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衆院選 各党のキャッチコピー

~ コピーライターが分析する政党の深層心理 ~

No.013|B.コピーレビュー|B-004

2021年衆院選が実施


4年ぶりの衆院選

2021年10月19日(火)公示、同31日(日)投票という日程で行われる、第49回衆議院議員総選挙(衆院選)。前回の衆院選が2017年10月ですから、今回の選挙は4年ぶりの衆院選となります。


選挙といえばマニフェスト

選挙といえば、支持政党だ、政策だ、保守だ、改革だなんてワードが飛び交いそうですが、最近ではマニフェストなんて言葉もあわせて聞かれるようになりました。ご承知のとおり、マニフェスト、すなわち選挙公約については、それぞれの党が、それぞれの分野で、それぞれの政策を掲げています。


各党が掲げるキャッチコピー

だいたいのマニフェストは、政策も多岐にわたってボリューミー。そんなフクザツな内容を、複数の政党が、それぞれ挙げるワケですから、有権者に十分理解してもらう工夫は不可欠です。そこで各党が掲げるのが、一言でわかりやすく簡潔にアピールできるうたい文句、いわゆる党のキャッチコピーです。


政治に求められる言葉の力

企業案件、広告販促、ブランディングといった、当方が携わる案件とは異なる政治の分野においても、コピーライティングの力は求められます。というか、今という時代こそ言葉の力、コピーライティングの力が勝敗を分かつ、といっても過言ではないのかもしれません。


各党のキャッチコピーを分析

10月19日(火)の公示を経て、各党の公約とともにキャッチコピーも出そろいました。まあご想像のとおりで恐縮ですが、せっかくコピーライターなので、コピーライティングの視点で、もちろんフラット(公平)に、各党のキャッチコピーを分析してみようかと。何の参考になるのかは、アレですけど。

※お断り
本稿では、特定政党の支持や不支持といった扇動表明、各党マニフェストや政策への賛否是非、政治における主義主張、各党コピーの良し悪しを語るワケではないので、どーぞご安心ください。


各党のキャッチコピー一覧

自由民主党:新しい時代を皆さんと ともに。

立憲民主党:変えよう。

公明党:日本再生へ 新たな挑戦。

日本共産党:なにより、いのち。ぶれずに、つらぬく

日本維新の会:身を切る改革、実行中。

国民民主党:動け、日本。

れいわ新選組:何があっても心配するな。

社民党:生存のための政権交代

NHK党:NHKをぶっ壊す

※出典:各政党の公式サイトより/記載順:NHK特設サイト通信社などの記載を参考


自由民主党のキャッチコピー

新しい時代を皆さんと ともに。


①漢字表記:皆

②ひらがな表記:ともに

③文中の句読点:なし(と/ともにの間に半角アキ)

④文末の句点:あり

⑤文末トーン:助詞止め(~ともに)

⑥印象(読後感):(ともにという)共同、対話、支え合い、分かち合い

⑦新/変/代/改:新しい

⑧目的/手段:(皆さんと ともには)「幸せになるため」と捉えれば目的?


立憲民主党のキャッチコピー

変えよう。


①漢字表記:とくに言及なし

②ひらがな表記:とくに言及なし

③文中の句読点:なし

④文末の句点:あり

⑤文末トーン:勧誘の助動詞止め(~よう)

⑥印象(読後感):(変えようという)喚起、対抗、変革

⑦新/変/代/改:変えよう

⑧目的/手段:(変えることで)「幸せになる」と捉えれば手段?


公明党のキャッチコピー

日本再生へ 新たな挑戦。


①漢字表記:とくに言及なし

②ひらがな表記:とくに言及なし

③文中の句読点:なし(へ/新たなの間に半角アキ)

④文末の句点:あり

⑤文末トーン:体言止め(~挑戦)

⑥印象(読後感):(挑戦するという)コミットメント

⑦新/変/代/改:新たな

⑧目的/手段:(日本再生という)「幸せのため」と捉えれば目的?


日本共産党のキャッチコピー

なにより、いのち。ぶれずに、つらぬく


①漢字表記:なし

②ひらがな表記:なに/いのち/ぶれず/つらぬく(すべてひらがな)

③文中の句読点:あり(句読点ともに)

④文末の句点:なし

⑤文末トーン:用言(動詞)止め(~つらぬく)

⑥印象(読後感):(ぶれずに、つらぬくという)姿勢、信念

⑦新/変/代/改:新たな

⑧目的/手段:(いのちのためにつらぬくことで)「幸せになる」と捉えれば目的<手段?


日本維新の会のキャッチコピー

身を切る改革、実行中。


①漢字表記:切

②ひらがな表記:とくに言及なし

③文中の句読点:あり(句点)

④文末の句点:あり

⑤文末トーン:進行形(~中)

⑥印象(読後感):(実行中という)行動力、推進力、進行感

⑦新/変/代/改:改革

⑧目的/手段:(改革で)「幸せになる」と捉えれば手段?


国民民主党キャッチコピー

動け、日本。


①漢字表記:とくに言及なし

②ひらがな表記:とくに言及なし

③文中の句読点:あり(句点)

④文末の句点:あり

⑤文末トーン:体言止め(~日本)

⑥印象(読後感):(動けという命令形から受ける)信念、本気

⑦新/変/代/改:とくに言及なし

⑧目的/手段:(動くことで)「幸せになる」と捉えれば手段?


れいわ新選組のキャッチコピー

何があっても心配するな。


①漢字表記:何

②ひらがな表記:とくに言及なし

③文中の句読点:なし

④文末の句点:あり

⑤文末トーン:打消しの命令形(~するな)

⑥印象(読後感):(心配するなという打消しの命令形から受ける)救済、援助、保護

⑦新/変/代/改:とくに言及なし

⑧目的/手段:(心配をなくすことで)「幸せになる」と捉えれば手段?


