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アイ・ディドント・カムヒアー・トゥ・ダイ【Wuah日報】

昨日「カメラを止めるな!」を観て、スロースターターかつ最高な体験をしたオレなのだけど、実はその前日──つまり一昨日にもスロースターターかつ最高な体験をしていた。昨年購入して1年間「いつ観よう、いつ観よう」と先延ばしにしていた「デスキャンプ 屍獣たちの宴」をとうとう観たのだ!そして最高だった。先延ばし撲滅週間2018!

「デスキャンプ 屍獣たちの宴」は、昨年発売されたコミックガンマストリームの付録についていたDVD。日本未公開のホラー映画だ。

その内容は、田舎のキャンプ場候補地を開拓せんとするボランティア若者たちが次々死んでいく……というもの。聞いた瞬間、コーラを飲んだら当然ゲップが出るかのようにキャンプ場=ジェイソンだとか、田舎=レザーフェイスのように連想してしまいがち。だが本作に殺人鬼は登場しない。悪霊も登場しない。もちろん死神も登場しない。ただ、不幸が不幸を呼んで死んでいくのだ。

日々生きてるとさー、すげえ最悪なことが起きた時に限って、さらに最悪なことが発生する……なんてことないですかね?仕事で失敗して上司に絞られて、今日くらいは誰かに優しくしてほしい……って思ってたら彼女から電話かかってきて「もう限界!」とか言われて別れ話始まっちゃう……的な。あるでしょ?多分あるよ。だから昔の人は「泣きっ面に蜂」とかって言ったんだもん!

ただ本作は「泣きっ面に蜂」どころじゃねえ。「泣きっ面にチェーンソー」だ。

だから、イイ! この不幸の連鎖って、映画的なおもしろさも持っているけど、めちゃくちゃリアル。「あー。不幸な時って、不幸が重なるよね……」という現実的な感覚とリンクするのだ。しかも、殺人鬼とか悪霊とかいった、非現実的な存在は出てこない。まあ厳密に考えりゃ殺人鬼は現実にも存在するわけだけど、フツーは日常とは切り離して考えてるじゃん? そういう意味で殺人鬼は非日常的な存在だと思うのよ。でもこの作品に起きていることは、極めて日常的。「ちょっと飲み会ではしゃいでたら、腕が後ろの人に当たって、ぶん殴られて、当たり所が悪くて失明しました」……みたいなレベルでリアルなのだ。

だからこそ最高だ! コイツをビール片手に観てごらん? まあ自分に起きているたいていの不幸は流せる。「この映画ほどじゃなかった」って思えるから。まあ、すっげえ深刻な不幸は流せないと思うんだけど、そこまで深刻な不幸だったら映画観ている気持ちになれないと思うので、映画観る気分になれてるんだったら、たいていの不幸は流せると言っていいだろう。

ちなみに個人的なオススメは、中盤のチェーンソーを巡る不幸だ。人を救おうとして、逆に最悪の事態を引き起こすシーンが存在している。あのシーンは最高だ。笑えるんだけど、笑えない。だから怖い。

──物凄く追い詰められたことがある人は分かると思うけど、追い詰められてパニックになった時の人間って、普段とは全然違う発想をしてしまう。だって、人間には感情があるのだ。自分や自分の身内が危険にさらされた時、冷静ではいられなくなる。火事に巻き込まれ、自分の身内が火だるまになっている時、冷静に身内が助からないと判断して切り捨て、さっさと逃げられるだろうか。パニックになり、助けるべきか自分だけ逃げるべきかという迷いもなく──だ。パニックになったら、身内を助けようと水を探すかもしれない、でも水がないから愚かにも手近なもので扇ぐかもしれない。扇ぐ程度の風では逆に火の勢いを強めてしまうというのに!──要するに、パニックになった時の人間の行動は、冷静な人間から見れば阿呆ぅに見える。……でも、追い詰められ、パニックになった感覚を知る人間からすれば「だから怖い」。冷静な自分が想像する「パニックになった自分」なんて想像できないのだ。

笑えるんだけど、笑えない。だから怖いという中盤の怖さは、そういうパニックになった人間の悲劇/喜劇を物凄くよく描いていて、だからこそ最高だ。

観てよかった…!

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