見出し画像

【スペイン巡礼5日目】乾杯と瞑想のちょうどいいコントラスト Villamayor de Monjardin→Torres del Rio

2021/9/6

巡礼5日目。
6時に目が覚めた。外はまだ真っ暗。

ゆりがコーヒーを飲んでから出発したいと言うのでお湯を沸かしに下に降りたら、まだ話したことのないヒゲもじゃの男性に出会った。

話してみると、彼はドイツの人とのこと。
それで思い出した。

昨日ゆり(妻)がいい感じのドイツのヒゲの人と話したって言っていた。

《僕》
「妻が昨日君と会って、いい感じで話せてよかったって言ってた」

《彼》
「僕も、君たちと会えて本当に嬉しい。昨日宿に着いて二人を見たとき、すごくいいエネルギーの二人だと思ったんだよ」

そう言ってくれた。朝から嬉しい。

彼はもう出発するところだったので、引き止めては悪いと思い「またどこかでゆっくり話そう」と言って見送った。

巡礼中は、一度知り合った巡礼者とまた会えるかどうかは本当にわからない。

歩くペースや目指す町が毎日バラバラな上、怪我をしたりバスを使う決断をする人もいて、再会する確率はけっこう低い。

だからこそ、もう一度会えたらカミーノが引き合わせてくれたとか、何かの意志を感じる気がすることもある。

彼とゆっくり話すこと、できるやろか。

***

僕らよりも少し先に、昨日知り合ったクラリサが出発していった。
サラリとその場にいたみんなに挨拶して、クレバーな感じの出発だった。

細いけど体の芯が強そうな彼女は、ずんずん歩いていってすぐに見えなくなった。

...かと思いきや恥ずかしそうに引き返してきて、みんなの愛情たっぷりの笑いの中、忘れたトレッキングポールをそそくさと取って再出発していった。

エンターテイメントをありがとう。笑

我々の今日歩く予定の距離は、19km。

日が昇るか昇らないか、日の出直前にアルベルゲ "Oasis Trails" を出発した。

出発のとき、昨日僕らの次に到着したフランス人の彼(なぜか滞在中ずっとブリーフパンツ一枚で過ごしていてスタッフに白い目で見られてた)がスペイン語で陽気に見送ってくれて、なんかすごい元気出た。

今日も草原の中を歩き、

シーズンを終えて下を向いたひまわり畑の通り過ぎ、

カミーノに足跡を残して横断するカタツムリに出会い、

ひもを抜かれて脱ぎ捨てられた哀愁漂う靴(カミーノ上で本当によく見る)を横目に、ひたすら歩き続けた。

***

アジア系に見える小柄な白髪の女性が、道の脇に生えているベリー系の果物を採って食べていたので声をかけた。

スペイン語は通じないけれど、英語は少し通じる。

70代くらいに見える彼女の足取りは速く、しっかりしている。

名前はチャン(中国のChangじゃなく、クリスチャンのTianだと念押しされた)。

フランス人で、ひとりでサンジャンピエドポーから初めてのカミーノを歩いているそう。

チャンはめちゃくちゃお喋り好きで、そのまましばし話しながら一緒に歩いた。

カミーノではその人のポリシーやタイミングによって1人黙々と歩きたい人のことを尊重するので、こうしてたまにふと話が弾むのも楽しいし、何より話している間は不思議と疲れを忘れられる。

***

ペースを落としてゆっくり歩くと言うチャンと別れてしばらく歩いた。

日が昇り、10時をまわろうという頃。暑くなってきた。

ふと、右手前方の方で男性がリズミカルに何かを呼びかける声が聞こえた。

最初は犬が2匹見えて、男性の声に見事に合わせて走ったり止まったりしていた。

次の瞬間、犬たちが走っていく方に何かの大きな集団がうごめいてるのが見え、
だんだんその集団の鳴き声も聞こえてきた。

「羊飼いや!」

今回スペインに持参した、我々が好きな本「アルケミスト」の主人公がスペインの羊飼いで、自分の中に小さく生まれていた羊飼いへの憧れみたいな気持ちがビビっと刺激されて嬉しかった。

***

しばらく歩くと、久しぶりに町が見えてきた。

12km地点にあるロス・アルコスという小さな町。

Plaza Mayor(大体どの町にも同じ名前である、町で一番大きな広場)に出ると、広場を大きな教会といくつかの店が囲むように建っていて、巡礼者がたくさん休んでいた。

我々も一番大きなバルのテラスで休憩することに。

隣の席に先に座っていた女子2人が入れ替わりで歩き出す準備をしていて、どこからきたん?と話しかけてみた。

すると、地元スペインの巡礼者だった。

スペイン北東の、カミーノからもそう遠くないサラゴサという町に住んでるらしい。
けれど、カミーノは彼女たちも初めて歩いてるとのこと。

何となく親近感が湧いて、しばらく4人で話し込んだ。

昨日はVillamayor de Monjardinの別のアルベルゲに泊まっていて、今日目指している町も我々と同じTorres del Rio(トレス・デル・リオ)。

