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写真集を読む:03 『花火』

さてさて、今週は久しぶりの体力仕事が入り熱中症になったり、謎の虫刺されに体力精神的にも疲れてしまったので日曜日はゆっくり写真集でも読んで体力回復に臨みます。
とは言いつつ、薬の副作用で午前中からウトウトし出し気付けば夕方…まぁ、こんな週末もたまにはいいでしょう。

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今回読んだ写真集は川内倫子さんの『花火』です。
いつもながら本の中の写真は載せないスタイルでいきます。
本を持っていない方は、川内倫子さんのホームページにて見てみてください。

この時期としては、とても合った一冊では無いでしょうか。
今年は見ることができない”これまで普通だと思っていた夏の花火にまつわる風景写真"。この文章を書いていて、写真集を読む時期にもよって写真への感じ方も変わるんだなぁと少し驚いています。
もちろん、2001年に発行された写真集なので上記に書いたことは僕の感想であって川内倫子さんのテーマではないです。

大阪、千葉、群馬、神奈川、東京……競馬場、温泉街、川べり…。
花火が打ち上げられるところならどこでも駆け巡った。
夏の夜風、土手を走る子どもの足音、夕立をよぶ雲、露店から漂うりんご飴の甘酸っぱい匂いと美しくそこはかとない悲しみ。いろとりどりの舞いに吸い寄せられ、まばたきをした瞬間、官能的で優雅な宴は終わりをつげる。
川内は花火の向こうに何を見たのだろうか。
         リトルモアブックス『花火』川内倫子写真集 詳細ページより

花火って自分の経験の中でしか印象に残っていなかったので、お祭りの会場で敷物を敷いて見るか家から遠くに見える花火をそれ単体だけで見るかくらいしか考えがありませんでした。でも、この写真集を読んで、いざ「花火の風景ってなんだっけ?」と考えてみると結構面白いことを思いつくようになりました。

写真集のなかに工事現場で働く人と警備員さんが遠くにある花火と一緒に映り込む一枚があります。
その写真を見た時、社会人として働き出した時に会社で残業しつつ花火の打ち上げた音を感じて”今年もお祭り行けなかったなぁ”と昔のことを思い出しました。おそらく綺麗な思い出ではない花火の記憶。
案外嫌な思い出もふと振り合えると悪くはないなと思ったり。
また、どこからか花火の音がすると思って当時の一人暮らしをしていたアパートから廊下に出たとき同じ棟に住む人々も出てきて"一緒に花火を見ていたなぁ"などなんだか思い出すといろんな花火の風景があったなと思い出してきました。

一昨年くらいから写真を撮るようになりました。
去年は花火の綺麗な撮り方を勉強して花火だけにクローズアップした写真を撮りました。初めて成功したのでとても満足はしていたんですが、これを何箇所もするとなかなか作業的になってしまい、何か心惹かれる何かを落としてしまったような気分になりました。
写真を撮っていると前を通る人が止まって写り込まないようにしてくれたりしたけど、写真の中に前に座っている人のシルエットが入ったり、周囲の建物が入り込んだりしたほうがどこの場所で撮ったとか色々思い出すことが増えて面白い写真だなぁと思うようになりました。これからはこんな感じで思い出を残していきたいな。

この写真集には、ろくに花火が写ってなくて花火に向かう人の写真があったり、ぶれた写真があったり、電柱が花火を中央から分断するような写真がたくさんあります。でも何か心地いい。ただのノルタルジーだけではない感じ。
様々な土地の様々な人々が感じた夏の花火写真を通して自分のこれまでの夏のひと時とこれからの夏のひと時を思い巡らせる面白い一冊だと思います。特に今年のこの状況、これまで普通に思っていた一瞬一瞬(良いことも失敗したことも)がとても大事でこれからも続けていきたいと考えさせられる一冊だと思います。

追記:もしかしたら今年の会場を明かさないゲリラ打ち上げ花火はよりこんな生活に寄り添った花火の写真が見られるのかもしれませんね。

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