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読書【錦繍】 本の世界へ

『10年の時を隔てて浮かぶ顔 今は笑顔で暮らしてますか』


作家・宮本輝の本に出会ったのは、ラジオがきっかけだった。

20年前の私は、一人暮らしの修業時代。
家賃払うので精一杯の毎日、
TVなんて持ってなくて、見ている暇もなくて、
古いアパートではいつもラジオが流れていた。

コツコツと制作しながら聞いていたラジオ番組の中で、特に好きだったのが作家・小川洋子さんの【Melodious library】↓

https://www.tfm.co.jp/ml/

この番組は、毎週一冊の本を紹介してくれる。
小川洋子さんとアシスタントの藤丸由華さんの 見事な連携プレーで、本の世界に入り込んでしまう。
ある本の主人公のダメ男っぷりを笑いながら話していたり、世界の名作を身近な感覚で解説してくれたり。
笑いあり、涙あり、心の動く番組を毎週楽しく聞いていた。(今も聞いています)

「来週は宮本輝さんの【錦繍】を取り上げていきます…」
番組の最後にそのタイトルを聞き、図書館へ直行した。

宮本輝さんと言えばコーヒーのCM。
『違いがわかる男・ゴールド〜☕️』
(かなり前のCMなので、知っている方は少ないかもしれません)
作品は読んだことがなかった。

【錦繍】は10年前に別れた30代の夫婦が、偶然再会し、手紙をやりとりする小説。
時間を忘れて、進んでいく【錦繍】の世界。
息をつく暇もないくらい、一気に読んでしまった。

「この人は、どうやって書いたのかな?」
毎日どこかでペンを置いたはずなのに、途切れる場所がない。
そして、手紙のやり取りの中で、男性である宮本輝さんが男性の心情を表現するのはわかるが、女性の心の機微に驚く。
なぜ、ここまで心の奥が見えるのか。
言葉に出来ない表現が、宮本輝さんの言葉によって表現出来ている。

私が小説という芸術に感動した、最初の作品だ。

苦しい時も、悔しい思いをした時も、本はその世界へ連れて行ってくれる。
読んでいる時間だけは苦しさから解放される。
私は本に助けてもらった。

学校でいじめられたり、家庭で居場所がない子供たちには、ぜひ、図書館へ行って本の世界に入ってほしいと願っている。

芸術とは[不要]なものではない。
人が生きていくには[必要]なものだ。
心の栄養、それが芸術なんだと、改めて感じる。

秋に近づくと毎年読む【錦繍】
本は、読む人の環境によって感動が異なる。
今年はどんな感動があるだろうか、楽しみである。








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