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【旅行記】私と旅⑥「私とフランス~パリⅠ」

中央集権国家フランス

 華の都パリ。なんとなくおしゃれで美的な街を想像して訪れると、おそらく面食らうことになるだろう。

 シャルル・ド・ゴール空港から市内へ向かう途中では、決して豊かとは言えない人々の暮らしが垣間見える。パリは中心から外れるほど、北に向かうほど、貧しく疎外された空間になる。オペラ座界隈まで来てようやくイメージ通りの「パリ」に近づいてくる。

 また、フランスは中央集権国家でもある。パリには人も物も集まる。活気に溢れる。一方で、地方は都会の喧騒から逃れたと言えば聞こえは良いが、はっきり言って田舎臭い。良く言えば伝統的、悪く言えば遅れている。パリから地方都市へ移動すると、身をもってそのことが体感できるだろう。

サント・シャペル。コンシェルジュリー(かつての牢獄)に隣接。


ストライキとコンサート

 2019年12月、私はソヒエフやサロネンを聴くためにパリへ来ていた。パリは大規模なストライキの最中であり、電車やバスが止まり、道路は渋滞していた。オペラやバレエの公演も軒並み中止となっている。
 会場のフィルハーモニーは中心からやや離れた場所にあり、最寄り駅を通るメトロも全面運休である。私は小一時間かけて会場まで歩いた。
 さぞかし閑散としているであろうと思いきや、いつも通りの入り。会場内に入ると非常時における異常な緊張感というわけでもなく、むしろ至って平穏で和やかである。

フィラルモニ・ド・パリ(パリ・フィルハーモニーホール)の外観

何事にも動じない市民

 テロが起きたときもそうであるが、基本的にパリ市民は動じないのである。
 そういう事態に慣れているというのもあるが、「たしかに不便かもしれないけど、みんなの生活のためでしょ?不満があるのに黙って従う方が良くないし、これくらいどうってことないよ」という雰囲気がある。
 ちょっと電車が遅延したり車が渋滞したくらいで大騒ぎする人々とは、根本的に発想が違うのだ。

フランス国民は不真面目か?

 フランス国民は不真面目という風評がまことしやかに囁かれているが、私に言わせれば日本人の方がよほど不真面目である。なぜなら、そこで働く人の楽しみや生活、さらには生命を脅かしてまでも、企業の体面や顧客から文句が出ないことを優先して憚らないからだ。

 フランスでは基本的人権が尊重される。少なくとも、それを盾に対抗することはできる。日本はそうではない。発展途上国や近代以前ならいざ知らず、現代の先進国である。さすがに文化の違いで片付けてはいけないと思うのだが、どうだろう。


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