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京極夏彦『オジいサン』

図書館で大きい活字本のコーナーを見ていたら、たまたま目についた本。

平凡なおじいさんの日常と頭の中を
ひたすら描いている作品。

京極夏彦さん
こんな本も書かれるのですね。

感想を一言でいうと
しみじみ面白かったです。

主人公は
益子徳一 72歳 
結婚歴なし。
公団アパート住まい。
所謂独居老人。

なんともスローモーな展開。

記憶力が怪しくなっているせいもあって、
朝から晩まで
頭の中でああでもない、こうでもないと、行きつ戻りつ、
とりとめのないことを考えている。

常に自問自答。

思考があっちへ飛び、こっちへ飛び。
自由といえば自由。
おじいさんの脳内は混沌としている。

でも、完全にボケているわけじゃない。
考え方は常識人。
節度も弁えている。
寧ろ真っ当すぎるほど真っ当。

自意識過剰気味なところもあって
自分がどう見られているかも
気になってしまう。

独り言が増えた自分にハッとして、ボケの兆候を疑ったり、
短期記憶がめっきり弱くなったことも自覚している。

成長した孫にウザイといわれる
近所のおじいさん。

孫がいない徳一は おじいさんと呼ばれることに慣れていない。
他人からおじいさん、と声をかけられると狼狽える。

スーパーの試食コーナーの販売員が
「おじいさん」と気安く声を掛けてくる。
少しでも反応が鈍いと、
「おじいちゃん」とハードルを下げてくる。

そういう他人の態度に
違和感、嫌悪感をもってしまう。

そのあたりの老人の微妙な心理が
実に上手いこと、ユーモラスに
表現されている。

おじいさんだからって
十把一絡げにしないで、
と言いたくなる。

一日は長く、一年が短い
こういう老人の感覚もなんとなくわかる。

さすがに、ここまでではないよね?
と思いつつ、
共感できる箇所が多いわたしは
60代にして、立派なオバあサン予備軍?


自分自身、
やれズボンが見つからないとか
化粧がどこまで終わったのか、わからなくなるだとか、愚にもつかないことをつらつらnoteに書き綴っておりますが、
この主人公の爺さまと変わらないじゃないか。。。

これでは若い人に
ウザイと言われるだけ。

しかし、見方を変えれば

老人力が付いてきたということもできる。

まぁ、無理に若ぶったり
老成ぶったりしないで
ありのままでいきたいものだ。


取り敢えず、この物語の結末が、
希望の持てるものでよかった。

それにつけても
大きな活字本楽だわ〜
ストレスフリー。
メガネ嫌いなわたしにとっては
有難い。
サイズ的に携帯するには不向きだけど。


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