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第3回 FUJIFILM フィルムシミュレーションの個人的存在意義

はじめに

前回前々回を通じて、FUJIFILMから発売されているコンデジ、X100Vについて以下のような主張をしてきました。

X100Vは、いつでもどこでも、どんなときでも高品位な写真が撮れて、自信のない初心者にこそおすすめの最高のカメラだよ~。

で、早速なんですが、まずひとつお断りというか、用語の統一を図らせてください。
上記の「いつでもどこでもどんなときでも高品位な写真が撮れ」る性能という言葉についてです。このままではあまりにも長いです。
ですのでこの特徴・強味の表現を、以下では次のように置き換えます。

any time, any where, any situation → "any X"

本題に戻ります。
X100Vの何が"any X" を支えているのかということについては、フィルムシミュレーションを後回しにして前2回のnoteでお伝えしてきましたが、あらためてここで、これまでに挙げてきた「"any X"に寄与していると思われる要素」を羅列します。

<"any X"を支える要素とは?>
※フィルムシミュレーションは後回しにする前提
・高価であること

・デザインが玄人受けするものであること
・サブカメラとして人気であること
・どんな鞄にも入る大きさであること(同社一眼と同センサーなのに!)
・EVFが綺麗であること
・固定式単焦点レンズであること
・電源オフ時でも露出を設定できること
・防塵防滴


以上が前2回の振り返りになります。
それでは今回はこれまでの締めくくりとして、下記をテーマに個人的意見をお伝えしていきたいと思います。

フィルムシミュレーションはX100Vの”any X” にどう寄与しているのか


1 フィルムシミュレーションとは

フィルムシミュレーションって何ですか、ということについてはこの公式HPが神です。こちらを見てください。
ただそれだとこの記事を書いている僕自身がまったく楽しくないので、自分が撮った写真で比較的なことをしてみたいと思います。
しばしお付き合いください。

2 作例


PROVIA / Std
いい色。どんな被写体でも違和感のない基本の色。
空が青くなりすぎることもなく、これこれ!という目で見た美しさをよく表してくれる印象。
定期的にプロビアに戻ってきては、ああ~よきよき、となる。軽い中毒性をもつ柴犬的存在。

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VELVIA
鮮烈。メインの被写体以外のもの、例えば背景の鮮やかな緑や原色部分のディテールが失われることがあるので注意。
使いどころと使い方・撮影意図をはっきりさせたいですね。
そういうわけでシーンタフネスはプロビアに劣るかなと思います。
空が入る場合、カラークロームブルーとの併用はおすすめしない。一方カラークロームエフェクトは強にしておくことをすすめます(高彩度のものがないなら弱でいいと思う)。
ベルビアとカラークロームブルーはやんちゃな性格が結構似ている気がする。ちゃんとコントロールしないとあちゃーとなる。

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ASTIA
鮮やか。プロビアよりは元気な色が好きです、という方はこちらを常用しては?
プロビアだとちょっと暗めかな?空がちょっと重いかな?ってときに使ってます。
ちなみに僕だけかもしれないけど、スナップで常用しまくっていると、後から見返した時になんだか退屈してしまう、、という不思議な現象に遭遇します。やはり色彩に”傾向”がついてしまい、被写体の唯一性がやや損なわれるからでしょうか。

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ETERNA
クラシックネガが物理的な過去、物的な経年を感じさせるのに対して、エテルナは記憶の中の過去、回想シーン、という印象です。「そんな”時”があった」というシミュレーション。
カスタムベースとして隠れ優等生。うまく扱えば柔らかい肌や日光の透けた髪の毛など、繊細で尊いイメージの被写体をより美しく、触れれば失われるのではないかと思われるような印象に高めてくれる、かもしれない。
冬のふわっとした光と相性抜群。その出自通りシネマチックな印象。
ただし何も考えずに撮るとただの眠い写真になるのがエテルナ。エテルナの性格を理解して上手く使うことで、貝殻に耳を当てるとなんか心地よい音がするよね、的な印象に転換したり、陰≒issueを画面全体に散らせて、遅効性の毒みたいに効かせる、みたいなことができるんじゃないかと思います。
僕の中ではボタニカルシャンプー的存在。ちょっとよくわからないですね...

