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『閃光のハサウェイ』をこれから観る人のためのnote①

※このnoteは作品知識ゼロの人を対象として執筆しています。

なぜ書くのか

 先日、『閃光のハサウェイ』を観た。
 楽しかった。
 まるで子供の頃に戻ったように映像に見入った。
 ガンダムにあまり詳しくない自分でも、久しぶりに観るSFアニメにわくわくした。
 あまりに興奮したので、翌日もまた観た。
 そのあとも4回は観ている。

 そうなると当然、元となった作品を知りたくなってくる。
  『機動戦士ガンダム』とはなにか?
  なぜこれほどまで長く愛されているのか?
  なにがここまで人々を強く惹きつけるのか?
 調べないわけにはいかなかった。

 調べたのなら、やはり”note”にまとめておかなければならない。
 ガンダムに詳しくない私だからこそ、ここに書いておかなければならない。
 正直、現時点でもよくわかっていない点も多い。
 (それに放送リアルタイム世代というわけでもない)
 それでもまとめておくのは、私と同じような立場の人——ハサウェイに興味はあるもののガンダムの知識がないためにまだ視聴を躊躇している人——の一助になればと願うからだし、またこれほどの大作を世に送り出してくれたクリエイターたちに感謝を届けたいからでもある。

 決して”たかが子供向けアニメ”と侮れない、骨太な物語と重厚な歴史がそこにあった。



ガンダムのそもそも論

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 そもそもガンダムとはなにか?
 私も最近になって知ったのだが、実はガンダムにはいくつものパラレルワールドがある。というか、すべてのガンダム作品が同じ世界での出来事ではない
 たとえば、ガンダムSEEDの世界と、ガンダム00の世界は同じではない。まったくの別世界、別時間軸での物語なのである。よって原則的にそれら異世界での出来事につながりはない
 ただ一般的に「ガンダム」といえば、それは宇宙世紀(UC=Universal Century)という世界軸での話であるようだ。いわゆる初代ガンダムの世界であり、名前ぐらいは聞いたことがあるかもしれないアムロやシャアの生きている世界だ。(お台場に仁王立ちしていたあのガンダムの世界)
 それでこのnoteでは数あるガンダムシリーズの中でもっともメジャーな宇宙世紀のガンダムについて紹介するし、『閃光のハサウェイ』もこの世界上での物語となる。
 どこの世界でのガンダムの話なのか。
 まず最初にこの点をはっきりさせておかなければガンダムの話は進まない。

 世界が確定した。
 では次に時代をはっきりさせよう。
 宇宙世紀という歴史は、いま私たちが生きている世界よりは少し先の世界の歴史だ。近未来という表現がわかりやすいか。
 その時代では、地球の人口が増えすぎて、地球が大変なことになっている。
 食料危機、エネルギー不足、環境問題
 なかでも環境問題がもっとも深刻で、時の世界政府は増えすぎた人類を宇宙へ送り出すという力業で強引にこの危機を乗り越えようとした。
 宇宙移民政策(または棄民政策とも)と呼ばれたこの政策は、紆余曲折を経てなんとか実施され、ガンダムの物語が始まる宇宙歴79年にはなんと総人口の半数となる「55億人」を超える人が宇宙空間に浮かべられたスペース・コロニーで暮らすようになったとされる。

 そういう状況下にも関わらず、世界政府たる「地球連邦政府」は地球から宇宙を支配するという特権意識を強くし、宇宙での生活を強いられた移民者たちを力で抑圧するようになる。
 言論統制、反政府活動の武力鎮圧、有力者の暗殺、ほかいろいろ……。
 歴史は繰り返すというべきか、かつてイギリスがアメリカ植民地に対してしたのと同じことをやったのだ。
 当然、宇宙移民たちの反地球感情はエスカレートしていく。
 やりばのない憤懣は、延々と蓄積し、積もり積もったそれは移民たちを自治権の要求というカタチのある結果を求めるように突き動かす。
 そんなとき、ひとりのカリスマが現れたことをきっかけとして、この世界は激動を始めることになる。

 ガンダムとは、そういう荒んだ時代での物語なのだ。
 決してきらびやかな輝かしいキラキラした未来の物語ではない。
 人類がなんとかして生き延びようと、死に向かいつつある地球を延命させようとした結果、いろいろな不満や軋轢、憎しみや対立さえも生み出してしまった、そういう暗く息苦しい時代からガンダムは始まる。



1年も続いた新しい戦争

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 蓄積した不満という劇物に、カリスマ指導者という火種が加わって、ある日戦争は始まった。この日から1年以上の長きにわたって続くことになる辛く凄惨な”1年戦争”の始まりである。
 といってもこれは突発的に始まったというよりは、計画的に始められたとするほうが適切だろう。少なくとも宇宙移民サイドからしたら、この戦争は用意周到に準備された「十分に勝機ある戦争」だったのだ。
 一方、開戦の知らせを聞いた地球連邦政府首脳部はきっとほくそ笑んだことだろう。
 「この反乱を理由に、今までより厳格に反政府運動を弾圧できる」と。
 この小さな紛争が、のちのち連邦政府の体制を大きく揺るがす災禍になるとも知らずに。

 移民たちを蜂起にまで導いたカリスマはその名を”ジオン”といった。
 開戦時にはすでにこの世になかった彼の名を、彼に従う信奉者たちはその国家、そして軍の名とした。
 ガンダムを操縦する主人公アムロの敵となるジオン公国およびジオン軍である。

