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もう一つの物語

先日、NHKの「アナザーストーリーズ 運命の分岐点」という番組に巡り会いました。

放送されたのは2020年8月4日。
内容は厚生労働省の局長だった村木厚子さんが身に覚えのない罪で大阪地検特捜部に逮捕される、”あの”事件を取り扱った内容でした。

私もこの事件に関してはさまざまな報道記録や書籍などから勉強させてもらいました。つい、数年前の事件のように感じますが、もうあれから13年も経っているんですね。

番組を見ていると、検察の捜査手法が紹介されていきます。
「あれ?」と思いました。
13年前と今とで、検察の取り調べは何も変わっていないなと。

検事が書いた調書。
確認のサインを求められた村木さんは、仰天したそうです。

「ひとりの検事さんが、10日間取り調べをして、供述調書は数通しか作らない。そうすると、私が100ぐらい喋った中で、検事さんは取りたい調書だけ取る。私がシロに近いような説明は、調書にはなっていかない。私がやったっていうことに近いものだけが、拾って文字になっていく・・・。」
「”執行猶予が付けば大した罪ではないじゃないですか?”と言われたんです。自分がシロだって言ってもクロと言われちゃうことが・・・。」

現在、検察での取り調べは録音録画されていますので少しはマシなのかもしれませんが、こういった内容の取り調べは実際に今日も行われています。

検察庁での取り調べの詳細については、以前の投稿にも記しておりますので、そちらをご覧いただけたら嬉しいです。
* ちなみに警察の取り調べの方がひどいです・・・。

残念ながら、検察はこの事件から10年以上経過しても、結局のところ何ら体質は変わっていないように思えます。現に大阪地検は昨年も同様の特捜事件で大阪地裁から無罪判決を出されています。
私のような一般の刑事事件も、似たような捜査と取り調べが行われていました。(同じ大阪地検です)

2011年6月~2014年7月、法制審議会・新時代の刑事司法制度特別部会に映画監督の周防正行氏が参加しています。この事件がきっかけとなり、検察の内部制度を改革するという会議です。
日本の刑事司法が、人権を軽視していると問題意識を持ち、村木厚子さんと共に会議に参加されたそうです。

映画「それでもボクはやってない」のメガホンを取った周防監督。
映画の主人公は、痴漢と間違えられて逮捕され、濡れ衣を晴らすことも敵わず、有罪判決を受けます。
実話をもとにしたこの映画は、日本の刑事裁判の在り方を問うものとして話題となりました。

その法制審議会の議事録が残っています。
検察側代表より「改革すべき部分は重要な事件に対して行えばいいと」いう発言に対し、周防監督は
「先程、何か重要な事件からとおっしゃっていましたが、被疑者・被告人になった方にとってはすべてが重要な事件であって、それをなぜか、罪が軽いやつは重要でないというとうな発言をされることも、まず僕にとっては心外なことです。」と発言されました。

議論は平行線をたどるばかりだったようです。

こうして、3年間30回の会議は終わりました。

この会議で良い方向に変化したことがあります。
それは「取り調べの可視化」です。
当初、裁判員裁判対象事件のみだったものが、今では検察庁が扱う全事件の取り調べに対して録音録画がなされております。

しかし、可視化された中でも違法な取り調べは今日も続いています。
まだまだ、声を上げ続けなければならないのです。
そうしなければ、これからも不幸な人が間違いなく増え続けます。

国家権力というのは我々の想像をはるかに超え、強大です。
人の自由なんて一瞬で奪われます。人の人生も1日で変えられてしまいます。
これは経験した人間しかわかりません。

私が綴る毎日のnoteは、そのことを一人でも多くの方に知っていただきたいからでもあります。

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