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自治はつらいよ:理想と痛みについての覚書


先日、「居るのはつらいよ:ケアとセラピーについての覚書」という本を読んだ。



作者は、東畑開人さん。生まれが1983年で一緒なので、勝手に親近感を持ってる。筆者は、臨床心理、心を扱う領域で博士課程を出ている。東畑さんは、セラピーしたい!みんながイメージするクライアントと医者が1対1で話をして、クライアントの支援をしたい。そんな気持ちを強く抱いていた。


と、矢先。現実は東畑さんの斜め上。就職したのは、沖縄の精神科デイケア。ケアってすごく単純にいうと、ただ、そこにいる。沖縄での仕事の大半は、そこにいるっていうことが仕事。(ホントは作用があるけど、そこら辺は読んでね〜。)セラピーに期待を抱いたけど、目の前にふってきたのはケアだった。



東畑さんが目の当たりにしたことって現実社会でよく起きる。自分が思う期待や理想。だけど現実があって、その差に失望したり、葛藤を産んだり。



これまで地方自治の歴史をふりかえってみると、そりゃ自治すりゃいいじゃん、自分たちで自分たちのことをしていこう、OSを移行したほうがいい!っていうことはわかる。けど、現実もちゃんと忘れちゃいけないよね。犬を飼ったら、ウンチもついてくるんだぞ。


モロッコで見つけた自治の理想と現実


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2018年、大学院を卒業後にスウェーデンからモロッコまで旅をした。目的はなんとなくて、時間があると合理的な理由がどんどんなくなる、ということに気づいた。


アジアにいくとかっていうと、「え、治安大丈夫なの?」っておじさん、おばさんに言われたことある。けれど昨今、名前を知ってるような国はどこもかしこも発展してるってばよ。日本から外に出ていない人のイメージって1980年くらいからイメージが止まってるかもしれません。 



もちろん、モロッコだってものすごい活気。裏原?っていってもわからないくらい。


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モロッコのシャウエンで出会ったお兄さんは、日本人の女性と結婚していて、モロッコと日本をいったりきたりしてるらしい。なので、日本と日本人の性質に詳しい。彼曰く「日本の発展はすごい。日本人が全員ずっとこれから寝たとして、モロッコが追いつくのに800年はかかると思う」といっていた。



モロッコ人に勤勉なイメージが想像しにくい発言。それに都市化していくと自治っていう概念も発展とともに薄くなるような気がする。



そんな中で見つけた自治のタネは、都市部ではなくてやっぱり田舎。


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突然ですけど、この畑、どこにあると思いますか。





正解は、サハラ砂漠のホトリ(驚)


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サハラ砂漠ってどこまでいっても砂漠でって感じだけど、小さなまちがある。名前はメルズーガ。町のはずれに畑とサハラ砂漠が隣接してる。 砂漠地帯で畑できるんかいって思うけど。


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もっさもさ!


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この畑では、人参ちゃんと育ってる。



治水と畑をまさに住民の自治で作ったんだって。お金は畑を作りたい人で出し合って、砂漠からの濾過された水を治水して。。。


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奥の砂漠から少しずつ濾過水を運ぶ用水路を作って



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砂漠から畑の横まで用水路が続いていて



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もう飲める。


この用水路が畑直結になる。

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まさに住民の能動で動いてる。。。自治だよ、自治やりたい、必要な人たちが協力しあって用水路を作ってる。畑を作ってる。



とここまで書いて、美辞麗句を並べたいわけじゃない。



現実、畑で水を使うのってお金を出し合った人たちでローテーションなんだって。水はずっと出てる。主流から支流には、土を使ってブロック。その間、主流に水が流れなくなるので、支流を使いたい区画ごとにローテーションする。その時間が朝だったり、むしろ夜遅くだったりして、畑をする時間がすごく限られてる。


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こうやって水をせきとめて、自分たちの畑に水を持ってく。



自分が住民だったら、「楽したい」って思っちゃう。
けど、夜や早朝にやらなきゃいけないときもある。
自治って、自ら治める、自ら動いていくって楽じゃないなっていうことをあらためて感じる。


自治ってのは「不断の努力」だ。



受動的なのって簡単だよね。誰かが決めてくれたり、指示を出してくれたり。自分もそれで回るならそうしたい側面もたくさんある。昨今の時代、自治だ、なんだって気持ちよく声高に叫ぶ人もいる。もちろん、自分たちで動くって理想。けど、本当は自分たちでやらないといけないっていうことは、ある意味で「痛み」みたいなのも引き受けないといけなかったりするんだ。その痛みも引き受けるっていうことも忘れちゃいけない視点じゃないかなって思う。






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