目線で言葉を発する「ナニカ」

僕の叔母は重い障害を持っている
話せないし体も自由が効かない
数年前までは言葉とは言えないが
声を発することは出来たし
歩くことも物を持つことも出来た
でも今は一言も発さないし歩けない


叔母は祖母の家に住んでいた
祖母の家に行くといつもテレビを見ていた
僕はテレビのリモコンを取ってあげるとか
時々ピアノを弾いてあげるなどしかしなかった


僕は叔母のことをどう思ってるのか分からない
正直に言ってしまえば
人間とは思っていないのかもしれない
多分祖母の家にいる「ナニカ」ぐらいにしか思ってなかった気がする
話せないし目線で言葉を発する叔母を
僕は何と思えばいいのだろうか
家族ではないし
たかが親族だ
母の姉だからっていうのが大きいと思う
それが無ければ本当に僕は何にもしないと思う
しかもずっと祖母の家に居たし
何を考えているのか
何を伝えたいのか
全く分からなかった
でも冷たいわけではなく
密かに咲く花のように
ほんとのりとした温かさは感じられた
母や祖母は何かを感じ取っていたと思うが
僕は1ミリも分からなかった


そんな叔母は最初に言った通り
今はもう話せないし歩けない
厳密に言えば話さないし歩かない
施設に入ったっきりだ
僕は1年半くらい叔母に会っていなかった
母や祖母は毎週会いに行っていた
でも僕は1度も行かなかった
なんでかは自分でも分からない
めんどくさかったのもあるし
僕が行ってもきっと覚えてないだろうし
そもそも覚えてるか確認するすべもないし
ただただ興味が無かったんだと思う笑

でも数ヶ月前に母に一緒に来て欲しいと言われ
1年半ぶりに叔母に会った
凄く綺麗な施設で
僕の部屋よりも広い何も無い部屋に
ぽつんと叔母は寝ていた
部屋に入った瞬間少し異臭がした
臭いとまではいかないが
鼻につく臭いだった
叔母の見た目はあまり変わってなかった
少し顔が浮腫んでいたような気がするが
それ以外は特に何も変わってなかったと思う
叔母は僕を覚えていたのかは全然分からない
母が「覚えてる?」と聞いても
僕を凄い眼力で見つめてくるだけだし
いまいち分からなかった
終始叔母は僕を見つめていた

でも珍しく一言だけ言葉を発した
言葉と言っていいか分からないが
僕を見て何かを言った
母は話したのがとても久しぶりだと喜んでいた


僕だと分かったのか
それとも知らない人が来て珍しがっただけなのか
どっちでもいいが
僕がいい刺激になったなら行って良かったと思った


やっぱり僕は叔母をあまり人間だと思えない
何か違うものだとしか思えない


僕は薄情者だろうか?

でも別に嫌だとか
嫌いだとか
気持ち悪いだとか
そんなことを思ったことは誓って1度もない

きっと亡くなってしまっても
僕は特に何も思わないのだろう


僕にとって叔母はなんだ?
これは永遠に考え続けることになるものだと思う
そんな気がする



ただそれだけの話です

ちゃんとした記事を書いたのはいつぶりでしょうか…笑


オチも何もないですが
叔母の話を人生で1度も他の人に話したことがないので謎に新鮮でした笑

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