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SEIKO power design project 「REBIRTH」

12/21より、原宿のSeiko Seedにてデザイン展「REBIRTH」が開催されている。

開催直後に一度見学したのだが、デザイナーさん自らプロダクトについて説明していただける「ギャラリーツアー」に改めて参加させていただいたのでまとめたいと思う。

ちなみにギャラリーツアーは日曜限定で、トップに貼ってあるサイトからウェブ予約が必要となるので、
気になっているかたはお早めに。

まずは簡単にpower design projectについて。
2001年から2009年まで行われていた社内プロジェクトで、13年振りの復活となるらしい。
毎回テーマが決められており、今回は「転生」REBIRTHだ。

転生ということで、それぞれの時計には元となったモデルが存在し、
それをデザイナーさんの思い思いの作品に"転生"させている。

後ほどまた説明するが、例えば「ツナ缶」の愛称でお馴染みのダイバーズウォッチ、
これを元に"転生"した作品が2つあるのだが、
デザイナーのコンセプトが違えば出来上がる作品もまったく違うものになる。

ギャラリーツアーでは完成に至るまでのデザイナーさんの考え方を直に聞くことができ、とても貴重な体験となった。

総数7つのプロダクトについてひとつひとつ解説をいただいたのだが、
すべてを記事にしたためるには膨大な文量になってしまうため、
個々の詳細は特設サイトから確認してほしい。

ここでは、実際にお会いして話を聞くことができたお二方の作品について触れていこう。

ギャラリーツアーは12名が定員で、
4名ずつ、3組に分かれてそれぞれにデザイナーさんがひとり引率してくれる。

今回わたしを引率してくださったのは、
"ADVENTURE KIDS Watch"
をデザインされた檜林さん。


ADVENTURE KIDS Watch

檜林さん自身がデザインしたとあって、かなり深掘りした話を聞くことができた。

ベースとなったのは檜林さんが着けているマリーンマスター、通称"ツナ缶"で、
お子さんが「ぼくもつけたい!」と言ったことがキッカケ。

本格ダイバーズウォッチとして印象的な外胴プロテクターのデザインはそのままに、
シリコン製のカバーで覆うことで、
元気いっぱい遊んでも壊れず、金属部が露出していないので怪我を防止し、
簡単に着脱できるジャバラのようなバンドで幼い子でも安心して使える時計だ。
 

他の6つのプロダクトと異なる点。
それは、"誰のための"時計なのか、ハッキリしていることだ。

デザインのひとつひとつから父親としての愛情をひしひしと感じる。
そう、これは明確に檜林さんのお子さんを思って作られた時計なのだ。

わたしは子供がいないのでそういった目線は持っていなかったし、
自分が小さかった頃の感覚も忘れてしまっているので解説いただくまでは気付けなかった。

未就学児ほどの子供には、「何時まで」とか「あと何分まで」と言っても難しい。

そういえばわたしも小さい頃は17時に"夕焼けこやけ"が流れたら家に帰っていたっけ。

そんな、まだ幼い子でも回転ベゼルで"約束タイマー"をセットして、
「ロケットが星に着くまで~、」
と視覚的にわかるように伝えることができる。

ピンクのモデルは「ちょうちょがお花に止まるまで~、」
黄色のモデルは「恐竜さんがお肉を見つけるまで~、」
と、子供がワクワクするような可愛らしいバリエーションも。

時計自体についてだが、
"約束タイマー"のため回転ベゼルはカウントダウン、分針の対象側にロケットの針がつき、分針と同期して動く。

中心に雫のような形をした金属のパーツがついているが、これが秒針だ。
時分針、そしてロケットを目立たせるために小さく、しかし時計が"動いている"とわかるように。

幼い子供には同じような長さの針がついていると混乱してしまうかもしれないし、
大人ほど細かく秒を気にすることもない。

ケースは20気圧防水なので水遊びもへっちゃら。
シリコンケースから取り外して丸洗いできるので、たくさん遊んで汚れてもお手入れ簡単。

ジャバラのようなブレスはコマを追加できるので子供の成長に合わせて長く使っていける。

はじめは時間を読めない幼い子が、この時計と共に成長して時間を読めるようになる。
そんな想像をして微笑ましくなった。

そして大きくなったら、お父さんと同じ時計を着ける。

小さな時計に、たくさんの愛情と希望が感じられる素敵なプロダクトだと感じた。


ちなみに檜林さんは普段主にGSのデザインを担当されており、
Evolution 9シリーズのGMTは檜林さんによるもの。

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そしてもうひと方、PUT ON TIMEをデザインされた内浦さんともお話しできた。

