画から入るのもありかもしれない。尊い百合シチュエーションの詰め合わせ、みたいになっていてとても百合指数の高い一本となっている。
 知名度も高く、一度は読んでおきたい百合作品の一本であることは疑いようもない。


81、いちごイチエ『ヤンデレめる子ちゃんはせんぱいがお好き』(2021~現在)
 私、ヤンデレの巨大感情って好きなんですよね。あ、性癖でちゃいました。
 とまぁ冗談はさておき、先輩に恋する後輩の超巨大感情が読める作品である。1話の目が座った感じの感情の炸裂もさることながら、個人的には2話のめる子が先輩に惚れるようになるエピソードが最高である。1話分という、決して多いとはいえない頁数の中で、める子がこれまでかけられてきた心無い言葉たちと、彼女がそれによってどれだけ傷ついてきたのか、そして何より先輩によってどれだけ救われたのかがとても上手く表現されている。現在3話までの更新だが、主要キャラクターの魅力は充分に発揮されているところもポイントが高い。
 身長差のある百合って、いいよね。


82、きぃやん『君としらない夏になる』(2021~現在)
 第1話は、ここ数年の百合作品の中でもトップクラスの出来を誇っていた。その後も順調にストーリーが進んでおり、今後どのように展開していくのかが気になる作品である。
 就活に疲れた主人公は、恋人とすべてを捨てて離島に引っ越し、そこで新生活を始めるというのが大まかな全体像ではあるが、とても丁寧に主人公らの心情が描かれているのが素晴らしいところである。お互いがお互いのことを大事に想いながらも、時にすれ違い、そして話し合っていく姿はパートナーとして理想的である。2022/3/17に第1巻が発売されるはずなので、ぜひチェックしていきたい。


83、羽柴実里、zinbei『酒と鬼は二合まで』(2021~現在)
 ぼっち大学生が誘われた飲み会で鬼と出会い、その鬼にお酒をつくるようになる話。1巻のふたりの関係性はかなり上質であり、また導入の出来が素晴らしく高い。今後どうなっていくのか気になる百合作品である。


84、十五夜『青肌巨乳とクソボッチ』(2021~現在)
 上質で、かつ互いを対等に肯定しあう良い作品なんですわなぁ……。タイトルで敬遠してしまう人もいるかもしれないが、ぜひ読んでみて欲しい。1話ではちょっとしたもやもやが胸の内に残るのだが、それもキチンと3話で解消される親切設計である。作品として優れている点は多々あれど、ひとつを挙げるとしたらこのストーリーの完成度の高さである。起承転結がしっかりしており、話の前後のつながりや世界観など非常によく練られている。ぜひ読んでおきたい。


85、今野緒雪『マリア様がみてる』(1998~2012)
 ある種伝説的といっても過言ではない百合(エス)作品であろう。百合界隈で『マリみて』と名前を挙げて、読んだことがあるないは別にしろ、伝わらないということはまずあり得ない。というか、あり得てはならない気すら若干する。それほどまでに、本作が残したものは大きい。実際、百合界隈に男性読者が急増するきっかけとなった作品であるとされている。
 私立リリアン女学園高等部を舞台として、スール制度と生徒会を中心にして登場人物たちの関係性を描いたのが本作。伝説的な作品であることが納得できるほど、本作のストーリー運びやキャラクターの心情の描き方、そして心の揺れ動きは素晴らしく表現されている。
 少々古い作品であるということで敬遠してしまう人もいるとは思うが、やはり一読をお勧めする。読めばいかに『マリア様がみてる』がすぐれた作品であるかに気が付くはずである。


86、真くん『姉を好きなお姉さんと』(2021~2022)
 結構テンション高めの百合作品。だからといって心情描写が手抜きであるわけではなく、むしろかなり丁寧に描かれている節がある。特に、主人公が悩まされるストーカー事件の件では、思わずガッツポーズを決めたくなるほどキャラクターたちが魅力的に表現されている。百合初心者にもお勧めできる作品である。


87、ユキヲ『邪神ちゃんドロップキック』(2012~現在)
 百合、かなぁ……。書いておいてなんだが、私としてもちょっと疑問を覚えなくもなくなくなくなくなくない。邪神ちゃん完全にただのおっさんだし。かなりクレイジーな作品であることは否めない。ただ、本作のアニメが放送してた時とか、私このアニメを一番楽しみにしていたし……面白い作品であることは疑いようのない事実である。とりあえず、アニメの出来もかなり高いので、アニメから入ってみてはどうでしょうか。


