【連続不定期更新小説】どうして僕らは分けてしまうのだろう -ありきたりなことばかりで嫌気がさすよ-
数あるコンテンツのなかから、本作を手にとって頂きまして、ありがとうございます!
本作は、今の世界と少し似ている、何年か先の未来を舞台にした小説です!
一応6話目ですが、単体で読んで頂いても大丈夫な内容にしています。
5話目は以下から読めます。読んで頂けたら嬉しいです!
-あらすじ-
数年前、感染力の強い病が世界中に流行した。その後、感染が収束した後にもオンラインツールを積極的に活用する人々と、病が流行する以前のようにオフライン重視の生活に戻る人々に分かれるようになった。
この時代の人々はどのように働き、生きているのだろうか?
場面は研修会場。若手社員がグループワークを行っているようだ。
大手企業に勤務する、いかにもオフ派という営業がリーダーとなって討論が始まった。確か自己紹介で、彼は顧客である大企業のもとをよく訪れていると言っていた。
「オフラインにおけるコミュニケーションで重要なことは?」というお題に対して、ありきたりな進行でグループワークが進む。
主にオフ派が意見を述べて、オン派はそれに同調するか、特に何も言わないかのどちらかの対応が多い。
途中で俺は意見を言ったが、その意見は特に取り入れられることない。
俺があまり的を得たことを言わなかったか、オン派の語る意見はそんなに重要じゃないと思われたか、もしくはどちらもだろう。
制限時間ギリギリにどこかで見たことのある結論に達する。
そこには特に新しい発見も何もない。ありふれた内容がフォーマットに則っているだけだ。
リーダー役のオフ派の彼だって、そんなことくらいわかっているだろう。
発表役を引き受けたオフ派の誰かが、何冊ものビジネス書に書き古されたようなことを発表して、それでグループワークは終わった。
講評では、グループワークにおいて意見が対立した際は、どちらかの意見かに決めるのではなく、様々な意見をもとにブラッシュアップした案へと昇華することが重要ということを耳にした気がする。
その後に行われた懇親会で俺は適当に時間をつぶし、終了時間になると足早に会場を去った。
電車の空席に腰かける。
オンラインでの対話が習慣になっているためか、研修とはいえリアル場面での会話は疲れるものだ。
目を閉じて今日の研修を思い返す。
講師のありきたりな言葉
グループワークのありきたりな結論
そこにほとんど貢献していない、ありきたりな自分の無力さ
ありきたりなオン派・オフ派の区分け
ありきたりなことばかりだ。
ありきたりの今のままでいいのだろうか。
ありきたりがいやなら、俺はどうしたいのか。
たぶん俺は、人々をオン派とオフ派のどちらかに分けることに疑問を感じているのだ。もっといえば、人々を分けて決めつけられることに、嫌気がさしている。
それなのに、俺自身はオン派に属しており、オン派・オフ派という枠組みの中に組み込まれている。自分も、分けられて決められているものの一つのなのだ。
そして、もっと嫌いなことがある。それは、分けられることが嫌いなのに、自分からその枠組みを出ようと動いていないことだ。俺は行動しない自分が嫌いなのだ。
(つづく)
※数あるコンテンツのなかから、本作を読了頂き、ありがとうございます!1話目はこちらです!
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