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カナダを目指すエンジニアが取るべきアプローチ

北米でソフトウェアエンジニア(以下エンジニア)として移住を目指すなら、ビザの取得難易度や労働環境、アメリカの真上という地理的優位性を考慮すればカナダは必ず一度通っておいた方が良いと言える。

前回紹介した今井氏のように、アメリカを目指すのはカナダに根を張ってからにしてレイオフ=帰国確定の状況を避けるのが北米を目指すエンジニア達の国際的なトレンドだ

今回はそんなカナダへエンジニアとして移住する際のパターンを紹介したいと思う。自分はカナダでエンジニアをしているうちに、とある友人が出来た。彼は日本在住の、カナダに来たいエンジニアの渡航をプランニングからビザ取得まで手助けするサービスを運営している。

もちろんこれから紹介するパターンはカナダ以外の国にも当てはまる事が多々あるので、海外就職に興味がある方はこの記事を読む事で、海外就職を目指す際に必要な物事のアイデアを掴んでいただけると幸いである。

ワーキングホリデーで渡航

やはり海外で中長期滞在を考える方々が最初に落ち着く結論がワーキングホリデー制度である。詳しい部分を端折って解説すると、日本と協定を結んだ特定の国に、18歳から30歳の日本国民に1 - 2年(カナダでは1年)の滞在許可が下り、その間に就学、旅行、就労と生活することが許される制度。

エンジニアのパターンとしては、ワーキングホリデーを使ってカナダに渡航、その1年の間に仕事を見つけて就職、後会社にビザをサポートして貰った末に永住権取得を目指す。職探しに1年費やせると考えると聞こえがいいかもしれないが、もちろんそんなに簡単ではない。

ワーキングホリデー中の就活の実態

移民大国のカナダとはいえ、大抵の会社はビザのサポートを必要としない人材を第一に探すので、渡航直後でも会社のビザサポート抜きでは1年も滞在できない人材を採用するのは中々難しい。業界未経験の方がこの方法で仕事を見つけるのは宝くじの当たりを期限つきで待ち続けるようなものだろう。

もし運良く就職が決まったとしても、日本で元々就ていたポジションよりも低めに設定される事が多いと聞く。慣れない英語で100%のパフォーマンスを面接中に発揮できないうえ、ビザをサポートしてもらうという事は否応なしに会社側のパワーが強くなるので、これは仕方が無いと言える。

しかし、一度サポートさえもらえる事が出来れば、カナダでの永住権を1 - 2年ほどで取得し他の会社への転職を以て元のポジションに、または更に良いポジションに転職はできる。本当の意味での海外でのキャリアの始まりはここからになるだろう。

友人の肌感では、リロケーションを前提に日本から80件応募したうちに、何らかの返事が5件、それからビザの交渉or最終面接まで1件でも持っていけるのであれば、ワーキングホリデーのみの渡航でも可能性はあるそうだ。

日本でオファーを貰う

実行するかはさておき、まずほとんど全ての方々が最初に思いつく方法がこれだろう。言うまでも無いが、後述する他の方法と比べても難易度は高い。具体的に想定されるのは;

1. 日本からLinkedInIndeed等を使って応募する
2. 前回紹介した今井氏が試みたように、日本の外資系から内部異動する

早速それぞれのパターンを分析していきたい。

日本から就活サイトを使って応募する

恐らくほとんどの方がこのケースになるだろう。リファラル等を使用せずにインターネット上から仕事へ応募する事をCold Applicationというのだが、現地にいてもCold Applicationには大きなディスアドバンテージがつくと言われているものを、遥々よその国から応募する事がどれほどのハンディーキャップかは想像に難く無い。また、タイムゾーンが遠い国外からの人材に対するリロケーション+ビザサポートに前向きな会社の数は限定されるので、厳しい戦いになるのは間違いない。

