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一番かんたんな企業理念の書き方

~ CIの根幹となる企業理念のフォーマット ~

No.0010|D.案件事例|D-002

着実に変化するニューノーマルな社会

直近の小欄、コロナ禍の話題から触れていくパターンが増え、本稿もまたアレなので嘆息モノなのですが、まだまだ気を抜けない状況が続いています。

時短営業を強いられる飲食業界では、持ち帰り対応やUber Eatsのような宅配サービスなど、ウィズコロナを生き抜くニューノーマルな取り組みで難局を乗り切る努力を続けながらも、アフターコロナを見すえた新しいマーケティング手法への関心も高まるなど、社会は着実に変化しています。

クリエイティブ業界のニューノーマル事情

一方、ブランディングやセールスプロモーションなど、広告や販促に関わるクリエイティブ業界はといえば、コロナ禍以前、いわゆるビフォーコロナから、クラウドだ、リモートだ、オンラインだと、働き方は今どきなスタイルがフツーだったので、あまり影響を受けていないという面は、確かにあります。


当方のようなコピーライティングの生業でも、まあ案件にもよりますが、リサーチや会議はオンラインでもOK、外出や人との会合がなくても支障は軽微、業務面のストレスは、ほとんどないといえます。


ところが、撮影・イベント・モノ・内外装のデザインなど、物理的な現物のやりとりが生じる業種ではなかなかオンラインだけでというワケにもいかず、そのため案件が急減なんて話は少なくありません。

コピーライターへの案件依頼が○○した意外な分野

で、当方の案件具合はといえば、影響がないどころかこれが大アリでして、とはいえ実際ですね、発注は急減↓ではなくて急増↑という具合に激変しまして、このご時世、誠にありがたいかぎりなのです。


そう、何を隠そう、このコロナ禍によって案件依頼が急増した分野。それは「企業理念」の案件です。


しかし何でまた、企業理念の案件が急増したのか。想像するに、このコロナ禍によって、働く場所、働き方、商品、サービス、体制、社内外のコミュニケーショントーンにいたるまで、あらゆる面での見直しを迫られた企業は決して少なくない、という昨今の現状が挙げられます。


そうした見直しの対象はやがて、自社の理念にまで及ぶのは自然な流れで、コロナ禍を踏まえた企業理念の再設計や最適化などブランディングファーストな経営戦略の必要性に多くの企業が気づきはじめたウンヌンと肩肘張ってカタク考えなくとも、現場のシャチョーさんやおエライさんの間では、たぶん、

「いろいろコロナ対策してきたけど、そもそも今までの考え方でいいんだっけ、いいワケないわな」


と、自社の理念に対して違和感を覚えたり、見直しの必要性に気づきはじめたりして、たぶん、

「企業理念ってどう書けばいいんだっけ(書いたっけ)、あ。コピーライターなら書けんじゃね?」


みたいな一部の企業が、それまで時間や予算を割いていた広告・販促・マーケティング・開発などよりも優先すべき課題と考え、当方のもとへと相談が巡ってきたのではなかろーか、と推測しています。

そもそもコピーライターは企業理念を書けるのか?


「企業理念」というと、CI(コーポレートアイデンティティ)なんて用語が思い出されますけど、

CI(シーアイ)

企業の個性を明確にして企業イメージの統一を図り、社の内外に認識させること。コーポレートアイデンティティー。

デジタル大辞泉(小学館) 

とあるとおり、CIとは「企業理念もひっくるめた」イメージやデザインなど戦略全般を指すのが一般的なので、本稿では企業理念を「CIのイチ要素であり、根幹となるモノ」的な扱いでとらえていきます。


上記をゆるーく前提としながらも、一般的に「企業理念」っつうモンは、まあぶっちゃけ「文章」ですから、コピーライターとしてというか、当方としては「材料と要望が提供されるのであれば、どんな分野であっても書けなければならない」というのが、基本スタンスではあります。


ちなみに、コピーライティングにおける「書く」という作業は、結果としての成果物における工程の一部で、そこまでの意図・考え方・論理のプロセス、まあ言い方は何でもいいんですけど、要は「ロジック」こそ重要で、そんな意味もひっくるめ「ワーディング」と称すのが、当方はしっくりきています。


まさに、企業理念は書かれた文章同様ロジックこそ重要で、コピーライターの当方としては企業理念こそコピーライティングの真髄、「ワーディング」の最たる領域という感覚ですが、社内完結できない(大概できない)際の相談先として挙がるのは、代理店コンサル士業者あたりが相場のようです。


残念ですけど「企業理念をコピーライターに依頼」とはならず、先の候補先の中に入りさえもしないのが現状のようでして。そこで小欄、これまで手がけたノウハウや事例を凝縮し、誰もがかんたんに試すことができる「企業理念の書き方」を、コピーライターらしい視点で、体系的に整理してみました。


