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企業価値とコーチング~インタンジブルアセットと対話とエンゲージメント~

ちょっと大仰なタイトルにしてしまいましたが、正直私は組織人事関係はそれなりに知識と経験を蓄えてきていますが、財務会計については人並み以上に精通しているわけではありません。(「経営・財務もわかる人事パーソンになりたい」という思いから、簿記2級とMBAは持っていますが。。。)

そんな私が最近仕事関係で一橋大学の伊藤邦雄先生の「伊藤レポート2.0」を読む機会があったので、今日はそこでの気づきを書こうと思った次第です。

いつものコーチングやポジティブ心理学・キャリア教育などのトピックとは少し色合いは違うようには見えますが、毎度しつこいながら、ファイナンス的観点からということでなく、コーチングや組織開発との繋がりの仮説を書いていきたいと思います。

有形資産(タンジブルアセット)から無形資産(インタンジブルアセット)へ

伊藤レポートの中では、「企業価値を決定付ける因子が有形資産から無形資産に移行している」ということが言われています。きっとファイナンスやアカウンティング関係の仕事をしている人にとっては今更感があるというか、とっくに認識されていることかもしれませんが、私にとっては新鮮でした。

というか、研究開発費や人材・ブランド力への投資が重要とか、ESG投資が益々注目されてきているという、頭の中では何となく理解できていたことが、エビデンスベースで説明されていることに改めてすごく納得感を得たという感じです。

そういえば、うちの父は10年くらい前まで某外資系コンサルファームで勤めていたのですが、彼が何かの雑誌でインタビューを受けた記事の中に「インタンジブルアセット」という言葉があったのを見て調べて、「へー、目に見えない資産に価値があるのねー。」と思ったのを急に思い出したりもしました。そう考えると、本当に、ずっと昔から言われていて今更感があることなんですね。(きっと人事組織で言うところのワークライフバランスとかダイバーシティみたいに、ずーっっっと昔から言葉としては認識されているけど上手くできていないこと、みたいな感じなんでしょうか。。。)

企業におけるカルチャーの重要性

伊藤レポートの中の無形資産への代表的な投資としては研究開発費、人的投資等が挙げられています。
組織人事の観点から見ると、組織内に優秀な人材が沢山いることはもちろん企業価値向上に直接的に影響することは自明ですが、それにも増して、最近益々重要性が増してきているのは「カルチャー」だと感じています。

ドラッガーも「カルチャーは戦略に勝る」という言葉を残していますし、戦略人事の第一人者デイブ・ウルリッチも'Culture matters more than Talent'と言っています。これからの時代にパフォーマンスの高い組織になるのは、戦略・人材は勿論のこと、カルチャーが与えるインパクトが大きくなってきているになっている、ということかと。

でもカルチャーとは一体何なのか・・・「両利きの経営」の著者チャールズ・A・オライリーはカルチャーのことを「行動パターン」「行動規範」だと言っています。
「何となく明るい雰囲気」とか「風通しがいい感じがする」というのも、そのベースには所属する人たちの表情が豊かだとか発言が多いなど、具体的な行動があるのですね。
そして、行動に変革を起こしていくための手立ての一つとして、コーチングは有効です。(ここで繋がるのです!)

大切なキーワードは対話・エンゲージメント

伊藤レポートの中で謳っていることの中で更に印象的だったのが、企業と投資家の「協創的な関係」を促進する「建設的な対話・エンゲージメント」の重要性、という言葉。

企業価値は、企業の一方的な努力のみで創造されるのではなく、企業と投資家の「協創」を通じて創造されるため、特に、財務諸表に数字で表れない無形資産のところについてはしっかりと両者間で対話をし、理解や認識を深めなければならないという点です。

どちらかが権限を持って一方的に指示命令をしたり、何か正解を求めて「議論」するのでもなく、お互いの奥深くにある価値観や考え方を明らかにした上で理解して一緒に考えていく、という「対話」。そして、そこから創り上げる深い繋がり=「エンゲージメント」。これが、企業価値を高めていくにも重要、というわけです。

上述の話では、企業内部のカルチャーを形成していくにもコーチングが有効ということを書きましたが、伊藤レポートの言う企業と投資家の対話を促していく、外部への「対話力」を高めていくにも、コーチングは有効ではないかと考えています。

企業として何を大切に思っていてどういう目的で費用を使ったり投資したりして、そのリスクやインパクトをどのように認識しているかをしっかりと自己認識し、発信・説明もしていく。この「対話」の本質は個人であっても組織であっても同じで、常日頃自己のバリューを自覚してPurposeに沿った生き方(組織の場合は事業運営)をしていることを堂々と示していくことが大切なのではないかと思いました。

企業であっても分解すると一人ひとりの個人であり、バリューやPurposeを語るにはコーチングが有効ということもありますし、組織としての共通認識や相互理解を深めるためにはシステムコーチングが有効ということも言えるかと思います。

「これからの時代のCFOはカルチャー作りにも関わる必要がある」

古くからの友人でいつも私に新しい知見と刺激を与えてくれる尊敬する人の一人に、宮澤佑輔さんがいます。(彼のnoteはこちら

宮澤さんは公認会計士の資格を持っていて監査法人での勤務経験もありますが、ヨガのインストラクターもやっていたり、今は組織人事の仕事をしているという、一見変わった、でも全て繋がる軸を持っている、不思議な魅力を持った人です。

彼が以前言っていてすごく印象に残っている言葉が、「これからの時代のCFOは組織のカルチャー作りにも関わっていく必要が出てくる」というものです。

一般的にはCFOのような数字・ロジカル・左脳・・・的な仕事と、組織人事・文化のようなふわっとした(でももちろん重要な)ものは結構かけ離れている印象があるかもしれません。
でもこれからの時代は、財務諸表に責任を持ち数字を見ていくCFOも、そこに影響を与える見えないもの(=カルチャー)にも関わっていく必要がある。
そして、勿論その逆もしかりで、HRとしても数字にしっかり関わっていかないといけませんね、と改めて痛感しました。



ひょんなことから、最近自分のテーマである左脳と右脳のブリッジとか、相互インパクトについて組織の観点から考えてみたので、まとまっていませんがざっと頭の中を書き出してみました。乱文ですが最後までお読み頂いたみなさま、どうもありがとうございました!



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