しかし、他の方法と違って実行コストはゼロに等しいので、挑戦する事へのハードルはとても低いのも事実。ご自身の経歴と英語に自信があれば、ぜひ一度挑戦してみる事をお勧めしたい。北米圏の会社は基本的に不採用の場合返事をしてこない。すなわち所謂御祈りメールを送ってきたりしてこないので、一つ一つ待たずにどんどん応募する事をお勧めする。

日本の外資系から内部移動する

こちらは一転して上記の方法よりも可能性はある。しかし、それでも簡単とはいえず、希望する転勤先や会社の状態等に大きく左右されるので、結局内部異動が実現しないケースもよく聞く。そのような場合今井氏Iwanaga氏のように全く展望がなければ直接カナダ企業の雇用へ進んでしまうのも手ではある。

恐らく方法としては簡単でも、そもそも外資系の企業の受け皿がそこまで大きい訳では無いので、既に外資企業で勤務されている方やこれから就活の学生の方々以外には時間的コストがかかり過ぎるので現実的では無いかもしれない。

現地の学校に入学する

紹介してきた中で、一番コストとリターンの期待値のバランスが取れているのがこの方法だろう。一言に学校とはいっても、その選択肢は多岐に渡る。

1. 大学に入学、編入する
2. 大学院に入学、編入する
3. 私立カレッジに入学する
4. 公立カレッジに入学する

上記の中でも(1)は相当な経済的余裕と時間を要するのは想像に難く無い。行く大学にもよるが、数千万単位の出費は掛かるものとした方が良いだろう。 (2)の大学院に関しても、入学に必要な単位や大学の学部等の問題で入学のハードルが高いらしい。詳細な条件に関しては大学院やコースによって変わるので詳しい言及は避けるが、気になる方はFrog等のプロに相談するといい。

大学/大学院の方々は大変優秀かつすでにビザの問題を解決されている事もあって、自分の友人の世話になるケースがほとんどない為今回は申し訳ないが今回は割愛させていただく。出来れば近いうちにどなたかにCase Studyのインタビューをお願いしたい。因みに時間と予算に余裕があるなら大学入学一択である。

残るは私立or公立のカレッジとなるが、この2つの違いはその名の通り公立が街や州によって設立された学校で、私立が法人等が資金を出して出来たものである。細かい違いや特徴に関しては後述する。

私立カレッジ

私立のカレッジに行くことの最大のメリットはその費用の安さである。さすがに公立の半分とまではいかないが、公立の2/3ほど、コースや学校によっては2023年現在120万円を切るものまである。そのうえ必要な英語力が公立に比べ少なく、通いやすいのも特徴。

しかしメリットばかりでも無いのは当然のことである。公立のカレッジとは違い卒業後3年間の滞在を許される等のカナダ政府のビザ的優遇が無いので、私立のカレッジはコースの終了は同時にビザの期限切れを意味する。

一番典型的な私立のカレッジの永住権までのケースとしては、co-opと呼ばれるコースに関連した職業の就労を許されるコースを受け、座学期間の後に来るそのco-op期間中(大体は1年ほど)に就労する。

その後ワーキングホリデーを使ったり就労先の会社にサポートしてもらうなどしてその企業で働きながら滞在期間を伸ばし、その間にカナダの永住権を取得するのだ。

もちろんco-op期間の仕事は自力で探さなければならないし、仕事が見つからずに日本に帰国するケースもある。なので未経験の方というよりは、経験豊富なエンジニアが比較的安価にカナダでの就労ビザを取得するために私立のカレッジに行くケースが多い。幸い勉強の内容はそれほど苛烈では無いケースがほとんどなので、大体のエンジニアは日本での仕事をパートタイムで続けながらco-op期間が始まるまでを過ごす事が多い。

私立カレッジの典型的なスケジュール感。もちろん就活が長引く事は珍しいことでは無い。

私立カレッジはその特徴から、数が多くカレッジによってスケジュールやカリキュラムは千差万別なので、しっかりプロに聞くか一次情報を参照すること。最初の情報収集の失敗は海外就職の失敗を意味する。

