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私は今彼氏と並んでいる

もうすぐ開店

私たちは開店したら事前に調べておいたショップにいくことにしている

何年か前、
私がまだ伊勢丹にあるブライダルジュエリーショップ販売員をやっていたころ
こんなお客さんがいたことを思い出す

そのお客様は私たちのブライダルジュエリーを既に知っている様で

数ある1階フロアの他の店舗には寄らずにいらっしゃった
デパートは開店してまだ3分だった

いらっしゃいませ

私は二人に声を掛けると女性の方が答え、
男性の方は静かにしていて「付いてきた」という感じだった

二人の会話はこのようなものだった
「艶ありも可愛いね」
「ダイヤって感じじゃないよね俺」
「内側に入っているんだねいいね」
「ゴールドとプラチナだったらどっちいい?」
「みて。指輪嵌めすぎて赤くなっちゃった」
「これだと目立ちすぎるね。結婚しました!って大声で言っている感じするね...」
「まあでも、予算内じゃないけどそれを気に入ったのならそれにしよう」

私は雰囲気から二人が普段から仲良がいいことが分かった

私が
仲がいいですね。羨ましいです
とお伝えすると
「そんなことないですよ。いつもケンカです」

私もいつかこんなふうに指輪を選びながらい彼氏とわちゃわちゃしたいと思った

二人は「他のところも見に行ってきていいですか?」と告げ、
数分後また戻ってきた

先ほどの気に入った指輪を手にとって
「これにします」と決めた

私が書類の手続きをしていると
女性が「指輪の内側に文字を彫ることはできますか?」
と聞いてこられたので

私は
できますよ?
その指輪だと15文字までです。
英語だとこのような感じです。

多くのお客様は
日付と名前to名前、
もしくは名前from名前ですよ
とお伝えした

例えば
「Hiroshi to Kanako」
の様に

すると女性が
「えーそうなんだ〜どちらにしようかね?何彫る?」
と男性に聞いていた

すると
先ほどまで静かだった男性は

指を折り数を数えながら

Yu,

 Bi, 

Wa,

Get,

Da,

Ze

「指輪の内側に"指輪ゲットだぜ"って掘れますか?」

と聞いてきた
わたしは「掘れますよ笑」とお伝えした


あの時のカップルのことを今思い出した
あのカップルは今頃どうなっているだろう

もうそろそろ伊勢丹が開店する

私は今彼氏と並んでいる


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