社民党のキャッチコピー

生存のための政権交代


①漢字表記:とくに言及なし

②ひらがな表記:ため

③文中の句読点:なし

④文末の句点:なし

⑤文末トーン:体言止め(~交代)

⑥印象(読後感):(政権交代という)コミットメント

⑦新/変/代/改:交代

⑧目的/手段:(生存のための政権交代で)「幸せになる」と捉えれば目的<手段?


NHK党のキャッチコピー

NHKをぶっ壊す


①漢字表記:壊

②ひらがな表記:とくに言及なし

③文中の句読点:なし

④文末の句点:なし

⑤文末トーン:用言(動詞)止め(~壊す)

⑥印象(読後感):(既成を壊すという)コミットメント

⑦新/変/代/改:とくに言及なし

⑧目的/手段:(壊すことで)「幸せになる」と捉えれば手段?


各党のキャッチコピーの分析

(印象や所感的な箇所はあくまでイチコピーライターの感覚値です)


①漢字表記

漢字表記ができるのであれば、まずは漢字が基本。狙いや効果としては、誠実、真摯、賢明、丁寧など。「皆さん」(自民)、「切る」(維新)、「何」(れいわ)は、各党そうした狙いがあるかも。なお、商業コピーでは、これらはひらがなで表記することも多い。


②ひらがな表記

漢字表記もできるが、あえてひらがな表記にする場合がポイント。狙いや効果としては、見(読み)やすさ、平易さ、わかりやすさ、やさしさなど。「ともに」(自民)や「なにより~つらぬく」(共産)は、そうした狙いがあるかも。「ため」(社民)は、商業コピーでもひらがなで表記することは多い。


③文中の句読点

狙いや効果としては、A.区切り/グルーピング、B.見(読み)やすさ、C.間(ま)/余韻、D.リズムなど。「~皆さんと」(自民)と「~再生へ」(公明)はB.の狙いか、「~」の箇所は読点に代えて半角を採用。「~改革、」(維新)や「動け、」(国民)の狙いはC.か。「なにより、~、つらぬく」(共産)は、A.B.C.D.のいずれも狙いか、すべての効果があると思われる。


④文末の句点

用法的には、文の終わりに打つ以外大きな意味はなく、好みに近い。ただし「」()内、記号、箇条書き、スペックなどの「文末に打たない」というルールに準じるのが自然。あえて狙いや効果を挙げるならフォント、デザイン、リズムによる。自民、立民、公明、維新、国民、れいわが文末の句点を採用。


⑤文末トーン

狙いや効果としては、表現、文脈、対象、媒体などのケースによる。よって表現形式(書式、文法、スタイル)として、助詞止め(自民)、勧誘の助動詞止め(立民)、体言止め(公明/国民/社民)、用言(動詞)止め(共産/N裁)、進行形(維新)、打消しの命令形(れいわ)と、各党それぞれ採用。


⑥印象(読後感)

狙いや効果としては主観や客観、読み手や受け手各人の印象による。よってあくまで当方の読後感としては、共同(自民)、喚起(立民)、コミットメント(公明/社民/N裁)、姿勢(共産)、行動力(維新)、信念(国民)、救済(れいわ)と、各党それぞれの印象。


⑦新/変/代/改

与党と野党、既成と新規、保守と改革といった観点から、「新/変/代/改」といったキーワードに注目。使用状況としては、新(自民/公明)、変(立民)、改(維新)、代(社民)、なし(命:共産/動:国民/何:れいわ/壊:N裁)と、各党それぞれがこれらのキーワードを採用、あるいは不採用。


⑧目的/手段

当方も携わってきた経営理念、ビジョン、ミッション、コミットなど、企業理念でも重要視される視点。「幸せになる」を例に、「ため」なら目的、「~で」なら手段と判別。あくまで当方の感覚としては、目的(自民/公明)、やや手段(共産/社民)、手段(立民/維新/国民/れいわ/N裁)と、それぞれの印象。


【総評】与党と野党のキャッチコピーの違い


与党は目的、野党は手段

キャッチコピーからだけなので分析といえるほどでもなくアレですが、今回の衆院選の争点の一つが政権選択ともいわれるなか、⑧目的/手段の分析で「与党が目的」「野党が手段」(やや手段も含む)とキレイに分かれたのがちょっと印象的です、って政権側とそうでない側とでは、まあ当然かもですが。


たった数文字に込めた狙い

コピーライティングの視点で分析した各党のキャッチコピー。簡潔に書くことが鉄則のひとつとはいえ、たった数文字のキャッチコピーであっても、狙い、効果、印象、意図など、思いのほか語れるポイントがたくさんあるということ、ちょっとでも知っていただける機会になったなら、これ幸甚です。


企業も政党もキャッチコピーは同じ

たくさんの想いを、たくさんの視点で、たくさん割愛して、それでもたくさん伝わるよう、極限まで短く書く。そういう意味では、政党も、企業も、キャッチコピーへのアプローチは同じかもしれません。


先人が勝ち取った選挙権

先人が勝ち取ってきた大切な権利である選挙権。「広告でも政府の放送でもなく~」と冒頭で語りかける、著名人の自主制作プロジェクト「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」という動画も話題になっている(小欄開始時の趣意でも宣言したとおり、利己にあたる広告ではない)ので、以下に共有します。

衆院選投票日は10月31日(日)。ぜひ当日は投票所に足を運び、大切な一票を投じましょう。

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(了)

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