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料理と建築 -シンプルと複雑さ-

料理は見えないものを形にする醍醐味がある。建築を作る時と同じだなと感じている。
味、風味、食感などをイメージして、さまざまな材料やスパイス、調理法を組み合わせて、料理が出来上がる。

僕は普段から気分転換に料理をしており、子供の頃はシェフにも憧れていた。料理には文化があり、文化ごとに「さしすせそ」のような、先人が築いた基礎が構築されている。
基礎から応用されたシェフの料理に出会った時は、わくわくする。

料理のプロではない僕が普段の料理で心掛けているのは、素材を生かすことで、シンプルな調理法を好む。昆布から出汁を取った味噌汁、ニンニクと塩だけで旨味を出したパスタ、アロゼで香りを纏わせたお肉、お魚など。プロの料理人による手間をかけた料理は外食で楽しみ、普段の生活での料理は、素材を最小限にして旨味を最大限に感じたいと考えている。素材それぞれの個性、素材の味わいを引きだす火入れ、旨味を最大化する塩加減など、料理はシンプルながら複雑さが表裏一体となっている。

建築を作る時も感覚は似ている。
敷地の特性を生かし、建物、空間の骨組みはシンプルに、素材と質感、光と影で動的な空気感を作り出している。

料理も建築も、完成系をイメージしながら、それぞれの工程ごとに、状況や相手と対話しながら微調整を加えていく。つくる前にイメージする完成系は、あくまでもつくり出す前のイメージであって、ものづくりのプロセスや状況によって、完成系は常に変化していく。

微細な変化を捉えて、対話した先に出来上がったものが、当初イメージした完成系以上に多彩な顔を見せた時は、とても嬉しい。

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