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講談社新書「オランダ商館長が見た江戸の災害」(フレデリック・クレインス著 解説磯田道史)読みました

江戸時代、長崎の出島に商館を構えていたオランダ東インド会社。その商館長が記したもののうち、日本の災害の記述にスポットをあてたものです。磯田道史の名にひかれて読みました。絶対わかりやすく面白いはずと確信したので。
よかったです!! 満足~。きっと、特別歴史好きでなくても知識欲が満たされます。
「方丈記」のように、日本人が書いた災害の記録は多々あるけれど、“外国人が見て感じた日本の災害” ものは貴重です。これによって客観的に、日本人の気質や今に至る日本社会の仕組みがどのようにつくられてきたのかを理解でき、そうだったのか!と瞠目しました。当時の日本人の言動に臨場感を感じます。
人の気質は風土に強く影響を受ける、自然を人間がコントロールできるものとして捉えているヨーロッパと、そうではないモンスーン型気候のアジア。日本人にとって、自然は稲作に代表されるように大きな恵みを与えてくれる反面、同時に、人間には太刀打ちできない災いももたらすもの、自然の脅威に対しては諦めの気持ちが勝る…と、大学時代に学びました。が、そのことを初めてリアルに実感することができたように思います。
日本人の自然に対する思いが、「この世には逆らえない大きな力ある」という、あらゆることに対する諦念的な考えにも繋がってきたんだろうな、と感じる。
本の内容は、江戸城の天守閣を喪失した「明暦の大火」から始まります。大部分が火事と地震に関すること。どれもこれも、当時の様子が生き生きと感じられて面白い。
オランダ人にとって、 “多くの家や橋が崩れ多くの人が亡くなったのに、日本人は意外と衝撃を受けていない”のが不思議だったよう。またどんな大災害でも、すぐに復興していくことに驚いています。
現在、災害があったとき短期間で臨時のプレハブ家屋が建つのも、この頃から培われてきた様々なノウハウの蓄積が関係しているんだろうなと思わされました。
火事に備えて深川には、住居用材木が集積されたとのこと。ここに材木商人が集まり巨利を得ました。そして、各藩留守居役が、屋敷の再建のために材木商人の接待を料亭で受ける接待文化が生まれます。役人対役人の接待(官官接待)も盛んになる。
建設会社に大きな富が集まり、その利益と関連して、建設会社と政治家や役人との談合や賄賂の問題が発生する…そうした現代の問題は、江戸の災害と深く関わっていた。
今の日本を理解し考えるためにも、オススメの一冊です。

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