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長期事業構想が必要なたった一つの理由

ここのところ、10年先、20年先の会社の進む方向や到達したいビジョンを描く長期事業構想のお手伝いが続いています。お客さまとのディスカッションを通じて、社会や会社のあり方を考える良い機会になっています。

経営者ではなく、考え方を求心力にする

こうした長期事業構想や経営計画が必要なのはなぜでしょうか。
なかには、先のことは分からないのだから描いても仕方がないという考えの経営者もいます。ただ、その経営者がいなくなったらどうでしょうか。会社は成り立つでしょうか。

短期的には成り立つでしょう。ただ、長期的には成り立ちません。これは長期の構想が描かれていて、それにそって事業を進めることができるから大丈夫、という意味ではありません。

「経営者がいなくなっても大丈夫」なのは、その会社が大切にすべき考え方が求心力になっていることが前提です。目の前のことではなく、長期の道のりを考えることを通じて、自社は何を大切にしたい会社なのか「原点」を明確にします。そうすれば、仮に経営者がいなくなってもその原点に立ち返ることできます。

「差別化」を生み出す「原点」を見出す

経営計画や戦略は、一般的には、「特定の組織が何らかの目的を達成するための道筋」と定義されます。その道筋を描くにあたっては、外部環境の分析が必要になります。政治や経済、社会の在り方、テクノロジーの変遷など大きな流れを見ます。また、市場やお客様、競合他社、協業先、その他のプレーヤーの特徴や想定される変化を見ることも必要です。そして、自社がどのような立ち位置にあるのかを考えます。

このとき気をつけたいのが「差別化」です。当たり前のように「差別化」という言葉を使いがちですが、単純に相手と違うことではありません。大切なのは、お客さまや社会も見落としてしまっている価値を見出すことです。そして、その価値を満たすために何をすべきか、長期で事業を考えます。これまでもこれからも変わらない「自社ならではの貢献」は何かを問うのです。これが「原点」となります。

そのようにして見出した立ち返るべき原点は、私たちの強みを生み続ける核となります。結果、他とは違う会社としてお客さまから選ばれ続ける、つまり「差別化」されるのです。

立ち止まって、遠くを見て考える

長期構想や経営計画は必要ないという経営者からは「走りながら考えよう」という言葉が聞かれることがあります。この考えを否定するつもりはありません。スタートアップの企業には必要となる考えでしょう。しかし、時に「走っているだけでは?」と思うような状況も見かけます。「考えよう」が本当に機能しているのだろうかと問いかけてほしいのです。

 ・そもそもの目的は何だったのか
 ・その目的から見た時に出てきた結果はどう解釈できるのか
 ・そこからわたし達は何を学んだのか
 ・そして、私たちはどこへ向かうのか

つまり、「走っては、立ち止まり、遠くを見て考える」が正しい姿勢です。自社の核となる原点が明らかにならない限り、強みはアップデートされません。ただやみくもに走り、疲弊してしまいます。

早く行きたければ、一人で行け
遠くまで行きたければ、みんなで行け

アフリカにこんな諺があるそうです。遠くまで行くには一人の力では難しい。とはいえ、チームが機能していなければ、みんながいても遠くへは行けません。

今、わたし達はどこにいるのか、「遠くまで」とはどこなのか、その道を通ることでわたし達は何を得る事ができるのか。事業という旅路で立ち現れる変化に対処するのではなく、その変化から学ぶことが大切なのです。

「遠く」を目指すことで、「原点」を社員全員で共有し、それを「求心力」にしていく。これが、長期事業構想が必要なたった一つの理由です。

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