なんと今夜泊まる宿も偶然同じだった。

じゃあまた後でね、と元気そうな2人は先に進んでいった。

***

そこで20分くらい休んだら、体力はだいぶ回復。

そのあとは2つの小さな村で少しずつ休憩しながら歩き続けた。

トレス・デル・リオまであと2kmというところでは、犬を連れて自転車で、壮大な犬の散歩をしているおじさんとの出会いもあって癒された。

日本に昔行ったことが忘れられなくて、愛着があるとのこと。

おじさんが、"Dios esta con vosotros!(神は君らと共にいるぞ!)" と言い残して元気に走り去っていったのがその後しばらく耳に残った。

***

そして、トレス・デル・リオに到着。

歩き始めて6時間近く、今日も肩と足に結構きた。

最後の追い込みと言わんばかりに、町に入ってからアルベルゲまではきつめの上り坂が続く。

今日の宿、La Pata de Ocaには、先に到着した巡礼者がたくさんいて賑わっていた。

途中で話をしたスペイン人の女の子2人も着いていて、プールに入っている。
(その後彼女たちはアルベルゲの外の道にマットを敷いて、ヒーリング音楽流してヨガをやってた。そら体強いわ)

出迎えてくれたオスペダレロ(宿の世話人)の男性は、テンションがバカ高かった。

全ての言葉をまくしたてて陽気に話すテンションに、普段ならまだしも疲れ切っていてついて行きづらい。

スペインに来てから体験したことないテンションやなと思っていたら、彼はイタリア人だった。なるほど...。

電光石火のチェックイン手続きのあとちょっと距離を置こうとしばらくロビーには行かずに洗濯したりして体をケアするのに集中することにした。

けどその後しばらく関わってみると、僕の体力が戻ってくるのも手伝って彼の人柄の良さがわかってきた。

彼の名前はカルロス。

シャワー室のドアが壊れていて閉じ込められたら助けに来てくれ(当たり前か)、日本が好きだからTシャツに日本語でサインと一言くれとお願いしてきたり(かわいい)、1階のバルが閉まっている時間でもお願いしたらOKOKと飲み物も用意してくれた。

後でGoogleマップのAlbergue La Pata de Ocaの口コミを見てみたら、英語やスペイン語で書かれた評価はほとんどが1か5のどちらかで、そのほぼ全てがカルロスのことを書いているのを見て笑った。(ぜひ見てみてください)

1の人はみんな会ったときのカルロスのテンションや適当に聞こえる接し方が気に入らなかったようで、5の人はカルロスの近い距離のホスピタリティを評価していた。

これだけ印象に残る彼はシンプルにすごいと思う。

カルロスワールドに巻き込まれに、またいつか会いたい。

***

泊まる巡礼者向けのコミュニティ・ディナー(みんなで囲む夕食)が選択できたので、この日はここでご飯を食べることに。

12€のその夕飯を二人で分けることにして伝えたら、快くOKしてくれた。

地下の食堂に降りていき、偶然席が隣になったドイツ人の男性がどこかで会ったことがあると思ったら、今朝少しだけ話せたヒゲモジャの彼だった!

話したいと思っていたので、嬉しくなる。
彼の名前は、ディミトリー。

一人でカミーノを歩いているという彼は、話し方も問いかけも静かで、食べる物も一口一口味わって食べているのがわかる。

長テーブルの奥の方ではアメリカやポーランドのおじさんおばさんがワイワイと盛り上がっていて、僕ら3人と隣のフランス人の老夫婦はゆっくり静か目にお互いのことを話していたのがなんとも対象的やった。

興味が湧いて、瞑想もするというディミトリーに、歩きながらどんな風に瞑想しているのか聴いてみた。

あまり得意じゃないという英語で、プロフェッショナルじゃないけどね、と前置きしつつゆっくり考えながら答えてくれた。

呼吸に集中すること、難しいときはゆっくり動いていく雲を思い浮かべること、それ以外に現れてくる思考や目を奪われるものは車のワイパーと一緒だと思うようにしていること(運転中はワイパーは見ずに景色に集中するだろ?と)。

雲とワイパー、僕も実践してみようと思った。

宴もたけなわという頃、せかせかと給仕係をしていたカルロスが30度近い酒と人数分のショットグラスを手に現れた。

"No vino, no peregrinos!(ワイン飲まなきゃ巡礼者じゃねえ)" と楽しそうに言うカルロスに言われ、ワインじゃねぇじゃねえかと笑いながらヤジが飛ぶ。

普段アルコール飲まない僕も、まあいいかとグラスを取った。

"Salud!!(乾杯)"

ショットを飲み干して大体の人は部屋に帰っていったが、ディミトリーと僕ら3人で割と遅くまでお互いのことを話し合った。
豊かな時間やった。

22時半ごろ、僕とゆりが部屋に帰ろうとしたときに、酔った勢いで混ざってきてくれたオランダ人のおじさん。

ディミトリーが、僕は残って彼と話して帰るから先に帰ってていいよ、と言ってくれてお言葉に甘えた。

また次に会えるのは、いつやろう。

(翌朝、オランダ人のおじさんは飲み過ぎでお腹壊してた)

***

7:30 Villamayor de Monjardin出発
13:30 Torres del Río到着
6時間 19km 27,555歩
Albergue Pata de Oca泊


↓この日の動画はこちらから

8月初旬から夫婦でCamino de Santiago巡礼の旅に出ています。出費はできる限り少なくしている旅なので、サポートは有り難く旅の資金にさせていただきます。ですが、読んでくださったり反応をいただけるだけで、一緒に旅している気分になって十分エネルギーをいただいています。^^