誰かいるのは分かっているんだからな!!
先程、マンションに帰ってきた。
真っ暗な部屋の奥の方で「ちょっと音がした」気がした。
気のせいだった。
実家も含めて泥棒に入られた経験はない。
部屋は朝出て行ったままの状態だった。
問題ない。
しかしこの部屋は泥棒が金目のものを「ここにもない!ここか!?違う!」と探した跡のような散らかりようで「問題ない」と言えるのか
小さい頃、母親が仕事をしていた関係で、決まって自分が先に帰宅していた。
暗い部屋の灯りを一つ一つ点けるのが自分のやることだった。
怖かった。
8畳の部屋は和室で、電気は真ん中にあるぶら下がった紐を引っ張るのタイプなのだが、
真っ暗な中そこまでいくのが怖い。
そういう時、私は強がった。
「そこに誰かいるのは分かっているんだからな!!」
叫びながら歩を進めた。
「いるんだろ!?知っているんだから!もう出てこい!!」
(なんでも知っていた)
「知ってるんだから!見たんだからな!」
(何も見ていない)
「電気点けるぞ!!?」
(怖い)
私は電気をつける瞬間いつも怖かった。
もし「目の前に誰かいたらどうしよう。。」
つけないほうがいいんじゃないか。
もし目の前、顔と顔の、鼻と鼻の先の距離にいたらどうしよう
どう「ご挨拶」したらいいのか??
「初めまして」なのか??
「すみませんご挨拶遅れまして。
私、只今、学童保育から帰ってきました
もりたけんじと申します」
はたまた
「泥棒〜〜!!」
と大騒ぎしたほうがいいのか??
はたまた
「お母さ〜〜〜ん!!!」なのか??
(この状況はお母さんでも困る)
とりあえず強がってショックを和らげるように必死だった。
「いるんだろ!!知っているんだから!もう出てこい!!」
(何も知らない。知っていたら電気つけない)
「点けるぞ!!」
(いないでくれ。いるならどこか隠れてくれ)
いない。当然いない。
この8畳の部屋にはいない。
残るは、
洗面台、キッチン、リビング、6畳の部屋、2階。。。
「何個電気をつけなくてはいけないんだ。。
子供だぞ!!」
また恐る恐る歩を進める。
「ははぁ〜ん。。そっちの部屋か!もういいから!出てこい!!」
(誰と戦っているのだろう)
「2階か!!!出てこいって!!頼むから!!頼むから出てこい!!」
「いないのに」強がって、怖気を吹き飛ばしていた
懐かしい
先程「暗い部屋」に戻り、間接照明の電気をつけた。
誰もいないことが当たり前になってちょっと寂しい歳になった。
これから掃除をしようと思う。
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