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~公認心理師試験対策~科目担当講師が薦めるオススメ参考書(心理検査編)

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こんにちは。
武藤です。33歳、公認心理師・臨床心理士。
専門は、乳幼児期の発達支援、学齢期の特別支援教育、発達検査・知能検査、乳幼児向けの玩具や絵本です。
公認心理師向けのオススメ参考書の投稿記事は今回が2回目です。
1回目の記事では『~公認心理師試験対策~科目担当講師が薦めるオススメ参考書(障害者心理学編)』を書きました。
よろしければこちらも読んでみてください。

今回のオススメ参考書

『発達障害支援に生かす 適応行動アセスメント』
元々は海外の書籍です。
Vinelandという検査の開発者の先生が著者です。
その本を、「発達障害」の日本の大家である黒田美保先生や辻井正次先生が監訳されておられます。

これまで「適応行動」に関する参考書はほとんどない状況でした。
「適応行動」って何???
そんな疑問を抱えたまま過ごす学生や専門家も少なくなかったでしょう。
そんな中で、唯一と言っても過言ではないほどの、「適応行動」に特化した専門書です。
適応行動とはなんぞや、適応行動を評価するにはどのような検査が良いのかなど、実際の支援の場において、明日からすぐに重宝されるような有意義な知識がたくさん盛り込まれています!!

3つのポイント

1つめ。「この本でしか学べないことがある」
この本のタイトルにあるように、適応行動に関する検査を学ぶことができます。
当然のことですよね…笑
タイトルから、当たり前でしょっていう…
でも、これ本当に真面目にポイントです。
どうしてかって言うと、アセスメントや心理検査に関する参考書、専門書が巷には何冊も売られていますが、この本のほど詳しく詳説しているものはない!!
『知能』とか『性格』、『発達障害』『投映法』など、重要になるキーワードでまとめて説明している書籍は何冊もあります。
でも、『適応行動』に関する書籍は、現状本当に少ないんです。
だから、試験対策のための勉強するにしても、臨床において活用していくためにも、とにかく学ぶ機会が少ない状況です。
これは私個人の印象ですけど、公認心理師試験対策において心理検査の科目を担当している講師として、『適応行動』に関して学ぶことができる本は、これがダントツ1番だと思います!!
この本の存在を知ったときは、貴重過ぎて震えました。
絶対に試験前に1回は手に取って読んでほしい本です!

2つめ。「『適応行動』のアセスメントの重要性は無視できない」
はっきり言ってしまえば「適応行動なんて、これまでは客観的にアセスメントをすることは少なかった」という印象を私は受けています。
臨床的に活用されている検査の中で、適応行動の関する検査、適応水準をアセスメントできる検査の名前が耳に入ることがあまりに少ないと思います。
しかし、DSM-5ができてから、『知的能力障害』の診断基準が大きく変わりました。
簡単に言えば、知的障害は、これまでは「知能指数を高低で障害の有無や程度を判断していた」ところが強くありました。
療育手帳の制度を例に挙げると、心理判定員が対象児に検査を行い、その数値を、手帳の交付における大まかな目安にしていました。
今でも、こういった判断基準が目安になっているところがあるくらいです。
その一方、DSM-5以降、知的能力障害の判断では、「知的水準だけでなく、適応水準を含めて、両輪で包括的に判断していく」となりました。
だから、現状、知的な課題があると推測されるような対象児や、学習において著しい困難さが見られる対象児をアセスメントする上で、発達水準や知的水準だけでなく、適応水準をアセスメントする必要があります。
もちろん、専門家の行動観察や聴き取りからの判断で、適応水準をアセスメントしていくことは今でも多くあると思います。
でも、エビデンスベイスト・アプローチが望ましいと言われる昨今では、適応行動のアセスメントに心理検査を用いることは望ましいことでしょう。
だからこそ、専門家にとって、今、大切な本なんだと思っています。

3つめ。「豊かなアセスメントツールを学べる」
先の話しにつながりますが…
知的な困難さがある場合や発達的な困難さがある場合に、これまでは知的水準や認知機能の水準、特性などのアセスメントに偏って行われていたように思います。
これは国際的な傾向でもありますが、日本では特に知的水準のアセスメントに偏る傾向があります。
こういった流れを経て、今、「適応行動」に関しての臨床研究は十分な状態であるとは言いにくいでしょう。
だからこそ、海外の研究、知見を参考にすることで、臨床的に有意義なことを理解していく必要があると思います。
今、大半の参考書では適応行動のアセスメントというと「Vineland-Ⅱ適応行動尺度」の簡単な説明に終始してしまっています。
しかし、この本はE. Dollによって開発されたヴァインランド社会成熟尺度をはじめ、AAMD/AAMR/AAIDD版適応行動尺度、ヴァインランド適応行動尺度、適応行動アセスメントシステム、自立行動尺度改訂版(SIB-R)、適応行動評価尺度第3版(ABES-3)、適応行動領域のある発達検査といった大きな区分で、さらにそれぞれの尺度において再分化し詳説しています。

妥当な支援のできる心理師

これからの時代、心理師へのニーズは増える一方ですが、それに伴い、社会的な説明責任を果たすべきところは大きくなるように思います。
数多の心理師が働く中で、妥当な支援を対象者へ提供するためには、エビデンスベーストの姿勢は最低限持つべきものであり、この点を大切にできるか否かで社会的な評価は左右されていくことでしょう。
心理職が世の中に認知され、どんなことをしている専門家なのかをしっかりと知ってもらい、より具体的なニーズを持って頼られる存在になる。
これまでの積み重ねよりも、さらに一段、二段と高みへ精進し、その研鑽がクライエントの利益につながるようになっていく。
そんな過渡期において、重宝されるような一冊です。

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