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足の腫れを1カ月放置したら、10日間入院することになった 完

退院準備と寝ぼけ眼との再会


あまりに突然退院が決まって実感する間もなく、バタバタと退院に向けての準備が始まった。まだ車椅子で移動していたので、自分で歩いてトイレに行ったりロビーに電話をかけに行く。久しぶりに自分の足で歩けることに喜びを感じた。
シャワーも看護師さんの確認がなく、1人で入る。退院後の注意点の確認などあわただしかった。
ちょうど入院の際に立ち会ってくれてた病棟の看護師長とばったり会うと
「よかったですね。あんなに痛い思いしたんですもんね。先生とも年末年始は自宅で過ごさせてあげたいよねって話してたんですよ」と声をかけてくれた。なんとありがたいことか。ここに転院してきて本当に良かったと思った。

夫氏に急いで連絡し、退院の迎えの手配も相談した。弟が冬休みに入るタイミングだったので、車を出してくれることになった。
昔は全く仲の良くない姉弟だったので、こんなに弟が協力してくれるとは思っておらず、家族のありがたさを感じるのだった。

隣のベッドのMさんも急に私の退院が決まって驚きつつも、とても喜んでくれた。「まさか私より早く退院するとは思わなかったねー」と笑っていた。

入院最終日の夜は、1人で寝られる最後の夜だと思って存分に寝た。ちょうど仕事納めの日で、仕事の合間を縫いながら退院準備をしたので疲れもあった。

翌朝、退院は午後なので朝ごはんを食べてシャワーを浴びて身支度を整えた。転院した病院のごはんは前の病院に比べて、おかずの味がしっかりしていてごはんがしっかり食べられた。上げ膳据え膳の生活もここまでかと思うと、名残惜しくもあった。

なぜかこの日に限って担当の看護師さんがちょっと大雑把な感じで、シャワーや点滴の時間などが抜けてたりして焦ったが、それもいい思い出だ。
ベッドの上でゴロゴロしながら、子どもたちはどんな顔をするだろう、私はどんな顔をして会えばいいかな、などと考えた。退院の時間が待ち遠しく、とても長く感じられた。

迎えが到着したのは14時過ぎ。看護師さんに荷物を持ってもらってロビーに降りると、疲れた顔をした夫氏と夫氏に抱えられて眠っている長男がいた。
支払いなどの手続きが必要なため、待合の椅子に長男を降ろすと目が覚めた。
「あれ?お母さん?」と寝ぼけ眼ではにかんだように笑うので、「そうだよー」と私も笑ってしっかりと抱きしめた。

弟が運転する車で家に帰り、そのまま弟家族と夕ご飯を食べて、10日振りの家を満喫した。まだまだいつも通りに動き回ることができず、人の手を借りないと何もできないけれど、それでもやっぱり家が良かった。
どんなに子どもたちがギャーギャー言っても、夫氏が疲れ果ててとげとげしていても、子どもの寝相が悪くて寝ている間に何度も蹴られても、やっぱり家族と一緒が良かった。
1人でいることが大好きだった私は、気づけばこの数年の間に、1人でいられないようになってしまったのかもなんて思ったりもした。
数日後には「やっぱりもう少し入院しておけばよかったかな」なんて思うのだけど。

10日間の入院生活が教えてくれたこと

退院してひと月ほど経過した。
年明けの診察で悪化や再発など診られず、現在は内服薬で経過観察をしている。原因となった細菌はやっと判明したが、どこでどうやって感染し、ここまでひどい状態になったのかは今もわからない。
足の腫れや痛みはもうないが、まだ麻痺が残っていてつま先を伸ばすことはできないし、切開した傷口やその周辺は時折痛む。
それでも随分と回復して、近所に買い物に歩いたり自転車を漕ぐくらいはできるようになった。家の中の立ち仕事も長時間にならなければ問題ない。

今回の入院騒動で、月並みだが健康であることがどれだけ素晴らしいことなのか、当たり前の毎日が当たり前でないことを身に染みて実感した。
また、これほど人の温かさを感じたことも久しかった。
コロナ禍になってから家族以外の人と話すことは激減していたが、主治医や看護師さん、病院の清掃や売店のおばちゃん、同じ病室のMさんなど、久しぶりに色々な方とコミュニケーションを取ることができたおかげで、1人で抱えているより、人と話した方が元気でいられることもわかった。
家族も、夫氏や子どもたちがどれだけがんばってくれていたのか考えるだけで、頭が上がらない。遠くから何度も駆けつけてくれた母や、車を出したり子どもたちを見ていてくれた弟夫婦にも本当に助けられた。

1人で生きているような気になりがちな人間で、子育てを始めて1人では何もできないことを学んでいたはずなのに、それでもまだまだ足りなかった。持ちつ持たれつ。誰かに助けを求めたり、頼ったり、できない時はできないといっていいんだと感じた。

そして、病気を治すのは自分自身の中にあることを実感した。
不安でどうしたらいいかわからない時は何も変わらなかったのに、「私の体は自分自身の細胞が治していくんだ」と腹が決まってからあっという間に事態は好転していった。「病は気から」とはよく言ったものだ。

そんなわけで、思いがけず10日間入院することになった記録は終了。
身近な人やこれを読んでくださった方には、ちょっと体のどこかがおかしいなと思ったら放っておかずすぐに病院に行かれることを、強く強くお勧めしたい。

※記事を書いたのが1月の終わりで、投稿まで1か月もかかってしまいました。先日の通院で無事に治療は終了し、多少の麻痺は残るもののあとは自力で治せるくらいまで回復したことをご報告します。

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