アメリカでのトレーニング第17回 「アメリカの盲学校を訪問したときの話その一」


 せっかくアメリカにきているのだから、地元の視覚障害者ともかかわってみたいと思うようになった。別にものすごく英語に自信がついた訳ではないが、まあ、あまりにも通じなければ、謝って逃げ帰ってくればいいだけだ。
 そういう訳で、近所にある盲学校のHPを眺めていると、7月に1週間かけて、視覚障害を持つこどもを対象とした、スポーツのイベントをやるとのお知らせを発見した。
 これだ。行くしかない。スポーツをやるということは、もう、俺のことを呼んでいるとしか思えない。

 早速お問い合わせ、と思われるところにメールを送る。
 「俺様はパラリンピック水泳選手だ。日本からきてボルチモアのLoyola大学で練習している。視覚障害の教育にもすごく関心がある。だから、このイベントに参加させてくれ。」
 非常にぶしつけな内容かもしれないが、どうやって書いたらいいかも分からないし、基本的にだめでもともとなので、こっちは無敵だ。

 数日後に返信があった。
「なんてすばらしいことだ。ぜひきてくれ。こちらからお金を支払うことはできないが、きっといい機会になるだろう」
 創造をはるかに超えるいい返事が返ってきた。ていうか、「お金は払えない」って、俺が営業かけてるとでも思われたのだろうか。

 そういうことで、7月の3週目は、早朝にトレーニングをして、授業をさぼって、盲学校に通うことになった。
 ちなみに予定していたことも、途中で連絡が途絶えてしまったりして、無くなることが少なくないのが海外生活。直前まで心配していたが、担当のマット先生がこまめにメールをくれる人手助かった。

 7月14日日曜日。この日はまだこどもたちはきておらず、大人だけでいろんな公衆をするとのことだった。俺の仕事はまず、自分という人間を、先生たちに覚えてもらうこと。

 このイベントの内容は、視覚障害のこどもたち(およそ40人)が、五日間泊まり込みでいろいろなブラインドスポーツを楽しむというもの。
 スタッフは、盲学校の先生だけでなく、各スポーツの専門家が呼ばれていた。
 初日の公衆では、スタッフがまずはそれぞれの競技をやってみようという時間となった。

 最初はゴールボール。これは日本でもやったことがあるので、説明が理解できなくても大丈夫だ。
一応どんな競技かも紹介しておく。



軽くボールを投げたらあっさり点を取ってしまった。日本の盲学校で育った実力を見せつけてやった。

 次は柔道。専門の先生が「おまえは日本人だから、私より柔道詳しいだろ」といわれたが、実はやったことがない。説明も早口だし、ちょっと泣きそうになってきた。
とりあえず受身の取り方(と思われる)を、アメリカで初めて習った。

 続いて水泳。今日は泳ぐわけではなく、プールの見学をして終わった。水泳の指導者として呼ばれていたのは、オハイオの大学に通うCasy。アメリカのパラリンピック選手や、Loyola大学水泳部員など、共通の知り合いがけっこういたので盛り上がった。

続いてShow Down.
簡単にいうと、ゲーセンにあるエアホッケーを、音のなるボールを使ってやるような感じ。



日本ではサウンドテーブルテニスという競技があるがそれに近い。ただし日本でやってるやつの方が繊細さが求められる。Show Downは、ボールもラケットも大きいので、とりあえずラケットを振り回しとけば何とかなるので、この国の人間に向いているんだと思う。

 続いてブラインドサッカー。これも任しとけ、初心者にしては自信がある。


 最大の難関が、ビープベースボール。名前を聞いたことすらないし、どんなに説明してもらっても分からない。分からない部分を質問したいのに、分からない部分が分からない。さらに、どう質問したらいいかも分からない。泣きそう。「まあやってみろよ」といわれても、何をやったらいいのかわからない。
 Casyがまじで根気良く説明してくれて、ちょっとやってみて、ようやく理解した。
 まず、ピッチャーは存在しない。おいてあるボールを打つか、バッターが自分でトスをあげて打つ。ちなみにピッチャーに投げてもらって打ってもいいが、まずあたらない。
ボールからは常に電子音がなっている。その音を頼りに、守備側は必死に打球を探す。もちろん全員目隠しをした状態で。
 ピッチャーは存在しないが、キャッチャーは存在する。キャッチャーは眼が見える人がやる。
 1類ベースと3類ベースにはスピーカーがおいてある。
 キャッチャーは打球が飛んだ方向を見て、それと反対側のベースのスピーカーから、リモコンを使って音を出す。
 バッターは、音がなった方向に向かって走る。
つまり、ボールをとるために守備側が向かう方向と、バッターが走る方向をずらして衝突を避けている、ということ。
で、最終的に守備がボールをとるよりも早く、バッターがスピーカーにタッチすれば点が入る。守備側が咲きにボールをとればアウトとなる。3アウトでチェンジになるのは同じ。
ランナーがたまることはなく、1点入るか入らないかだけの話。
っていう、日本語で説明されてもいまいちぴんとこないルールを、英語で説明されて分かるわけがない。最終的に理解した俺をほめてくれ。







 初日、というか性格には始まってもいないのだが、すでに神経が磨り減っている。
次回に続きます。


#パラリンピック #水泳 #アメリカ #トレーニング #留学

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