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「岬のマヨイガ」観ました、読みました

…って昨年のことなんですが。
最近アニメ「平家物語」に夢中で、音楽もリピートしてたところ…音楽担当の羊文学さんが、映画「岬のマヨイガ」の主題歌も担当していたことを知ったのです。どちらの曲もお話にぴったりで、世界観通じるものがある。素敵。
で、「岬のマヨイガ」。すごくよかったです。まずは映画。ノスタルジックファンタジーと評されているようですね。民話の世界に包まれた、昔懐かしいあったかい空気感。
主要人物は3人です。古民家を持つ老女と、共に暮らし始める17歳、8歳の少女。
マヨイガとは、伝説に出てくる“訪れた人を温かくもてなす家”のこと。3人が共同生活する家自体もマヨイガと言えるし、民話世界の本来のマヨイガを訪れる場面もありました。
河童をはじめとしてたくさんの東北の妖怪が、愛嬌一杯で可愛い。対極をなして、どす黒い不気味な妖怪がいて。悪い妖怪との闘いシーン、疾走感があってよかったな。妖怪が動くシーンがあまりによすぎて、人間だけの場面が物足りなく感じてしまった。
なぜ3人が共同生活を始めたのか…そのきっかけは東日本大震災。
東日本大震災はもちろん大悲劇です。けれど震災前であっても、少女二人を取り巻く環境は過酷なものでした。大災害というのは、こういうことなんだな、とも思わされた。つまり愛する家族を失う悲しみの一方で、そういう家庭のなかった者の思いは表面化されない。“大災害で今までの人生とはおさらばせいせいした”などと、晴れ晴れとする人はいません。苦しさは、同じように深い。
心の痛みは人それぞれでも、大災害はすべての人と事物…土地全体を激しく傷つけていく。心に傷を持つすべての人々を、優しく受け止める大きな力そのものの概念が、“マヨイガ”と感じました。
映画を観た後、早速、原作も読みました。現実に生きる者の繊細な気持ちがリアル…重すぎない表現も好み。原作では17歳の少女は既婚の大人女性で、その背景の過酷さは大人ならではのもの。またおばあさんの生活の背景も感じられて…それは実子との関係の希薄さ。詳しくは書かれていないのがよかった。
誰にもどうしようもないことはあるけど、それを嘆かずに前を向いて歩くこと。日々自分のやれることを積み重ねていけば、どんな状況でも、愛を見つけられる。愛に囲まれて暮らしていける。そしていつの間にか、自分の心が変わっている。
優しい妖怪たちが人の暮らしを見守っている、そんな伝説が信じられるような、心に浸みるお話でした。

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