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現場で使えるエネルギー代謝② ATP-CP系
第1回
現場で使えるエネルギー代謝① ATP 人の体を動かすエネルギー運搬体
第2回
現場で使えるエネルギー代謝② ATP-CP系
![画像14](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/62210357/picture_pc_9bef51944ec013ee3302d4426c03cdf0.png?width=800)
■短時間の高強度運動とATP-CP系
スポーツでは急に多くのエネルギーを必要とする場面が多々あります。
例えば陸上の100m走は10秒前後で完結するスポーツです。
体内に貯蔵されているATPはわずかであるため、すぐにATPを作らなければ100mを走りきる前に動けなくなってしまいます。
またサッカーやバスケットボール、ラグビーなどの間欠性運動を繰り返すスポーツでは、その試合時間は数十分と長いですが、その試合中にはスプリントやジャンプ、タックルなどの高強度運動が繰り返され、その都度素早く大量のATPを産生する必要があります。
このような高強度運動時には3つのエネルギー供給機構のうち最も素早くATPを産生できるATP-CP系を主として利用しATPを産生します。
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![画像9](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39902942/picture_pc_1b2e3fd88965d99a8bce9636a686b3e3.png?width=800)
■ATP-CP系は最もシンプルで素早くATPを産生する
ATP- CP系は3つのエネルギー代謝機構の中で最もシンプルかつ素早くATPを産生できる経路です。
ATP-CP系では、ATPを分解した際に生じるADPと、体内に貯蔵されているクレアチンリン酸(CP)を利用します。クレアチンリン酸は体内に貯蔵されておりそのほとんどが筋内にあります。
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39881579/picture_pc_f3841000f9f50ed7fc214c04373b5920.png?width=800)
この経路でATPを産生するとき重要になるのはADP、クレアチンリン酸、そして触媒となる酵素のクレアチンキナーゼ(CK)です。
以下に解説するATP-CP系の過程は
①クレアチンリン酸の分解
②ADPとリン酸の結合
③クレアチンリン酸の再合成
の3つに分けて考えると整理しやすいと思います。
![画像13](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/41551956/picture_pc_b46dbddcd30dd603491490d31f86b59b.png?width=800)
①クレアチンリン酸の分解
まずクレアチンリン酸はクレアチンキナーゼ(CK)と呼ばれる酵素によりクレアチンとリン酸に分解されます。さらにそのときエネルギーが生じます。
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39881789/picture_pc_b4516764ad85585bad49718c0b6de186.png?width=800)
②ADPとリン酸の結合 → ATPに
クレアチンリン酸を分解したときに生じるエネルギーは、ADPとリン酸を結合させるときに利用されます。
ADPとリン酸が結合することでATPが再合成されます。
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39882532/picture_pc_85ef57549e29f7d889979968296b120e.png?width=800)
このようにとてもシンプルな経路であるため、より素早くATPが産生できます。
ADPはATPを分解し運動のエネルギーを得る際に生じる分子です。
急な高強度運動時にはATPを分解してエネルギーを作りつつ、クレアチンリン酸とADPを利用して素早くATPを再生産していると考えることができます。
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39885520/picture_pc_d1da5b5d32ce6d83cf31255065058b6a.png?width=800)
ATPの分解によってADPの濃度が高まるとクレアチンキナーゼの働きが促進されATP-CP系の働きが高まることから、ATPの分解とATP-CP系は互いに関わりあって起きていると捉えることができます。
③クレアチンリン酸の再合成
ATP-CP系が短時間しか働くことができない理由のとして、クレアチンリン酸の急激な減少、ATPやクレアチンリン酸の分解に伴うリン酸の増加などが挙げられます。
ATP-CP系によりクレアチンリン酸が減少してしまうため再度ATP-CP系を働かせるためにはその材料となるクレアチンリン酸を再合成する必要があります、
![画像7](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39886411/picture_pc_3d85d41e450e21c8052fa4e4f5ab69d6.png?width=800)
クレアチンリン酸を再合成するために、クレアチンリン酸を分解したときに生じたたクレアチンを利用します。
![画像12](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/41551125/picture_pc_f5025516e4d503f89d44b04580c25806.png?width=800)
クレアチンはATPを分解して生じたリン酸と結合することでクレアチンリン酸となります。
ATPを産生するためにクレアチンリン酸を分解したのに、クレアチンリン酸を再合成するためにATPを分解するというのは奇妙な話ですね。しかし以下の引用文にあるようにクレアチンリン酸は高強度運動中ではなく、その運動後に再合成されるようです。
"CPの再合成にはATPが必要であり、運動からの回復期においてのみ生じる。"
パワーズ運動生理学 P.54
再合成が運動の回復期に生じることからクレアチンリン酸の再合成時に利用されるATPは、有酸素性のエネルギー代謝によって産生されるといえます。
![画像8](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39896158/picture_pc_078ca7f003ebd4ab38cde78f8a709f25.png?width=800)
サッカーやラグビー、バスケなどの間欠性のスポーツでは、高強度運動とその後の回復(歩きやジョグなどの低強度運動)を繰り返し、低強度運動中は次の高強度運動に備えてクレアチンリン酸を再合成しているとも捉えることができます。
![画像11](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/40143376/picture_pc_60269cec9b95e047cee59298d342e3f7.png?width=800)
このようにATP-CP系と酸化系が関わり合うことで、一度クレアチンリン酸が減ってしまっても再度ATP-CP系を利用することができます。
回復までの時間に関しては「スポーツ生理学から見たスポーツトレーニング」より
"回復相の初期では,急激なPC量の回復が見られる(PCが枯渇する時間である20~30秒の約半分の時間)。その後、ゆっくりと回復し、完全に回復するには最大20分程度かかる(Harrisetal. 1976)。しかしながら、ほとんどのPCは運動後3分ほどで再合成されると言われている。"
スポーツ生理学から見たスポーツトレーニング P.34~35.
