海外就職においてコミュニティが大事な理由
海外で生活するとなると、その成功には情報が必要になる。
優秀な方が海外に渡航しようと、現地でのResume(履歴書)の書き方、面接の質疑応答やコミュニケーションや企業で働く人々とのコネクション等の情報的アセットを孤軍奮闘で集めるのは至難の業である。
上記した例は就職に関したものに偏っているが、その他にも住宅事情や金融等現地に居る人々にしか中々掴めない情報は中々多い。そんな情報やコネクションを効率よく集められるのがコミュニティである。
Case Study - ワーホリで渡航されたぱんさん
今回インタビューさせて頂いたぱんさんはカナダの首都オタワ在住、カナダの医療系スタートアップ、Fullscriptで働くバックエンドエンジニアである。
彼女は日本からFullscriptでの内定を獲得後、ワーキングホリデーを使用してカナダへ渡航し現在に至る。以前カナダを目指すエンジニアが取るべきアプローチで触れた通り、日本から現地の仕事を見つけるのは決して簡単では無い。
そんな状況にも関わらず仕事を見つけられた彼女にとって大きかった要因は、海外で活躍される、または海外就職を目指す女性、ノンバイナリーのエンジニア&デザイナーの方々で結成されたコミュニティだったという。
ぱんさんが見つけたコミュニティー
彼女が見つけたコミュニティーはPortという名前で、海外で働きたいまたは働いているTech業界の女性とノンバイナリーを支援するコミュニティーである 。Portの説明や参加条件を記載したレポジトリーには下記のように記されている。
話をぱんさんに戻すが、日本に滞在している間にPortを見つけ、参加された彼女が目にしたのは先人達によって積み上げられた膨大な就活のアドバイス等の情報だったという。
海外でどうやって就活、生活をしていくかのイロハは全てそのコミュニティ上で学んだそうで、それらで得た情報を基に活動することで日本からカナダ企業からの内定を獲得するに至ったとのこと。
海外を目指す上で一番重要である情報。それを得られたのは幸運だとぱんさんは語る。そして彼女も同様に過去の自分のような人々をサポートしたいと思うようになったそうだ。
海外就職を目指す上で大事な二つのこと
日本からの就活を振り返って、ぱんさんは二つ大事な事があったと振り返る。一つは英語。特に自然と英語を使わざるを得ない状況では無い日本で語学力を伸ばすには、自身で時間や方法をマネジメントしていく他ない。彼女の場合はオンライン英会話でレッスンを受けつつランゲージエクスチェンジのプラットフォームを使う事で、ネイティブと非ネイティブ両方の方々と英語で話す機会を設けていたそう。
二つ目はネットワーキングである。Remote jobの紹介、採用サービスGoRemotelyの記事によると、アメリカ全土では30%から50%の採用がReferral(紹介)によるものであると出ている。もちろんカナダも似たような状況で、海外での就活=ネットワーキングと言っても過言ではない。
ぱんさんはPortで出会ったご友人のReferralを通してもらう事で面接までこぎつけたとの事で、Webサイト上で応募するCold applyは返事が来る事がとても少なかったそうだ。ここでもコミュニティはとても大きくプラスに働いている。
ぱんさんが感じた日本との違い
日本でも数年エンジニアとしての経験があるぱんさんが開発体験として大きな違いを感じた部分は、兼業の少なさにあるという。日本ではBE(バックエンド)の方が少しFE(フロントエンド)を触ったり、その逆もあったりといったシチュエーションがあったのだが、カナダでのお仕事ではそういった事はほとんど無く、BEの方がFEを触る事は稀である。彼女曰く、日本の方が自分のJob titleの範囲から出そうな事も手広くやっている印象で、今働いている会社はそのタイトルごとの境界線が日本に比べはっきりしているらしい。余談だが、Fullstackというポジションはこの二つを触ることを専門にしている。
加えてやはりワークライフバランスはかなり向上したそうだ。謎休憩時間で1h伸びる事がない9 - 17な労働時間や、金曜日には早めに仕事を切り上げる事がほとんどなので、仕事以上に自分の為に時間を使えることに一番感謝をしているそう。
また、ぱんさんはまだカナダで1社しか経験していないので全体に当てはまるかはわからないと仰られていたが、カナダで数社働いてきた筆者の観測範囲では、上記のどちらも当てはまる様に思える。
ぱんさんが伝えたい事