88、アキリ『ヴァンピアーズ』(2019~現在)
 表紙からシリアス調なイメージを覚える本作であるが、実際にはそこそこギャグテイストなところもあり、かなり読みやすい部類である。吸血鬼に恋した主人公が、なんやかんやとありながら吸血鬼と日常を過ごしていく話。サクサク読み進めることができるため、まずは1巻を読んでみるのが良いと思う。


89、志村貴子『青い花』(2004~2013年)
 先述した『マリア様がみてる』がエスよりの作品であるとすれば、本作は対称的にかなり百合に寄った作品である。また『マリア様がみてる』と同様に、過去の名作であり現在でも語り継がれることの多い百合作品。語り始めると正直紹介文としてはあり得ない長さになってしまうので割愛するが、こちらも語り継がれることが充分納得できる作品である。
 ありとあらゆる界隈で「読んでおきたい、見ておきたい作品」というのは存在するが、本作は間違いなくその一作といえるだろう。


※ここから先は18禁を開放するほか、かなり正気度の低い紹介文も多々存在するため、気を引き締めなおして欲しい。もし地雷だったとしたら、ぜひそのまま踏み抜いて吹き飛んでみてはどうだろうか。


90、高乃朔『カノジョと私の秘密の恋』(18禁)(2016年)
 えっっっっっちな作品ですねぇ……。さてさて、18禁解放ということで90番台以降は書き始めたわけなのだが、中々順当で有名な作品を挙げられたのではないだろうか。個人的に、18禁の商業百合の中ではトップクラスの作品であると思っている。あとモザイク少な目。
 18禁百合に限らず、18禁作品というのは、殊に商業においてエロ表現にばかり目が向けられて話の本筋や関係性が薄くなることが多々見受けられる。そのため18禁作品は同人の方が面白いと個人的には常々思っている次第なのだが、本作はそのような関係性の希薄化が見受けられず非常に上質な百合になっている。というか、本当にこんなにエロ頁少なくて商業エロとして大丈夫なのか、と読み手が思うほどエロ表現の少ない回とかある。でも、だから良いのだ……さすが高乃朔先生といったところである。現在新品での中々入手は困難になっているが、とても優れた百合作品であることは間違いないので、ぜひ読んでみて欲しい。


91、ちょりもっき『芸能活動は百合えっちの後で』(18禁)(2021年)
 つい先ほど商業百合の話を述べたが、そういったエロ表現のせいで心情的な関係性が希薄化してしまうという意味で本作は少し惜しいとはいえる。もう少し主人公サイドの詳しい心情描写が欲しいとは思ったが、act.3などはとてもいい話で個人的に大好きである。全体的に再生のお話でそこのあたりも好きだし、今後のちょりもっき先生の作品に期待を寄せている次第である。


92、幾花にいろ『丹』(18禁)(2021年)
 いきなり正気度が下がったと思ったかもしれない。実は百合エンド、という言い方は個人的にあまり好きではないので多用しないが、これは表のストーリーの裏に女女の非常に巨大な感情が見え隠れしているというか、ありていにいってしまえば、秘密シリーズは男を介した百合作品なのである(暴論)。いや、まて、正気度が低いと思うかもしないが、普通に考えて彼氏に裏切られたヒロインが、今後誰と付き合っていくのかは自明の理だろう。友情エンド、にしては互いに巨大感情すぎるんよなぁ……。まぁ、はい、というかそもそも百合であるなしに関わらず秘密シリーズは非常にストーリーの完成度が高いので読んでみてはどうでしょうか。全年齢なら『あんじゅう』『イマジナリー』どっちも面白いですよ。