とされており、比較的短い時間でほとんどのクレアチンリン酸は回復するようです。
以上の過程によってATP-CP系によるATP産生は行われています。
■クレアチンとクレアチンリン酸
サプリメント(エルゴジェニックエイド)の一つであるクレアチンはATP-CP系の働きを高めることが期待できます。
クレアチンは実は肉や魚にも含まれている栄養素で通常の食事からも摂取できます。また肝臓などの臓器でも生成されます。そして体内のクレアチンの2/3はクレアチンリン酸として貯蔵されています。
サプリメントとしてクレアチンを摂取することで体内のクレアチン、クレアチンリン酸の濃度を高め、ATP-CP系によるより多くのATP産生が期待できます。
(※「食事からクレアチンを摂取できるなら、サプリメントで取る必要なんかないじゃないか!」という声もありそうですが、体内のクレアチン濃度を効果が期待できるレベルまで高めるのを食事だけで行うには相当の量を食べなければなりません。その方が大変です。)
クレアチンは直接的にパフォーマンスを高めるというよりは、より高強度のトレーニングの質を向上させることができる結果としてパフォーマンスが高まる、と考えられています。
クレアチンはパフォー マンスに直接的に影響するというよりはトレーニング時に摂取するサプリメントとして効果があると思われる。クレアチンは無酸素競技系アスリートがトレーニングの質を向上させるために使用するのに適しており、結果としてパフォーマンス向上に結びつくが短期間にパフオーマンスを改善することはないと思われる。
スポーツ生理学から見たスポーツトレーニング p.214
つまりクレアチンの摂取によって足が速くなったり、ジャンプ力が高くなったりというよりは、クレアチンリン酸の濃度が高まることで、例えばあと1回スクワットが多くできたり、スプリントトレーニング時に最大出力を出せる時間や量が増えたりとトレーニングの質を向上させることができ、その結果スプリントやジャンプ能力の強化に繋がるということです。
![画像10](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39903723/picture_pc_43513bc4aff07261d9865dbdc9d01eac.png?width=800)
同じことは持久力の向上にも言え、反復した高強度スプリントトレーニングなど高強度持久力トレーニングの質を高めることができる結果、持久力の向上に繋がることが期待できます。
これはATP-CP系の経路とクレアチンの役割を知ることで整理されると思います。
★現場でのポイント★
ATP-CP系でのATP産生は短時間・高強度のスポーツ(100m走、ウェイトリフティングなど)はもちろん、間欠性の球技スポーツ(サッカー、ラグビーなど)でも重要です。
トレーニングでATP-CP系によるATP産生能力を高めることでスプリントやジャンプなどの1回の出力を高めることや、連続して高強度運動を実行する能力を向上させることが期待できます。
ATP-CP系は7〜8秒程度でその働きが大きく低下するとされているため、トレーニングによってスピードやパワーを向上させたい場合にはそれよりも短い時間で実施するのが良いでしょう。
そうでなければ産生されるATPが低下し、最大出力での運動が難しくなり、目的とする能力の向上ができなくなる可能性があるからです。
また休息時間を長く設定することも重要で、クレアチンリン酸が大きく低下した場合、回復するまでに数分かかることから最大出力でのトレーニングを行いたい場合にはしっかりと休息時間を設定することが大切になります。
しかしクレアチンリン酸の再合成能力を高める(素早くクレアチンリン酸を再合成する能力)場合には、有酸素性のエネルギー代謝の貢献が重要になるので、短い回復時間で高強度運動を反復するようなトレーニングが効果的と考えられます。
①休息を長くとった最大出力を高めるトレーニング
②短い回復時間の中で連続して高強度運動を実行するトレーニング
どちらもATP-CP系によるATP産生が重要な役割を担うため、どちらを目的にするかによってトレーニング方法を分けて行えるといいと思います。
■参考・引用
ライター
Keisuke Matsumoto
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39745889/picture_pc_1675af2c5629ce81bd12afbe4ba5209b.jpg)
今回の一言
クレアチンは自分でも使ってみて効果を感じたサプリメントです。
ATP-CP系の仕組みを後から知って「なるほど〜」と思いました。
皆さんもぜひ!
ここから先は
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