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【詩集】華と昆虫

花と虫の詩(再掲五篇+新作一篇)


酷暑

暑さの中 シジミチョウが 庭で 舞っている
シジミチョウが こんなふうに 踊り狂うように 動き回るとは 今まで 気付かなかった
乱舞する か細い いのちが すり減りそうで 締めつけられる 非日常の 暑さが 日常に 変わりゆき 見えなかった ものたちが 現れる 白日の 夢のなか シジミチョウは いつか見た バリ島の 絵画の 幼い 踊り子になり 空耳の ガムランの音に 酔いそうな 午後
暑さに 意識が 遠のきそうだ

ハイビスカス

小さい頃 家にあった マホービンの絵柄で ハイビスカスの花を知って 実物を見ないうちに 最も好きな花の 一つになった

それから 何年も経って ハイビスカスの 鉢植えを育てて 花が咲いたから  絵に描いても どうしても 思い通りに 描けない

一度 魔法瓶を 抜け出したら もう 平面に戻れない ハイビスカスは後生花ごしょうばな 異次元と 二次元と 三次元で 絵になる花だ

冬のアサガオ

もう12月なのに 踏切の近くに アサガオが咲いている 夏に見た時より小さな アサガオの色は 子供の頃観察した アサガオに似ている

理科の教材の アサガオを育てていた 小1の頃から 現在に至るまで 他の人には できて当たり前の 多くのことが 私にはできない それでも
歳を重ねてから 私なりに 小さな花を 一つ 咲かせたつもりだ

冬のアサガオ 少し 虚勢を張っているような 面持ちで 線路わきに
咲いている

2023 1202


ナガミヒナゲシ

近所の空き家が 取り壊されて 土地が 更地になって それから どれくらい経っただろう 気がつくと その地を 丈高いナガミヒナゲシが 占拠して さながら 花畑のようだ

ナガミヒナゲシは コンクリートの間からも伸びて 土筆くらいの背丈でも
 小さな小さな花を咲かせる それを健気けなげとか 愛らしいと思ったら もう ナガミヒナゲシに 魅入られたあかし

ナガミヒナゲシは 茎に毒を持ち 凄まじいほどの 繫殖力がある
魅入られてはいけないのに 魔の花に うめつくされた その空き地の前に 立ち止まる私がいる

いのち 

ある日
皿を洗いながら
窓の外を見ると 
生まれて間もない ちいさなカマキリが
塀の上で 春の雨に打たれて
よちよち歩いている

一寸の半分 にも満たない
赤ちゃんカマキリは
全身が魂だから
小さな後ろ姿が
雨の中で光っている

ノミバッタ

幼い頃は 庭に出る度に ありくらいの大きさの ノミバッタが ぴょんぴょん 跳ねているのが見えた ノミバッタを 捕まえて ガラスの瓶に入れて 光沢のある紺色の ノミバッタが 跳ねる姿を 見るのが好きだった

そのうちに ノミバッタの 名前が嫌だなと 思うようになって 少しずつ 都合の悪いものを 見ないふりを することを覚えて いつのまにか 庭で跳ねている ノミバッタの姿が 私には 見えなくなった

(ヘッダーの画像はCanvaさんからお借りしました)

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