公立カレッジ

公立カレッジの最大のメリットはそのコストパフォーマンスの良さにある。大体の肌感では学校にかかる費用は350万円ほどなのだが、2年ほどのコースを終えた際にカナダ政府から発行されるpost-graduation work permit (PGWP)のビザ優遇がとても強い。カナダ政府の方針の変更によるルール変更が起こる事を念頭に置いて詳しい説明が省くが、2023年末現在、2年以上のコースを終えた卒業生には3年のOpen work permit (どこでも働いて良い権利)が与えられる。もし日本で2 - 3年ほどの経歴がある方が就職すれば、大概のケースはこの3年内に永住権が取得できるのだ。

デメリットとしては、コースがかなり大変で日本企業等で副業をする事が難しい事。なので予算的余裕を持って挑む必要が出てくる。件の友人曰く、仕事が出来ない就学期間1年×150万円程で案内するらしい。

しかしカナダないしは北米の会社の殆どにとっては就職の際に残りどれほどカナダで働けるかは重要なファクターなので、卒業時点に3年残っているというのは途轍もないアドバンテージである。現地のカナダ人や永住者とほぼ同じ条件で仕事を探す事ができるのだ。

公立カレッジの典型的なスケジュール感。卒業は就職と永住権獲得を確約するものではない。

カレッジのケースで必要な準備

  • お金を払えは入学できるかと言えばそうではなく、カレッジに行くにしても必要最低限の準備が要る。資金と英語である。英語に関してはIELTSテストを受ける事を前提に勉強する事をお勧めしたい。ほとんど日本国内でしか効力の無いTOEICとは違い、IELTSのスコアはカナダ以外の世界各国で使える。時点でのおすすめはDuolingoである。友人曰く大概の学校はIELTS Academicのオーバーオールスコアで6.5 、Duolingoであれば110点オーバーが必要とのこと。

    資金は学校によって変わるので具体的な数字を出すのが難しいが、件の友人によると、大体学費+コースの座学期間の年数x生活費等の150万円程度を用意できると理想的であるが、滞在中にリモートで働く等すればここは少し抑えられるかもしれない。プロと相談するべきだろう。下記は計算のアイデアを掴んで頂くための例になる。コースの料金が下記通りになるとは限らない事を留意していただきたい。

  • 私立のカレッジでコースが2年間。座学が1年と就労(co-op)が1年であれば

    • 170万(コース)+150万(1年の生活費)

  • 公立のカレッジでコースが3年間。座学が2年と就労(co-op)が1年であれば

    • 320万+300万(2年の生活費)

もちろんコースによって就労期間と座学期間は変わるので、重ね重ね書く事になるがプロに相談して滞在のプランをしっかり立てる事をお勧めする

まとめ

ここまで大まかに分けて3つのパターンを紹介してきたが、どのパターンが一番良いかは読者の皆様の経歴や学歴、年齢に現職やOSS等の活動歴など様々なファクターでかなり変わってくるので一概にどれがベストかはこの記事の語れる所では無い。

やはり自分は最初のプランニングだけでもプロとするべきと思うし、運良く既に海外就職したご友人等がいらっしゃれば参考にするのも悪く無い。しかしビザの話は絶対に1次情報とプロの話を参照すること。

この記事を読むことで大体のイメージを掴めたならこれ以上に嬉しいことは無い。もしこの記事を読んだあなたがいつかカナダに来たなら、ぜひ一度声をかけてほしい。

最後にこの記事制作にあたって情報をシェアしてくれた友人の会社を軽く紹介してこの記事を締めたいと思う。

彼の会社、Frogは数百人にのぼる日本のエンジニアのカナダでの海外就職をサポートしてきた会社であり、自分がバンクーバーで出会う日本人エンジニアの殆どはこの会社のサポートを介して渡航している。カウンセリングは無料だそうなので、カナダ渡航を考えているのなら一度話をしてみる事をお勧めする。

Frog: https://frogagent.com


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