見出し画像

スタートアップのオペレーション設計で役に立った本(など)10選

この記事は、CADDi Advent Calendar 2020 の 11 日目にエントリーしています。

こんにちは、キャディという創業3年目の製造業のスタートアップで働いている斉田です。

2019年4月にキャディに入社して以来、一貫して社内のオペレーションの設計、運用を担当しており、具体的には、ベトナムでBPOのチームの立ち上げをしたり、業務プロセスを設計してオペレーションチームの採用をしたり、最近ではGASで業務効率化ツールを作ったりと、業務改善系の仕事を幅広くしています。

DX時代に高まるオペレーションの重要性

さて、いきなりですが、2020年のビジネス界のキーワードは「DX」だったかと思います(コロナを除けば)。記事を開けば猫も杓子もDXな1年でした。

それに先駆け、スタートアップのテーマもしばらく前から変化しており、インターネット上で完結するサービスは減り、リアルなオペレーションを携えたサービスが増えてきています
キャディもまさに製造業のポテンシャル解放に向けたDXに取り組む会社で、品質管理のための製品仕様の摺合せなど、一足飛びでは解決できない課題に真正面から日々泥臭く向き合っています。

海外のスタートアップではOperations Managerのポジションを設けている企業も多く、オペレーションの専門性を持った人材が業界に溜まっています。
今後は日本でも同様にオペレーションの重要性はますます高まっていくと思います

オペレーションの知識を共有できる人を見つけたい!

ツラツラとオペレーションの重要性について書きましたが、いざ「オペレーション」とググってみると断片的な情報が多く、営業、マーケティング、ファイナンスなどの他の領域と比較して体系的な情報が不足していると感じます。
そのため、入社当初の自分は右も左も分からず関連しそうな情報を漁る苦悩の日々を過ごしていました。

そこで、オペレーションに関連する知識を共有し合える人を見つけたいと思ったのがこのNoteを書こうと決めた動機です。
ビビッときた人はTwitterでもFacebookでもぜひ気軽にご連絡ください!

それでは、本の紹介に移っていきますが、テーマを網羅できている訳ではない点、「本」と言いつつその他媒体も混ざっている点はご容赦ください!

A. 生産性

A-1.『ザ・ゴール』

1冊目は『ザ・ゴール』。全米で250万部を超えて世界中で翻訳されているベストセラーなのでご存じの方も多いかと思います。倒産間近の工場の業務改善プロジェクトを題材にTOC(Theory Of Constraints:「制約理論」)について書かれた本です。「スループット」、「在庫」、「業務費用」の切り口で現状を整理し、ボトルネックを見つけて全体最適化をすることの重要性が繰り返し説かれています。

この本の裏話として、著書が「部分最適に秀でた日本に全体最適の手法を教えたら貿易摩擦が再燃して世界経済が大混乱に陥る」と考え、日本語訳の出版が2001年まで10年以上禁じられていたというエピソードがあります。
出版解禁はありがたい反面、脅威ではないと認識されるようになったと思うと物寂しさがありますね。

小説仕立てなので読みやすいですが、やや冗長なストーリーはいらないという人はTOC理論でググってサマリーを読むのがおすすめです。

A-2. 『ウォートンスクール ゲーミフィケーション集中講義』

2冊目はやや毛色違いですが、ゲーミフィケーションに関する本です。

ビジネススクールで初めてゲーミフィケーションのプログラムを開設したウォートン・スクールが書いているだけあり、業務生産性向上のTipsに繋がる方法論が非常に体系的にまとめられています

私自身BPO先の企業で様々な施策をトライした経験から、ゲーミフィケーションは「実行するための組織」のモチベーション向上には特に有用であると実感しました。

下記の6つのステップを踏むことで、ゲームのように楽しく業務を行い生産性もチームの雰囲気も改善できる可能性があります(括弧内は斉田取り組みの一例)。

1. 目標を設定する(明確なKPIを設定)
2. 対象とする行動を具体的に考える(計測する対象を具体的に設定)
3. プレーヤーを細かく設定する(業務工程ごとに分解)
4. アクティビティサイクルを作る(レベルアップで役割変化)
5. 楽しさを忘れない!(チーム別対抗戦など実施)
6. 適切なツールを活用する(ランキング表の掲示、バッジの配布など)

B. 品質管理

B-1. 『アナタはなぜチェックリストを使わないのか?』

3冊目は、タイトルが全てを語っている1冊。医療、航空、建築など1つもミスが許されない業界のミス防止の施策を横断的に研究した著者がチェックリストの有効性を強く主張している本です。

様々な業界の事例をもとに「人間の認知能力の限界を認めて、恥ずかしがらずにチェックリストに従いましょう!」というメッセージが繰り返し述べられています。
チェックリストを使わずに正しい手順(消毒、機材確認など)で手術に臨めていた外科医が30%しかいなかったというエピソードにぞっとしました。

ちなみに、Twitter社CEOのジャック・ドーシーはチェックリストの熱狂的な支持者でこの本を配り歩いているそうです。

B-2. ヒューマンエラー 理論と対策

4つ目は本ではなくスライドのご紹介。産業技術総合研究所で長年ヒューマンエラーの研究をされている中田 亨さんの全99ページのスライドです。
インサイトのあるスライドが多くすぐ読めるので時間のある人はぜひ一読してほしいです!