93、7th Door『退魔師紫苑』(18禁)(2021年)
 あぁ、正気度が低くて頭がおかしくなりそうだ。うるさい、ていうかそもそもひとりで百合作品100選書き切ろうとしてる時点で正気度はお察しなんだこのまま最後まで突っ走るぜ。
 閑話休題。つかまぁ、本作はぶっちゃけただのバカ抜きゲーである。爆乳の女性たちが触手にあんなことやこんなこと、それからそんなことまでされてしまうような。ちょっとそこに百合要素(界隈では〝レズ〟要素ともいわれる。そろそろビアン要素っていわれるようにならないかな、と個人的には思っている。あんまレズって言葉使いたくないよね)を足しているだけで、基本的に百合的な女性同士の心情に根差した関係性なんてものを求めるだけ無駄ァ! なのだが……いや、火凛っていうキャラがですね…………好きなんです。そして主人公への巨大感情。最高か? ぜひ拠点では火凛に話しかけて欲しい。
 レビューではエロ要素300点ゲーム性30点なんてことをいわれたりしていたが、個人的にはこういうレトロゲーじみたゲーム性がめちゃめちゃ面白かった。というか、途中エロ要素とかガン無視してゲームを普通にやり込んでいたらクリアエンドがあららな感じになってしまった。あういうエッチなエンドも好きです。いやエロかった。最近のゲームってストレス感じるところ全部省いて気持ちいだけにしてたりするから、こういうちょっと不便でストレス感じて、むしろそこをどうするかに頭使うゲームは好きですわ。
 ただし! 本作にはftnr要素があるのでまぁそこはご注意を。まぁ、触手で百合とかいってるあたおか勢は乗り越えられると私は信じている。あと最後に……ftnr火凛エピソードを…………ください………………。主人公の〝そこ〟のステータスは火凛にささげようと苦心してきたのに、そもそもそれが存在しないとわかったときの私の慟哭たるや。火凛の番外編待ってます。


94、新海誠『君の名は。』(2016年)
 こいつは正気か? お前の正気度はいつ戻るんだ。まぁ、SF研のメンバーにも同じことをいわれましたとも。でもね、『君の名は。』は百合だとぼかぁおもうんだなぁ。
 つか、私がこう思うようになったのは完全に百合姫2019年10月号に星井七億氏が寄せた『こじらせろ! 百合妄想!』のせいである。責任を取ってもらいたい。でもいわれてみれば確かに『君の名は。』は百合作品と思えてくるからあら不思議。
 さて、本作を百合と呼称するにあたって重要なのはバイト先の先輩ミキと三葉である。主人公たる瀧が片思いしているミキは、〝三葉が入れ替わっている状態の〟瀧に惹かれていく。さて、百合界隈にいるとこういう言葉をよく耳にする。「百合は精神性だ」と。ならば、精神上は女性である状態の瀧(三葉)と、それに惹かれるミキは実質的には百合といって過言ではないのではないだろうか。あぁまったく過言ではない、過言ではないんだ……!
 そろそろ各方面からぶち切れられそうなので最後にこう注釈しておこう。上記のものはすべて個人の感想です。


95、モノリスソフト『Xenoblade Definitive Edition』(2020年)
 正気度はいつ(ry。
 もともとの『Xenoblade』は2010年に発売され、全世界を震撼させた。こういう私も震えさせられたひとりである。それほどまでに、本作の完成度は高くストーリーも重厚で、サイドクエストも豊富、間違いなく『Xenobalade』は単なるゲームでなく〝世界〟であった。まだまだオープンワールドという考え方の希薄であった当時、これほどまでにどこまででも行くことができ、そしてどこまででも作りこまれた世界というものはなかった。私は、この『Xenoblade』を人生で出会う最高のゲームであると信じて疑っていない。『Xenoblade 2』も人気ではあるが、ぜひ先に本作をプレイしてみて欲しい。
 さて、どこまでも最高な本作であるが、クリア後に少しだけ疑問が残る。「メリアは最終的に誰と将来を添い遂げるのか」というものだ。もちろん、私は恋愛至上主義者ではないので恋愛しなければいけないとは思っていないし、それをしなければ幸せになれないなんて言うつもりは毛頭ない。しかし……だ。メリアが背負うことになる重圧は、彼女が世界を救い、そして残ったハイエンターを率い、さらには長寿であるがゆえに長い時間を人を導き続けるであろうことを踏まえれば、相当なものになることは想像に難くないのだ。そこで誰が、彼女を隣で支えていくのだろうというのは、発売当時から長いこと疑問だったのだ。
 ネット上では「俺が幸せにするしかねぇ!」などとほざく気持ち悪いやつらが噴出したが、そんなやつらにメリアちゃんを幸せにできるわけがないのだ。そう書き込んでいたやつらの何割が、この間発売したメリアのフィギュアをきちんと予約した? 所詮その程度の愛で数百年に及ぶであろう彼女の重圧を引き受けようなど片腹痛い。
 閑話休題。さてまぁ、しかしそんなメリアの将来を、同じ目線の高さで隣を歩き、支えていく人物が本作『Xenoblade Definitive Edition』の『つながる未来』で明かされた。そう、メリアの宿敵たるタルコである。いや、マジか、プレイしたときの率直な感想はその一言に尽きる。いやしかし、どれだけ考えてもそれが満点の回答であり、タルコしかありえないと確信させられる。彼女はメリアと同じハイエンターであり、同じだけの年月を傍にいることができる。そして王族の血を引くのだから、政治的なサポートも充分に可能である。……いや、最高か。公式はやはり神だった。タルコさん、メリアちゃんも末永くおねがいするも…………。特に『Xenoblade 3』なんかつらい話になってそうだから、メリアちゃんを支えて欲しいも…………。