PUT ON TIME

こちらも、ベースとなったのはADVENTURE KIDS WATCHと同じく"ツナ缶"だ。
デザイナーによってまったく異なる「転生」をしていることが面白い。

まるでボタンのような形状には、そもそも
「時計は腕に着けるもの」
という概念すら覆す思いがつまっている。

風防は滑らかな凹形状に仕上げられており、ケースと相まってボタンのような触り心地に。
バングルに着けて腕に巻くもよし、
服や防止に着けてもよし。
身に着ける人の個性も表現できる、お洒落なプロダクト。

そう、内浦さんはとってもお洒落な方なのだ。笑


展示ブースの時計を乗せている生地は、内浦さんが古着屋でチョイスしたもの。

服を着替えるように、気軽に時計を、お洒落を楽しめるような。

この小ささなのに自動巻きであることも拘りが感じられる。

これはわたしの感覚ではあるが、
クォーツの規則的な、機械的な動きには冷たい印象を受ける。
対して機械式の細かい動きには生命感というか、温もりを感じる。
(機械式も規則的でよっぽど機械的なのだが、不思議…)

まさしく身を包む衣服の温もりと同じように調和している。

現実的な話をすると、業務上腕時計を着けられない、または適さない方にも有用だ。

わたしも仕事上で腕一本入るかどうか、みたいなすき間に手を捩じ込んでの作業など、
腕時計を外さなければ厳しい場面も度々ある。
しかし時間管理は最重要のため、カバーロールにSEIKOのナースウォッチを着けている。
腕に時計がなくとも常に胸元を見ればナースウォッチで時間を確認できる。

それと同じような使い方もPUT ON TIMEなら可能だ。

むしろ使い方次第でもっと便利になる。

ツールバッグに着けたり、ラスターケースに着けたりと…

仕事でなくとも、ペンケースに着けてデスクに置くだけでもワクワクしそうだ。


ちなみに内浦さんは普段主にプロスペックスのデザインを担当されており、
昨年大ヒットでずっと入手困難だったスピードタイマーのデザインをされた方。


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このように、デザイナーさんによってさまざまな思いが詰まったプロダクトを実際に手にとって楽しめる、とても面白い展示会だ。
ここでは語り尽くせないため、ぜひその目で、手で感じてほしい。


余談だがはじめにこの展示会を知ったとき、一番に心を奪われたプロダクトが Radiant Timeだ。

時計好きならそうなるのも仕方ない。きっとそう。

SEIKOの仕上げの美しさには感動を覚えるが、これはその最たる技術力の結晶といっても過言ではない。

緻密に計算されたデザインを、歪みなく鏡のように仕上げられた20もの面で構成。
セイコースタイルを突き詰めたように、ほぼ曲面が存在しないのだ。


元となったのは4502-7000、3代目のキングセイコー。
手巻き式10振動というハイビートのキャリバー4502Aを搭載、わたしはビンテージセイコーの最高傑作だと思っている。
もちろん一番好きなビンテージセイコーは45KSだ。


並べてみた。

左はわたしの45KS、右がRadiant Time。

並べてみるとたしかに45KSを感じられる。

鏡面の仕上げが凄すぎて写真では上手く撮れない…!

実際に腕に乗せることができる!

腕を動かすたびにキラキラと輝く様は本当に美しい。
動画であればその凄さが伝わるのだが…
これは一見の価値ありありだ。


時計好き、デザイン好きはもちろん、
そうでなくとも原宿を訪れたら気軽に見ることができるイベントなので、是非。


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