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専業主婦はバカにされる

家族にバカにされているなぁと思うことがよくある。

一方家族も、わたしにバカにされたと突然怒り出すことがある。
そんな風には、毛の先ほども思ってないのに。

家族というものは
お互い遠慮がないから
「親しき仲にも礼儀あり」
がなかなかできない。

例えば、何十年も自分が中心になって担ってきた家事。

出来て当たり前。
出来てないと怠け者、
主婦失格といわれる。
(ような気がする)

主婦の仕事は家族を支える尊い仕事。
プライスレスといってもよい。
もっとプライドを持っていいはず。

なのに、無為徒食とか、
3食昼寝付きとか
ネガティブなイメージが浮かんでくる。
現金収入の多寡が家庭内の地位を決定づけている気がする。
21世紀の今、専業主婦は生きた化石かもしれない。


君がそこにいてくれるだけで充分だよ

もしそんなことを言われたら、逆に気持ち悪いけれど。


ある日あるきっかけで、鬱積したものが爆発する。
確かにお世辞にも「出来る主婦」とはいえないが、夫からも子供たちからも蔑まれて、人格否定まがいの暴言を浴びせられる。

あ、わたしのことではありません。
この小説の主人公の話です。

『だから荒野』(桐野夏生・著)はそんな主婦と家族の物語。

主人公は衝動的に、着の身着のまま
家を出る。

夫の車を運転し、西へ西へ

目指すは結婚前に交際していた男性が住む長崎。
しかしそれは単なる口実。
それほど未練も関心もあるわけじゃない。
とりあえず目的地を設定したかっただけ。

これがなかなかの珍道中。

世間知らずの専業主婦に
世間の風は冷たく、
これでもかと
煮湯を飲まされる。

それでも半ば意地で目的地を目指す。
捨てる神あれば拾う神あり。
新たな出会いもあり、人に助けられ、なんとか長崎に辿り着く。

この小説の舞台となる家庭は、家族とは名ばかりの同居人の集まり。
それぞれがてんでばらばらの方向を向いている。

夫が悪いのか、妻が悪いのか。
両方なのか。
子どもたちも悪いのか。

何が原因でそうなってしまったのか。

もし家族に、方程式みたいなものがあるのなら、誰もが正解を導き出そうとするだろう。

しあわせになりたい。
そのために家庭を築いたはずなのに。


殺伐とした温室から荒野へと
踏み出した主人公ヒロイン


最後の最後までヤキモキさせられる。

桐野夏生らしいグロテスクさはなく、ユーモアもあり、後味も決して悪くなかった。

何かを変えなければ、何も変わらない。
当たり前のことだ。



ミルク(candy@)さんのこちらの記事を拝読し、この本を手に取りました。
noteの素敵な出会いに感謝です。



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