96、CAPCOM『モンスターハンターライズ』(2021年)
 ひのみのは百合ぃ! そういわずして、なんというのか。本作の受付嬢たるヒノエとミノト。明るくにぎやかな姉と、対称的に物静かな妹。しかし、彼女らの間にある愛情は本物であり、そして何よりお互いがお互いのことをとても大切に思っている。番の古龍とも共鳴するし、これは公式から百合だと太鼓判を押されているようなものである。これに関しては正気度云々といわれる筋合いはないと確信している。さて、まだ本作をプレイしたことがないという方は、一度コントローラーを握ってみてはいかがだろうか。


97、任天堂『リングフィットアドベンチャー』(2019年)
 ついに頭がおかしくなったか、かわいそうに。そういわれてもこれは仕方ないな。でもね、ふたりで世界を救うって、とっても巨大感情な百合だと思いませんか。
 主人公のフォルムを女性にして、リングの声を女性にすれば、もうこれは完全な百合である。だって彼女らは、体をあずけあって(意味深)先に進んでいくんだから。しかし、そこに邪魔する間男がひとり、そうドラコである。いつまでもリングの元カレみたいなオーラを出しおってからに。確かに百合に男を出しちゃいけないなんてことはないし、そういう考えは悪習だと思っているが、ドラコちょっとリングへの距離感近いよね。もうちょっと距離考えなよ。…………いやまて、ドラコってもしかして女の子では…………うっあたまが。


98、吉崎観音『ケロロ軍曹』(1999年~現在)
 ケロロって、百合だよね。そう語ったときの、会員たちの驚愕の表情は記憶に新しい。けれど、小雪ちゃんと夏美との関係性は百合といわずしてなんという? とても素晴らしい関係性だと思いますよぼかぁ。
 はるか昔には、今ほど百合という作品が氾濫しておらず、草の根を分けて百合を探すような時代もあったという。百合作品の集まった島などイベントで存在せず、百合ロードが連なるだけの時代もあったという。その精神を忘れずに、私は百合作品を探求したいのだ。
 てか、クルギロとかケロタマとか、結構BL界隈もにぎわってますしおすし。


99、東京法令出版『春の7日間演習ハルナナ』(2022年)
 タイトルを見ただけで百合が脳に浮かんで、これはもうあかんことになりそうじゃ。と某場所でニヤニヤしていた私を打ち砕いたのは、本印刷物の表紙だった。なんか、すげーサッカーやってそうなニカッと笑った少年と、おとなしそうな少女がふたり。……騙しやがったなっ!?
 いやまて、そもそも本作は小説でも漫画でも何でもない、というか、もはや英語の一副読本だ。そのタイトルで百合妄想をしていた私に非があるといわれれば、まぁ確かに一億分の一ぐらいはあるかもしれない。しかし冷静に考えてみて欲しい。『ハルナナ』だぞ? どう考えても、ハルカとナナミが春の7日間演習(意味深)に行く話に決まっているじゃないか。ハルカは新高校2年生、ナナミは新高校1年生。ふたりは幼馴染だったが、ハルカの高校入学を機に少し疎遠になっていた。しかし、入学後すぐにある7日間の合宿。そこに先輩として同行するハルカに、ナナミは密かな期待を寄せており…………ふむ、どう考えても百合だ。百合しかない。ということで、本作は百合なんだ。
 今一度言っておくが、すべて個人の感想で、実在の人物や出版物は一切関係ありません。悪しからず。


