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素材はどんな基準で選ぶのか?|地味な建築の味わいかた

先日、建築家が出演しているメディアを見ていると、
「スマートフォンのようなつるつるしたガラスばっかりを触って
一日を過ごしている」
という発言がありました。


あんなにガラスを触っている時代はなかった。


そういや、ガラスに触るってこと、そんなになかった。。
曇ったガラスに落書きするときくらいかな??

もとい、昨今、ウイルス対策で非接触の場面が増えて
素材の向き合い方を考える大切なときかなと思いました。


建築を設計するときに直面する素材の質感。
自然素材がいい、汚れがつきにくいのがいい、
などクライアントによって様々です。


どれもその方にとっての正解があります。

いつも素材選びで考えていることは、
その人たちの「居心地が豊かになるか」です。


そのきっかけは学生時代に遡ります。
研究室を通じて、設計事務所にアルバイトに行っていたときのことです。
その事務所が設計した老人保健施設の利用状況の調査を行いました。
※研究室では、設計手法・プロポーションなどの研究以外に福祉施設の実態・計画の研究もしていました。


壁の仕上げ材は、この手の施設としては当時珍しく、
珪藻土を使っていました。
風合いはもちろん吸湿性は豊かで現在でも人気のある素材ですが、
表面はざらざらして安全面では敬遠されることもあるものです。


その設計者である建築家は
「予めざらざらしていることは認知できるので
「あぶない」と思えるから気をつける。
それ以上に無機質な素材でできたものよりも
居心地のよい空間で過ごしていただきたい。
無自覚が一番危険です。
あぶないという場面になれば、それはお互いにサポートしあう
コミュニケーションを取ってほしい。
その双方がそろえば、よい施設運営ができると考えている」
というものでした。


この施設の理念では、それに見合った建築のようでした。


また、介護を伴う住宅のリノベーションに携わったときのことです。
無垢フローリングがいいと思っているけれど、
介護していると掃除のストレスが解消できるものがいい。
ということで、視覚的な暖かさを重視して、
木質柄の長尺塩ビシートを採用しました。


この調査や仕事を通じて、私の素材への考え方は、
・先入観を排除して、その人の居心地のよさに見合ったものを選ぶ
・何が何でも自然素材を使うということはしない

が手がかりとなっています。


自然素材はやはり肌触りがいいものです。
建築をしているとその良さを知っているので、
どうしても使っていただきたいと思うものです。


でも、それが記号的に自然素材を使うことが設計事務所と思っていないか
自問自答します。


建築を通じて、設計するのは居心地や心をつくる・育むことです。


憧れの素材を選ぶのもよし、機能性でもよし、
でも、一度は触れてみてください
こんな時代だからこそ、画像だけに頼らずに
ご自分で実感してみて下さい。


空間は体感して味わうものです。
選んだ素材があの場所にあったらどうか、
全面にあったらクドいか、
妄想してみて下さい。それだけでも楽しいですよ。


番組を通じて、そんなことを思い起こした時間でした。

(写真は、「谷六の家」縁側|木毛セメント板と障子)

【追伸】

先日、文具好きが高じて、サクラクレパス「PIGMA」の
愛用者インタビューに載りました。

画像1

https://www.craypas.co.jp/pr/pigma/interview03/

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