上記に加えぱんさんが声を大にして伝えたい事があるそう。それは、大卒や理系卒のエンジニアしか海外に行く事が出来ないなんて事はないという事である。確かに2023年末現在、締め付けがきついアメリカでのビザ取得は大卒でなければスタートラインにすら立てない事がほとんどだが、カナダでは意外とはそうではない。もちろん理系、情報系卒や大卒の方々はビザ取得の際に優遇されたりするので、これらの選択をした方々が損をするのかといえばそうではない。しかし、上記学歴が無くとも海外でエンジニアとしてやっていく事は十分可能なのだ。
ぱんさん自身大学は出ていなし、筆者である自分も高卒ではあるがしっかりキャリアを形成する事が出来たのだ。才能ある方が学歴を理由にチャレンジすらせず海外渡航を断念するのは胸が傷む。
コミュニティの素晴らしさとぱんさんのこれから
ぱんさんはこれからもコミュニティに貢献していきたいそうだ。やはり海外でエンジニアやデザイナーとして情報を発信される方々にはまだまだ女性やマイノリティーの方が少なく、Port等での活動を通して同じ属性の人々が情報を受け取る事で、海外挑戦する為の心理障壁を下げていきたいとの事。
ぱんさん自身、Portでの情報に触れるまでは海外就職は他人事の様に感じていたらしい。無事海外就職を果たした今、ご自身の様な属性の方への気づきになれれば良いと彼女は語る。
上述したPortは海外就職した方々の善意によって成り立っているコミュニティなのだが、Portの方々が公開されている情報は多岐に渡る。こういったコミュニティが存在している事は全エンジニアにとって喜ばしい事である。
筆者も属性は違えど、海外へ進出したいエンジニアの方々はできる限りの手助けはしていく所存であるし、就活サポートや模擬面接、Resumeの添削も行なっている。
過去に自分が手助けした方々がまた新しく渡航された方々をサポートする良いサイクルが少しづつではあるが広まりつつある。Portの行動理念は自分にも通づる部分も多く、これからのコミュニティの発展と更なるエンジニア達の活躍に大きな期待を寄せていきたい。
まとめ
日本から海外就職を成功させたぱんさんの成功には、コミュニティという大きな要因があった。やはり国外という文化や常識が根本から違う土地で就職するには、先人達の情報は必要不可欠である。
そんな先人達と繋がる事が出来るのがコミュニティであり、情報、ネットワーク等所属するメリットは計り知れない。しかし、もちろん属して得るだけではそのコミュニティ自体が続かないうえ、質も良くならない。なので参加する側にも、一旦貰うフェーズを終えた後に与えるという一定のモラルが必要なのだ。貰う側と与える側のメリットを軽くまとめると下記のようになる。
現地で必要な情報が正確に入手できる
ネットワーキングが出来る
場合によってはボランティアで模擬面接やResumeの添削等を手伝って貰える
上記3つ抜きで海外就職を成功させるのは至難の業であるのは想像に難くない。もちろん現地にも現地のコミュニティがあるが、渡航直後等は特に自分が帰属しやすいコミュニティに属す事を勧めたい。
コミュニティで受けた助けは出来るだけ返すor他の人を助ける事が大事。OSSと同じで、Contributor抜きでコミュニティは成り立たない。
所属するコミュニティが一つではなければいけないというルールはない。ご自身が必要と感じられた場所で、コミュニティの一員として持ちつ持たれつの関係を保っていく事でもっと多くのエンジニアの方々が海外挑戦への心理障壁を下げる事ができる様になるはずである。
ぱんさんはSNS上で繋がる事が出来るので、Portの事で質問をされたい方や、海外で活躍する女性の方々と繋がりたい方はぜひ彼女をフォローしてみてほしい。
ぱんさんのSNS一覧
ぱんさんのLinkedIn: https://www.linkedin.com/in/mariko-k
ぱんさんのX (Twitter): https://twitter.com/nappan23
ぱんさんのlinktr: https://linktr.ee/nappan23
Portの情報
Port参加の為の説明ページ: https://github.com/ykmsd/jp-women-nonbinary-in-tech
Portによるエンジニア向け海外就職ガイド: https://port-jp.notion.site/by-Port-b77968d52eec49cab781f4c06c73cb13
今回のインタビューの様子
実際のインタビューは動画にしてあるので、興味のある方は是非こちらもチェックしていただきたい: https://www.youtube.com/watch?v=IeW3vunD6E4
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