 開戦当初、地球に住むエリートたち、一部の富裕層たちは『政府軍の勝利』を疑いもしなかったという。
 「たかが地方コロニーの反乱」
 「そのコロニーの国力は連邦の30分の1」
 数の上ではその予想の通りであったろう。
 しかしジオン側は別に、やけくそになって無謀な戦争を仕掛けたわけではなかった。
 綿密な開戦準備に加え、ジオン軍にはとっておきの秘密兵器があったのだ。それもふたつも。
 そしてそれは、核兵器が戦争の本質を捻じ曲げてしまったように、戦争のカタチをまったく変えてしまうほど革新的なものだった。
 ふたつの新兵器をひっさげて、ジオンはまったく新しい戦争を始めたのだった。

 ところで”現代の戦闘の流れ”についてご存じだろうか?
 自身も専門外ではあるが、ここで現代の一般的な戦闘の流れに触れないわけにはいかない。
 これがわからなければ、ジオン軍のふたつの秘密兵器の凄さやそれがなぜ前準備なしの連邦軍にとって強烈な痛手となりえたのかがわからない。

 まず前提として現代の戦闘は「視界外戦闘」がベースとなっている。
 つまり、人の目には見えない遠距離の敵とのモニター越しの戦闘である。
 こうなると当然、戦闘は「電波」に大きく依拠することになる。
 そしてその電波はレーダーや通信、ミサイルの誘導という戦闘の全体にかかわってくる。

 たとえば近づいてきた戦闘機を攻撃したいとしよう。
 まず攻撃側はレーダーによって目標を探知し、電波通信によってその目標の位置情報を攻撃端末に伝える。
 次に攻撃端末(ここではミサイル発射装置とする)がその位置情報をもとにミサイルを発射。
 ミサイルは自律的に飛行し、目標にある程度接近すると最終的にミサイル自体に搭載されたミニレーダーを使って目標に対する衝突ルートを算出、接触・爆発となる。
 当然、攻撃された戦闘機側もミサイルから逃げ切るためにあらゆる手段を使う。
 ミサイルのレーダーを誤魔化すためにシステム的にも、機械的にも電波妨害をかける。
 なんとしてでも敵の電波を無効にしようとするのだ。

 現代の戦闘はそのすべての工程において「電波」が重要な役割を果たしている。というか電波が使えなければ「戦闘というレベルのものは起こらない」ほどだ。
 これが”現代の戦闘”である。
 そのまま”電波を使った戦闘”と言い換えてもいい。
 ということはもし電波が使えなくなったらどうなるのか?
 これがジオン軍のふたつの秘密兵器に対するヒントとなる。

 その秘密兵器。
 ひとつ目は”ミノフスキー粒子”である。
 この粒子は電波を強力に、そして広範囲にわたって妨害する性質を持っており、かつ簡単に入手できる。
 ”ミノフスキー粒子”が散布されるとその戦場においては「電波」が機能しなくなるため、もはやレーダーを使った戦闘行為は不可能になる。これはつまりありとあらゆるミサイルが使用不能になることに等しい。(赤外線誘導についてもミノフスキー粒子により妨害されるとの設定もある)
 そしてその事象は「戦闘は有視界戦闘に限られる」という状況を作り出す。
 電波が使えないから、敵も味方も、お互いに目と目を合わせて戦うしかないということだ。
 本来ならこの”粒子”の使用はジオン側にとっても「諸刃の剣」となるはずだった。自軍のミサイルシステムや火器管制も使えなくなるのだから。
 しかしながら、ジオンはふたつ目の秘密兵器でその不利を見事に克服する。
 登場によって戦争を完全に変容させてしまった巨大人型ロボットを、彼らは”モビルスーツ”と呼んだ。
 この新兵器はミノフスキー粒子環境下でこそその実力を発揮した。レーダーが使えず、また主力武器であったミサイルさえも封印することになった無力な連邦軍宇宙戦艦に、高速で接近して一撃を与え、迅速に離脱する。この一撃離脱戦法によって数の上では圧倒的だった連邦の艦隊は次々と宇宙を漂う塵となっていった。
 ようは[ミノフスキー粒子×モビルスーツ]の合わせ技によって、ジオン側は数で勝る連邦側に対して大勝利を収めたことになる。ミノフスキー粒子によってハイテク戦争が姿を消し、そのかわりにモビルスーツという巨大ロボットによる殴り合いが戦争の新しいカタチとなっていく。
 そんな情勢の中で、国力はなくとも、連邦に先んじてモビルスーツ開発を続けていたジオンに一日の長があったというわけだ。
 このジオンの歴史的大勝利に宇宙移民たちは歓喜し、地球に住む人々は動揺した。

 これを初戦として連邦とジオンの、1年にもわたって続く戦争が展開していくことになるのだが、そんな折、拡大を続ける戦火の中で、ひとりの天才少年の登場が戦争に負けつつあった連邦に希望を与えることになる。
 アムロ・レイという、そのたったひとりのために……。

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 うーん、気が付けば当初の構想よりうんと長いnoteになってしまった。
 ここらで一度このnoteを閉じることにしようと思う。
 まだ『閃光のハサウェイ』へと続く歴史の一部しか取り上げられていない。
 よってこのnoteは一連のシリーズのパート①となる。(まさかシリーズ記事になるとは!!)
 このnoteを読んで、少しでもガンダムの世界に興味の湧いた人は、ぜひもっともっと深いガンダムワールドを楽しんでみてほしい。
 「食わず嫌いは損のはじまり」。
 毛嫌いせずに純粋に童心に帰ってみることをお勧めする。

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