100、倉田嘘『百合男子』(2011~2014年)
『百合道とは死ぬことと見つけたり。』
 気づけば本投稿最後の100作品目。正直、30作品ぐらい書いた段階で「こんなの始めなきゃよかった」とか「50選ぐらいにしようかな」などという悪魔が囁いたのだが、どうにかこうにか己を曲げずにここまで来られた。
 そして、最後を飾るのはやはりこの作品であろうと。正直、最初の紹介作品を『citrus』にするぐらい、最後を『百合男子』にすることは決まっていた。百合姫で『百合男子』が掲載されている部分だけ1頁に4頁分がまとめられたり、袋とじにされたり、『百合豚』に改名しろといわれたりなどありとあらゆる扱いを正当に受けた本作であるが、私に百合との向き合い方を教え、そして導いてくれたことは疑いようのない事実である。
 主人公、花寺はくそうるさい拗らせた百合男子である。そして行き過ぎている部分も多々あり、それを籠目という百合男子に咎められたりもする。本作は確かに女性の百合カプも存在するが、それ以上にむさくるしい男が常に登場する。では、本作の何が素晴らしいのか。そんなものは読んでみればすぐにわかる。
 本作は、倉田嘘の魂の叫びである。
 彼ほどまでに長く、そして深く百合を愛した百合男子もそう多くはないだろう。正直某誰かの知らない世界に百合作品特集が組まれたら、倉田嘘か百合ナビさんかりっちぃかぱいんさんか、そのあたりが出演者じゃないと納得できない。
 倉田嘘は、本物だ。それを疑う余地もないほど痛烈に教えてくれる。私もこんな百合好きになりたい……いや、なりたくはない、しかしなりた……い? わからない、わからないんだが、百合好きとしての魂が共鳴するんだ。この作品に。彼の、魂の叫びに。倉田嘘の叫びは、百合男子の魂をもろに突き刺す。なぜならば、倉田嘘自身が悩み、そして悩み続け、恐らくは自分自身でも未だ完璧と呼べる回答を得られていない言葉を直にぶつけてくるからだ。百合男子にとって、考えないようにしている、しかしやはり考えなければいけないことを提示してくるからだ(なお10年近く前の作品ということもあり現在の価値観からは少しずれていたり、性的嗜好と性的指向の区別はついていなかったりはする)。
 単行本2巻第6話の籠目が語る「百合ってなんだ? セクシュアルマイノリティー、つまりは他人の苦悩を餌にした妄想じゃねぇか。俺たちは女子に魅力を感じるからこそ百合に興味を示す訳で、結局根底にあるのはヘテロセクシュアリズム! 百合っぷるとは最もかけ離れたところに居るただのヘテロの野郎さ!」や4巻13話「男子の百合を愛する原動力はヘテロセクシャル! 結局お前は俺、ただの男子なんだよ!」のセリフで動揺しない百合男子がいるだろうか。というか、自分の百合好きが自身の根底にあるヘテロセクシャルから来ているのか、それとも純粋に百合が好きという気持ちから来ているのか、前者ならば自分は百合を愛する資格なんてあるのだろうか、作品と現実は違うとはいうが間違いなく自分という現実がそれを享受する以上干渉する部分はあるんじゃないか、などそういったあれこれを悩んだことのない百合好きのヘテロ男性を、果たして真に「百合男子」と呼ぶことができるのだろうか。
 私たちは常に考えなければならない、自分が、結局のところただの女の子が好きなだけで男は見たくないという結果の末に百合作品を読んでいるのか、はたまた本当に百合という関係性に魂を震えさせ百合を読んでいるのか。〝男〟という自分にとって不要な対象を排除した〝女の子〟だけで形作られた虚構を愛しているのか、清濁併せのんだうえでやはり女性同士の関係性を眺めていきたいと思っているのか。私は女の子が好きな男性か、百合が好きな百合男子か。自問し続けなければならない、たとえその先に回答がなかったとしても。なぜならば、それこそが、百合男子だからだ。
 百合男子よ、常に疑問を持ち続けよ。自分が読んでいる作品が、百合なのか、ただ女の子がいるだけなのか。百合男子よ、常に考え続けよ。自分が百合を愛しているのか、女子を愛しているのか。百合男子よ、百合を愛し続けよ。
 倉田嘘先生、お元気ですか。あなたが拗らせた百合男子は今日もこうして元気に生きていますよ。あなたがいなければ、こんな葛藤には苛まれなかったかもしれない。もっと拗らせていない、純粋に百合を楽しむだけの人類になれたかもしれない。だから、そういう意味ではあなたを恨んでいるかもしれない。けれど、あなたがいたからこそ、百合という作品群の深さを知り、そしてより一層その関係性に目を向けられたことも真実です。だから、この胸の内には恨みと尊敬と、それが同時に存在しています。だからこそ、本投稿の最後の言葉はこれにしたいと最初から思っていました。

お…!! お前がっっっ!!! お前が俺を!! 百合男子に!!!

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