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CLASSIC CHROME
渋みとか閉塞感と合うシミュレーション。問題提起をするような、何か訴えたいことがあるんだって写真に合うと思う。
それはたぶん”シャドウ・陰を撮る”ことで魅力的な絵が完成するシミュレーションだから。
issueや憂いはやっぱり光とは反対の陰に潜んでるものですからね。
空の写りはかなり特徴的で青が緑寄りになる。the brilliant greenのジャケットが頭に浮かぶ。
無機物との相性は良く都会のビル群で映えるのでは?ぼく田舎だからわかりません。
フィルムシミュレーションの中でも1、2を争う個性的な色彩だと思う。
無常観を演出して、あらゆるものを悲しみの底に追いやることも、そこに慈しみを見出させることも可能。個人的にこれが神がかってるアカウントがあるけど紹介はしません。

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CLASSIC NEG.
実家に眠っている古きよきアルバム的な、まるで本当に物的に経年したような、”オールド”な写真が撮れる。デジタル時代の現代において、何年後、何十年後かに見返す写真を撮るなら最高だと思う。このフィルムシミュレーションを作ったFUJIFILMは、唯一「時間」だけが付加できる”僕だけの・私だけの思い出”感を、時を超えて実現しようとしたのではないかと思っている。
つまりクラシックネガを使えば「過去から来た写真」が撮れるということ。フィルムメーカーがそれに挑んだんだと思うと胸が熱いですね。

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ACROSS
かっこいいモノクロが撮りたいならこれ。シャドウの階調がよいです。
グレインエフェクトは強・大にしてもOK。ISO12800とかのノイズがいい感じに粒状感を演出してくれる(作例2枚目がISO12800)。室内でただ普通に過ごしている子どもたち、そんな日常をかっこよく思い出に残したいならACROSS。ISO上げ上げ推奨なので室内でもブレ知らず、ステイホームのおともにどうぞ。

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MONOCHROME
あんまり使ったことないです。うーん、写真単体を見てほしい場合ではなく、写真はあくまで背景やイメージの演出として必要です、みたいな場合にいいのかもしれない。アクロスの作例と比較すると、モノクロの方がMONOCHROMEの文字が見やすい気がする。アクロスは文字にフォーカスしたときちょっと葉っぱの表現が豊かすぎてうるさいかな。アクロスはその写真のための白黒、モノクロはその写真とセットになる”何か”のための白黒かな?と思ってます。

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【別のシーンでの作例】

PROVIA

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VELVIA

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ASTIA

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ETERNA
やっぱり回想シーンって感じ。好きです。映写機がカタカタ言いながら始まりそう。
コントラストが低めとか眠いってことは、考え直せばシャドウの効果をシャドウ部だけでなく、絵全体に行き渡らせることもできるってことなんですかね?エテルナは陰を失ったわけではなく、絵全体に、ほんのりと散りばめる、そんなフィルムシミュレーションなのかもしれない。

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CLASSIC CHROME
やっぱりブリグリが浮かびます。

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CLASSIC NEG.
いい表現浮かんだらここに書く。なんとも言えない、エモい感じ。全然知らねえ場所だけどオレの地元感。

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ACROSS
モノクロよりシャドウが深く、かつディテールもしっかりしているので、より立体感を感じることができます。リアルだ。

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MONOCHROME
うん、やっぱりアクロスより”絵”感があると思う。悪くいえばリアル感、臨場感は比較的小さい。
たぶんたくさん枚数見たらモノクロの方が飽きないと思う。飽きないっていうか、疲れないかな。

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ProNeg.Std
ポートレートは撮ったことがないので語れることはない。見たままでお願いします(そのための作例だからってことで)。
しかしこのプロネガスタンダードが、なかなかのピンチヒッターなんですよ。
ポートレート以外、風景とかなんでも、撮ってて、プロビア?エテルナ?アスティア?なんかどれも違うな、というときに騙されたと思って使ってほしい。
正確ではないかもしれないけど、簡単に言うとエテルナっぽいプロビア。

