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映画『ミッドナイトスワン』の魅力(3) -光の演出と物語に寄り添う音楽

映画『ミッドナイトスワン』(9月25日公開、内田英治監督、草彅剛主演)の魅力を語る上で欠かせないのが、内田英治監督の光の演出、そして、メインテーマに代表される音楽の素晴らしさだ。

『ミッドナイトスワン』のタイトルが象徴するように、今作にはどちらかというと「夜」のイメージがある。
実際には「ミッドナイト」のシーンの割合はそれほど多いわけではない。
しかし全編を通して、昼も夜もそこはかとない薄暗さを感じさせる。

そんな中でも光が満ちている数少ないシーンが、一果が通うバレエ教室だ。
もちろんその明るくあたたかな光は、一果にとってはバレエが唯一の救いであり、希望であることを象徴していると思う。
しかし、今作の中で「光」は必ずしもポジティブさだけを意味していない。
現にバレエ教室においては、その「光」は残酷にも、否応なしに少女たちの才能の差を露わにし、その心に深い影を落としもする。

以前、今作では大都会の夜の暗さが、かえって自分の影を覆い隠し、ひと時「白鳥」へと変えてくれる優しさをもって描かれていることに触れた。
少なくとも『ミッドナイトスワン』では

光=幸せ、希望、善いもの
暗さ=不幸せ、絶望、悪いもの

という単純な公式では描かれない。
この「どんなものにも光と影の両面がある」というメッセージは、今作に通底する隠れたテーマでもあると感じる。

「光」の演出が、そのことを象徴する印象的な場面がもう一つある。
物語の終盤、凪沙の部屋がそれまでにはなかったほど、明るくあたたかな光で照らされる場面だ。
その時、「光」が意味するものはいったい何か。
それはぜひ、ご自分の目で確かめてほしい。

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さて、音楽の素晴らしさについては実際に聴いてもらうのが早い。

◆9月25日公開『ミッドナイトスワン』100秒予告

セリフもナレーションも排したこの予告動画を、一編の珠玉の作品として成立させているのが、キャストの演技、そして映画全体の音楽も担当した渋谷慶一郎氏の手による「メインテーマ」であることは、誰も否定しないだろう。

緩やかに始まるピアノの音色が徐々にスピードを増し、疾走感すら感じるほどの高まりから、また引き潮のように引いていく。
それはまさに、凪沙という一人の人の物語そのものだ。

渋谷氏のツイートによれば、スケジュールがかなりタイトで一週間で映画一本分の音楽を作ったというが、私たちが映画『ミッドナイトスワン』を思い出す時、そこには必ず彼の音楽が寄り添うことは間違いない。

光の演出と音楽。
ぜひそんな角度からも、『ミッドナイトスワン』に注目してほしい。


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こちら(下記リンク)で上記以外の予告動画を見ることができます。

◆『ミッドナイトスワン』100秒予告
◆『ミッドナイトスワン』60秒予告
◆『ミッドナイトスワン』30秒予告

もっと詳しく知りたい!という皆さんは、ぜひこちら(下記リンク)をチェックしてみてくださいね。随時、情報が更新されています。

映画『ミッドナイトスワン』公式サイト


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