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特定少年の実名公表基準【情報公開】

少年法の改正で、特定少年(18,19歳)の犯罪が公判請求された場合、実名報道が可能となりました。
検察庁が、特定少年の実名を報道機関に公表し、あとは各社の判断で報道します。

実名報道解禁となった今年4月以降、検察庁が実名を公表したケースと見送ったケースが割れており、運用が模索されています。

先立つ2022年(令和4年)2月8日、最高検察庁は、各検察庁宛てに、特定少年の実名公表の基準を通知していました。
公表基準の全文を取得したので、公開します。
こちらは検事総長に行った情報公開請求で取得したものです。

特定少年の実名公表基準

令和4年2月8日付け最高検察庁総務部長事務連絡「少年法等の一部を改正する法律の施行に伴う事件広報について」という文書になります。

まず、文書の重要部分を抜粋します。
あまり具体的なことは書いてありませんが、裁判員裁判事件の中でも特に重大な事案が、実名公表の対象となりそうです。

 基本的な考え方としては、犯罪が重大で、地域社会に与える影響も深刻であるような事案については、特定少年の健全育成や更生を考慮しても、なお社会の正当な関心に応えるという観点から氏名等を公表することを検討すべきものと考えられます。例えば、裁判員制度対象事件については、一般的・類型的に社会的関心が高いといえることから、公判請求時の事件広報に際して氏名等を公表することを検討すべき事件の典型であると考えられます。
それ以外の事案についても、公表を求める社会の要請が高く、被告人の健全育成・更生に与える影響が比較的小さい場合などには、個別の判断により氏名等を公表することが考えられます。
 なお、附帯決議の趣旨を踏まえますと、公判請求時の事件広報に際して氏名等を公表する場合には、当該被告人が犯行時特定少年であった旨を明示することが相当と思われます。
 以上のような基本的考え方を前提にしつつ、事件の特性も踏まえ、適切な広報対応を行う必要があります。

以下は、開示文書の全文です。

20220208 少年法等の一部を改正する法律の施行に伴う事件広報について(事務連絡)_1

20220208 少年法等の一部を改正する法律の施行に伴う事件広報について(事務連絡)_2

検事総長(最高検察庁)への情報公開請求

あくまで参考ですが、今回の情報公開請求の過程で、最高検察庁とやり取りした書類の一部もアップしておきます。
2022年3月16日に情報公開を請求し、4月8日付けで開示延長決定、5月11日付けで開示決定が出て、手元に開示文書が来たのが5月18日です。

改正少年法の規定と附帯決議

参考までに、令和3年改正後の少年法(令和4年4月1日施行)の関係条文は、以下のとおりです。

少年法 第61条
家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。
少年法 第68条
第六十一条の規定は、特定少年のとき犯した罪により公訴を提起された場合における同条の記事又は写真については、適用しない。ただし、当該罪に係る事件について刑事訴訟法第四百六十一条の請求がされた場合(同法第四百六十三条第一項若しくは第二項又は第四百六十八条第二項の規定により通常の規定に従い審判をすることとなつた場合を除く。)は、この限りでない。

少年法改正にあたっての衆議院附帯決議は、以下のとおりです。
実名がインターネットに半永久的に残ることへの懸念が示されています。
また、被害者や遺族の平穏にも配慮せよという点が注目されます。
この改正では、強盗罪も、原則検察官送致となったのですが、結果がそれほど重くない事件も多いので、その点への言及もなされています。

政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
一 新たに原則逆送の対象となる罪の事件、とりわけ強盗罪については、様々な犯情のものがあることを踏まえ、家庭裁判所が検察官に送致するかどうかを決定するに当たり、適正な事実認定に基づき、犯情の軽重を十分に考慮する運用が行われるよう本法の趣旨の周知に努めること。
二 十八歳及び十九歳の者の健全育成及び非行防止のためには、早期の段階における働き掛けが有効であることに鑑み、少年非行対策及び福祉支援策における関係府省庁の連携・協議の枠組みを強化するとともに、関係諸機関、団体等と有機的に連携しつつ、適切な保護、支援を行うための施策の一層の推進を図ること。
三 罪を犯した者、とりわけ十八歳及び十九歳などの若年者の社会復帰の促進を図るため、前科による資格制限の在り方について、対象業務の性質や実情等を踏まえつつ、府省庁横断のしかるべき場を設けるなどして、政府全体として速やかに検討を進め、その結果に基づいて、法改正を含め必要な措置を講ずること。
四 特定少年のとき犯した罪についての事件広報に当たっては、インターネットでの掲載により当該情報が半永久的に閲覧可能となることをも踏まえ、いわゆる推知報道の禁止が一部解除されたことが、特定少年の健全育成及び更生の妨げとならないよう十分配慮されなければならないことの周知に努めること。
五 少年事件に関する事件広報に当たっては、被害者及びその家族・遺族の名誉又は生活の平穏が害されることのないよう十分配慮されなければならないことの周知に努めること。

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