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ProNeg.Hi

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こんなところですかね。
ちなみに古い街並みの写真はX100Vを買って初めてまともに持ち出した日に撮ったもので、まだレンズの保護フィルターとかも届いてないのに我慢できなかった思い出。
カメラの操作自体もまじでわけわかってなくて、あれ?さっきまで絞り変えられたのに、いつの間にかオートになってる...みたいなレベルの頃。それでもフィルムシミュレーションのおかげでマシに見えるありがたさですよね。ま、それこそが今回のテーマの核心なんですけどね。

3 フィルムシミュレーションの【一般的】意義

たぶん公式HPにのっているこれが、フィルムシミュレーションの一般的というか王道の存在意義ではないかと思います。

フィルムシミュレーションと組み合わせ、複数パラメーターを調整することでイメージしている仕上がりに近づけることができます。フィルムで撮影したかのような粒状を質感として加えたい。青空や植物などに深みを与えたい。シャドウ部にも質感を残したい。用意された複数のパラメーターを自在に調整することで、完成度の高いフィルムシミュレーションにオリジナリティを加え、表現に幅を与えてくれます。撮影時からビューファインダーや液晶モニターを通して、被写体をイメージ通りに捉えられる為、創作意欲が高まる他、新たな気づきもあるかもしれません。また、撮影後の現像時間を大幅に短縮できるので、被写体としっかり向き合う時間を確保でき、アウトプットを増やすことも可能です。

出典:FUJIFILM社 X-S10製品ページ

狙った表現・イメージを実現するための機能、もっとくだけた言い方をすれば、撮影者が思った通りの絵をカメラに吐き出させるための機能、というところでしょうか?

4 フィルムシミュレーションの【個人的】意義

ちょっと長くなってきているので、ここで今何を話しているのかをあらためて明らかにしておきます。

フィルムシミュレーションはX100Vの"any X"性能にどう寄与しているか。

でしたね。
ちなみにお忘れかもしれませんが、これは初心者である僕が、同じような初心者に、X100Vいいぜ!!って紹介するnoteです。
というわけでズバリ僕が思う答えを言います。

「何撮っていいのか分かんない」
「どう撮っていいのか分かんない」
「どこに撮りに行けばいいのか分かんない」
「こんなとこで撮っていいのかわかんない」

→ でも撮ってみたらなんかいい感じに撮れてる!←ここフィルムシミュレーションのおかげ!

→→ ああ!下手でも美しいって思ったものを思った時に、いつでもどこでも、自分の感性のままに写真撮っていいんだな~。写真って楽しいな~。もっと写真撮りたいな~。

→→→ 写真もっと上手くなりたい。

結論、しょぼいんですけど、こういうことです。
ちょっと作例準備するので疲れたんで。

要するにフィルムシミュレーションっていうのは、なんでもかんでも不安な初心者に「思ったままに撮ればいいんだよ~」っていう「許し」を与えてくれたり、撮影者の「これ撮りたーい」を妨げる技術の不足や、謎の遠慮のような心理的ハードルをやわらげてくれたりと、とにかくユーザーをポジティブにしてくれる機能なんですよね。

だって究極撮ろうと思えば撮れない状況なんてないですよね?
撮ることついてなにかしらのハードルがあって、今はやめとくか、とか、うーん撮るほどのものでもないか、って通り過ぎたり。
そういう、これはいいや的な、撮影にとってのネガティブ要素を超えて撮影に向かわせる魅力がフィルムシミュレーションの絵作りにはある。

僕はそういう意味で、フィルムシミュレーションは強力に”any X”を支えてくれている、と思っています。

逆に言えば、撮れない状況を生んでいる、つまり”any X”を妨げているのは撮影者自身である、とも言えるわけです。
雨だし、とか、片手塞がってるし、とか、カメラ重いし、とか、こんなん撮っても意味ないし、とか、こんなとこで撮ってたら変な目で見られるし、などのように。

今回はフィルムシミュレーションがメインの回ですが、前2回のnoteで書いてきた通り、X100Vはこういったネガティブをすべて取っ払って撮影に向かわせる魅力がある、写真を撮る機械、という原点的コンセプトに忠実な、すばらしいプロダクトなんだ!と僕は言いたいと思います。

どうですか?みなさまにとってのフィルムシミュレーション、またはカメラはどんな存在でしょうか?ぜひ聞いてみたいです。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
ではまた


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