個人的に印象的だった1枚が下記の「フローチャートの廃止、表への代替」で、業務可視化で定番のフローチャートが仕事の構造化に適さずミスの原因になっているのは発見でした。

画像1

差し込みになりますが、同じ中田さんが著者のこちらの本もよかったので深堀りたい方はぜひご一読ください(施策事例の紹介はスライドの方が多かったです)。


B-3. ダブルチェックの有効性を再考する

5つ目もスライド。京都大学医学部附属病院の医療安全管理部長の松村 由美さんが、エラー防止の鉄板策といえるダブルチェックを批判的に検証している資料です

画像2

人数が増えると社会的手抜き(リンゲルマン効果)が発生して、ダブルチェックよりトリプルチェックの方がミスが増えることを表しています。

画像3

要はこういうことですね。。。笑

画像4

ダブルチェックを盲目的に信じるのは危険であるということを気づかせてくれる良い資料でした。実際の医療現場のデータを元に丁寧な検証がされているので気になった方はぜひ開いてみてください!

C. 組織設計

C-1. 『組織デザイン』

6つ目は社内の組織設計について考えていた際に、チームリーダーから勧められた本です。

業務種類に応じた組織の分業体制がそれぞれメリデメと合わせて整理されており、各パターンを参照しながら自分の所属する組織を見直して、将来的にあるべき組織像を考える材料にできました。

新しい本ではないですが、組織のあり方が体系的にまとめられていて良い本だなと感じており、定期的に読み返しています。

C-2. 『チームが機能するとはどういうことか ― 「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ』

7つ目は「チーミング」というフレーズを有名にしたベストセラーです。

オペレーションの文脈で語られることは少ないかと思いますが、担当する業務の不確実性の高さ、求められるクリエイティビティの度合いをベースに、それぞれに適した組織文化が整理されており、不確実性の高いテーマにチャレンジしているスタートアップ(キャディ)と定型的な業務を確実に遂行することが求められるBPO先の企業の比較をする上で参考になりました。

D. 業務改革

D-1. 『業務改革の教科書』

8冊目は業務改革に取り組む際には手元に開いておきたい1冊です。

時間軸に沿ってやるべきこと、気をつけるべき落とし穴が細かく列挙されているので、あるあるな失敗パターンを避けるのに役立ちます

自分自身、この四半期に業務効率化の施策を行う際にこの本を読み直して、社内のオペレーションチームにしつこくヒラメ筋営業をかけたり、一部メンバーを仲間化してエバンジェリストにしたりした結果、確実に変化につなげられました!

E. 個社事例

E-1. 『トヨタ生産方式』

9冊目は言うまでもなくですね。英語に翻訳されて海外でも多く読まれている大野さんの『トヨタ生産方式』です。

トヨタ生産方式自体の紹介を始めるとNote1つでは収まらないので諦めます。ぜひ読んでください。

現場に足を運び業務標準書を自分自身で書くことの重要性を強く説いており、トヨタの現場志向性が強く表出しているなと感じました。

トヨタが運営するYoutubeチャンネルのトヨタイムズも業務改善の宝庫なのでおすすめです。特に、医療用のガウン向上の生産性向上に取り組んだ動画は面白かったのでぜひご覧ください!

E-2. 『トヨタのカタ』

最後の10冊目は、外部からトヨタを研究した名著です!

結局トヨタの強みは、カンバンやJITなどの個別要素ではなく、それらの基盤となる思考様式(「カタ」)であることを書いた本です。「人は習慣の生き物」とよく言われますが、企業も同じであることがヒシヒシ感じられる1冊です。

まだ100名程度のキャディでは、今まさに在籍しているメンバーがこの「カタ」とカルチャーを作っていけるかが、偉大な企業になれるかの分水嶺であると思うと背筋がスッと伸びる思いになります。

F. 番外編

F-1. 『身銭を切れ』

オペレーションに関連する本ではないのですが、身に染みる文章があったので番外編として掲載します。シンプルであることの重要さは常に忘れないようにしたいです。

身銭を切らない連中の設計した物事は、どんどん複雑になる傾向がある(そして、最終的に崩壊する)。
そのような立場にある人にとって、シンプルなものを提案するメリットはまったくない。成果ではなくイメージで報酬を受け取る人は、とにかく高度なものを披露しなければならない。学術誌に〝学術〟論文を提出したことがある人なら、必要以上に複雑化すると、受理してもらえる確率が上がることをご存じだろう。さらに、複雑化に伴って非線形的に膨らんでいく問題特有の副作用もある。
もっと悪いことに、身銭を切らない人々は、シンプル性そのものが理解できない。

F-2. "Introduction to Operations Management"

英語コンテンツのため載せるかどうか迷ったのですが、あまりにも良質なコンテンツなので番外編として掲載します!!!最後に持ってきておきながら恐縮ですが、コンテンツの量・質ともにこれが最強です笑!

動画講義全体は6h程度ですが、1つ1つは10~20分程度なので集中して見られます。毎回小テストが付いており学習定着させやすいです。しかも、Coursera未登録の方なら(おそらく)2週間無料で閲覧可能です!(すごい!)

すぐに活用できるTipsはありませんが、生産性や品質管理などオペレーションマネジメントの全体像を頭に描きやすくなります。サブウェイ、マクドナルド、自動車工場などの具体例を用いた説明が多く理解しやすいので、英語が苦でなければぜひおすすめです!

おわりに

ざーっとご紹介させていただきましたが、一口にオペレーションといっても範囲は広いので、自分の知らない良コンテンツもまだまだたくさんあるのだろうなとと思っています。道は長いです。

他におすすめ本がある人、なんとなく話してみたいと思った人など、ぜひ気軽に連絡いただけると嬉しいです!!

キャディのオペレーションに興味のある方はぜひ下記のページもご覧ください~!

最後までお読みいただきありがとうございました!!!
「スキ」を押してもらえると泣いて喜ぶのでぜひお願いします!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?