悪の多様性【Wuah日報】
今年の夏の暑さはクレイジー。まさしくクレイジー気象!これまでの夏の暑さとはまったく違った。つまり、暑さにも色々種類があるってことが判明したってわけだ。
多分、寒さにも色んなタイプの寒さがあるのだろう。そして、悪にも色んなタイプの悪がいる。それをヒリつくスリルとともに分からせてくれたのが、小説「コールド・コールド・グラウンド」だ。
「コールド・コールド・グラウンド」は刑事ショーン・ダフィが活躍するミステリー小説だ。舞台は80年代北アイルランド。国の中ではカソリックとプロテスタントが武装し、ドンパチを繰り広げている。当然、死人も出る……っつーかある意味人を殺したきゃ暴動に乗じればいい。だから、あえて連続殺人なんざ起こす必要はない。……にもかかわらず、起きちゃうんだこれが!殺人事件!そうこなくっちゃミステリーじゃねえ。
発見されたのは、手を切断された死体。この、手を切断するってのはテロ組織で行う粛清の儀式! つまり、なんだ、その、結局武装組織が内ゲバでも起こしたのか?って話になりそうなんだけど、そうは問屋が卸さない。なんと、現場で発見された右手は別人のもの! つまり、連続殺人の可能性アリ! 加えて死体は死後にレイプされており、肛門からはオペラの楽譜が発見されるのだった…。もちろん、主人公のダフィはこの事件の捜査を開始する。
本作のように、主人公が警察や探偵だったりすると、事件の当事者じゃないので、主人公自体が危険な目に遭うことは少ない。なので、展開にスリルのないことが多いのだけど、本作はそんなことがない。だって、暴動の最中だもん!捜査してたらゲームじゃない方のRPGぶっ放されるかも…みたいな状態。そこここでドンパチ!死と隣り合わせ!スリル満載でドキドキしながら読み進められちゃう。これがまず、本作の魅力だろう。もちろん、大掛かりなドンパチもあって大興奮できちゃう。映像でも見てみたいと感じた次第だ。
そして、オレが本作から感じたさらなる魅力が、悪の描写だ。だって、暴動起きてるじゃん?やれレストラン爆破だー、やれ乱射だーみたいなことが起こりまくるのよ。それって最悪じゃない。人たくさん死ぬし。そういう大量死と比べた時に、1人ずつせこせこ血祭りに上げていく連続殺人犯ってどうなの?え?どうなのよ?と思うわけ。そこここで暴動引き起こしているクソみてえな悪を先にとっちめようぜ!と。
しかし、本作に描かれる悪はそんなに単純じゃなかった。
いや、暴動を引き起こし、迷惑しか起こさないクソみたいな悪もいる。ただ、確かに暴動は引き越しているが、一本の信念のようなものを持った悪もいる。そして、幾重もの詭弁でテメエをキレイに見せかけた、最悪の悪も。
悪もまた、多様。
暴動に巻き込まれて死ぬかもしれないスリルの中、悪の多様性を感じさせてくれる本作は、平成最後の今年に読むべき一冊だなと感じたぜ。
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