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人事異動によって、働きがいを高める

中小企業には、なかなか人が集まりません。一方で突然去ることもあります。そうなってから慌てて採用したり、穴を埋めるために他部署から異動させたりと後手後手の対応になることがよくあります。

人事の対応が後手後手になってしまう理由

日本の人事は長いことある前提のなかで行われてきました。新卒一括採用、年功序列、終身雇用です。もっと簡単に言えば、上が抜けて、下から入ってくる、という分かりやすい新陳代謝がありました。ところが、その前提は、だいぶ前から成り立たなくなっています。

ここでいう「代謝」は、退職や転職のことだけではありません。育児や介護などのライフイベントによって一時的に休職となるケースもますます増えています。しかしながら、育休や介護休暇の制度はあっても「休みたくても休めない」状態にあります。誰かが休んでもカバーできるようになっていないのです。業務の標準化やマニュアルの整備ができていないという課題もよく聞きます。また、定期的な異動を仕組みとして取り入れていない企業も多いです。

定期的に異動を行うことの意義

そもそも一定の範囲の仕事に専念させられるほど、中小企業にはリソース的な余裕がありません。異動を定期的に行い多能工化することで、一人当たりの生産性を高められるはずです。一つの強みを深めつつも、他へと守備範囲を広げられるようにしていく必要があります。

「それは、分かっている、でもなかなかね…」そんな声もよく聞きます。異動させると一時的にパフォーマンスが落ちます。現場も嫌がります。本人も嫌がります。経営者もリスクを感じます。ただ、そこに留まっていては変化に対応できません。

異動も配置換えもなく、同じところで働き続ければ、仕事に熟達していきます。一方で、視野が狭くなったり、違う可能性を見つける機会を失ったりします。本人にとっても、会社にとっても知らずに失っている機会はかなりあるのではないでしょうか。

異動のメリットは、多様な経験を持つ人材が生まれるという点にあります。これは具体的なスキルが増えるだけではありません。変化に対応するレジリエンスが高まります。異動することで、確かに一度はパフォーマンスが落ちます。ただし、それは、次のレベルにあがるための節目です。その節目を通じて、仕事への向き合い方が変わっていきます。これは、組織レベルで見ても同様です。異動してきたメンバーによって、それまで組織で当たり前としていた前提を良い意味で疑う機会が生まれます。

意図をもって人を動かす

ただし、やみくもに異動させれば良いのではありません。企業理念やミッション、ビジョンなどの「考え方」が明確であることが前提です。社員がその内容に共感、納得できているほど、異動による新たな力の獲得の可能性は高くなります。

なぜなら、嫌々仕事をしても楽しくないからです。世の中に、楽な仕事はありませんが、その仕事に「意味づけ」をすることで働きがいを持つことができます。異動の節目で、仕事の「意味づけ」をしていく上で、会社としての「考え方」が浸透しているかどうかは、結果を大きく左右します。

働きがいは強みを活かせているかどうかの尺度

人事には二つの側面があります。「働きがい」と「働きやすさ」です。どちらもパフォーマンスを高めるためのものです。違いは「強み」にフォーカスしているかどうかです。「働きがい」とは、一人ひとりの「強み」を活かせているかどうかの尺度なのです。

人は、誰しもが強みを持っています。問題はそれを発揮できる機会があるかどうかです。異動に限らず、意図をもって人を動かせるかどうか、期待を伝えられているかどうか、パフォーマンスとして反映されるまでサポートできるかどうかが問われます。

これも楽なことではありません。ただし、そのような取り組みをしない限り、後手後手に回り続けることになります。その方が疲弊します。楽しいはずもありません。

「働きがい」を生むことをマネジメントの「働きがい」にしたいものです。

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