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理念浸透に必要な経営者の姿勢とは

2022年版の中小企業白書に以下のデータがあります。

経営理念・ビジョンを明文化している   87.1%
経営理念・ビジョンはなく、明文化していない  12.9%

これは、東京商工リサーチの「中小企業の経営理念・経営戦略に関するアンケート」をもとにしたものです。

多くの企業で経営理念・ビジョンが明文化されています。実際に私が訪問するすべてのお客さまの会社で、入り口や会議室に経営理念が掲げられています。毎朝、朝礼で唱和もされています。

しかし、ありがちなのは、絵に描いた餅になっていることです。明文化はされているが、浸透していないことが多くの会社で課題になっています。

中小企業白書の調査では、経営理念・ビジョンに対する社員の受け止め方について、(1)認知(2)理解(3)共感・共鳴(4)行動への結びつきという4段階に分けて集計しています。

結果は以下の通りです。

47.0% 共感・共鳴しており、⾏動に結びついている
25.4% 共感・共鳴しているが、⾏動に結びついていない
12.9% 理解はしているが、共感・共鳴はしていない
9.0% 認知はしているが、理解はしていない
5.7% 認知していない

7割以上の回答者が、理念に「共感・共鳴」が得られていると感じているようです。

どのような理念が掲げられているかも調査されています。代表的なのは「顧客満足、顧客獲得」「社員の幸福」「社会への貢献、社会的な使命」です。

これはドラッカーのいう企業の目的とも通ずるところがあります。この内容自体に反対する人はいないでしょう。

この調査の興味深いところは「共感・共鳴している」が7割である、で終わっていないところです。「行動」まで踏み込んで浸透しているかどうかを考察しています。つまり、共感・共鳴しているというだけでは、反対ではないということであって、真に腹落ちしているかどうかは行動に表れるということです。

集計によると、行動に結びついている企業は、理念を掲げている企業の半分です。そうした企業では、理念浸透の効果として「社員の自律的な働き方の実現、就業観の共有」が一番多く挙げられています。

「自律的である」ということは、掲げられた理念に共感・共鳴しつつ、社員自身が貢献すべきことを見出しているということです。つまり、ただ従っているのではないということですね。

さて、そんなことが理念を会議室に掲げたり、毎朝唱えたりするだけで可能でしょうか。

ここで考えなくてはならないのは、何のために理念を掲げるかということです。社員を理念に従わせるために掲げるのではありません。社員と共に事業を振返り、自社の事業や働くことの意味を深め合うために掲げるのです。それが、浸透を促進します。

そのポイントになるのは、対話による振返りです。みなさんの会社では、日々の仕事の中で理念に立ち返るような場面はあるでしょうか。そもそも立ち返るほど悩まず、ひたすら対処しているだけかもしれません。頑張ってはいるけど長い目で振返ってみると、行動の質は変わっていないということがあります。つまり、一歩踏み込んだ工夫がないのです。

お客さまや社会の価値観が多様になる中、共に振返り、共に自社や自分のあり方をアップデートしていく対話の場がますます求められています。それは、お客さまから学ぶ機会でもあります。

経営者に求められるのは、理念の発信だけではありません。社員と共にお客さまから学び、自社のあり方である理念を探求する姿勢です。

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