企業理念を新規で書くときはもちろん、既存の見直しや添削にも役立つこと、必至です(たぶん)。

※以降は過去に関わった案件・事例などを参考とする当方解釈であり、断定するものではありません。
※あくまで一例、考え方のひとつであり、世のさまざまな手法・解釈を否定するものではありません。
※「結論を急ぐ方」「ネタバレOKの方」は、サマリーながら本稿末筆スライドデータを参照ください。


「企業理念」っぽいまぎらわしい文言

あらためて、本稿では一連を「企業理念」としてラスボス的に崇めて話を進めますが、この企業理念の周辺(謎)には、先述のCI(コーポレートアイデンティティ)以外にも、それっぽいまぎらわしい文言(以降「項目」)が、ワンサカからみついてきます。まずは、それらをざっと列挙してみましょう。

「企業理念」っぽい項目

・存在意義
・使命
・ミッション
・哲学
・フィロソフィー
・ビジョン
・目標
・ゴール
・規範
・ポリシー
・社是
・社訓
・モットー
・信念
・精神
・倫理
・クレド などなど


どーでしょう。どれもそれっぽいまぎらわしい項目ばかりです。これらは「企業理念」における数々の案件現場で、関係者を戸惑わせてきたやっかいな項目たちでして、イマイチ違いがわかりません。


これら項目に対して関係者間で認識がちょっとでもズレると、ただでさえ混乱しやすい理念が、打ち合わせを重ねるごとにますますカオスっていき、間違いなく抜け出せなくなります、当方の経験上。


そんなカオスのトラップにハマらないためにも、以降、企業理念というラスボスに向かって、3つのステップでアプローチしてみましょう。

ステップ1:概念の共通化

1-1)グルーピング

まず前提として、各項目の考え方(概念)の整理・共通化から。先に挙げられた各項目は、「存在意義 ≒ バリュー」「使命 ≒ ミッション」「哲学 ≒ フィロソフィ」「世界観 ≒ ビジョン」のように、実は、同義の項目として、漢字/カナにグルーピングできる。

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1-2)ヒエラルキー(上位/下位)

漢字/カナでグルーピングすることで項目数自体が減るだけでなく、たとえば「『使命(ミッション)』の配下に、『規範(ポリシー)』が位置づけられる」というように、字義的な意味合いからある程度は「上位」「下位」と分類できることがわかる(各社それぞれ事情が違うので感覚的でも可)。

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1-3)ヒエラルキー(中位)

上位」「下位」に分類した項目とは別な視点で、業務内容・業務範囲・業務対象・マーケット・ターゲットという項目を、(あまり深くは考えず)「中位」のヒエラルキーに分類する。なぜならこれらは、重要でありながら「企業理念」の項目として見落とされがちで、ヌケや失念を避けるためによる。

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1-4)概念の種別

すると、実は、上位は「目的」、下位は「方針」という考え方=概念であることがわかる。なお、「当社の特長」「わが社のウリ」のような、いわゆる「強み」は、下位に見つけられることが多いので、ゆるーく「方針」(と同類)として、ひとまずとらえておく。

このように分類することで、実は、中位は「手段」(業務内容)、「対象」(業務範囲・業務対象・マーケット・ターゲット)という考え方=概念であることも、わかってくる。

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ちなみに、仮に、前述1-2)ヒエラルキー(上位/下位)の分類の際に挙げられなかった項目、たとえば「約束(プロミス)」のような項目が出現し、その分類に悩んだ場合は、それは「目的のためなのか」、それとも「(目的のための)方針なのか」と考えると、上位/下位に分類しやすくなる。


1-5)全体構造

ここまでを、スターバックスを例にざっくり当てはめてみると、下位から上位へと向かうように(よりわかりやすく理解するするため、「強み」「対象」はこの際ちょっとだけ忘れながら)、

↓お客様中心のValuesという「方針」がともなった、
↓コーヒーという「手段」で、
↓人々の心を豊かで活力あるものにするという「目的」を果たす。

という構造になることが見えてくる。

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1-6)ビジネスラベル

ここまでの概念や構造が整理できてはじめて、ビジネスの現場で使われる本来的な項目、いわゆる、

企業理念(企業価値)
事業領域(事業ドメイン)
企業指針(企業姿勢)

というビジネスラベルが、「上位」「中位」「下位」それぞれに貼り付けられることがわかってくる。こうすることで、やっとラスボスたる「企業理念」が上位に降臨し、ラスボスたる所以が理解できる。

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つまり、整理すると、

上位 → 企業理念 ⇒ 目的
中位 → 事業領域 ⇒ 手段
下位 → 企業指針 ⇒ 方針

という基本構造となる(「対象」「強み」は、ちょっとだけ置いといて)。


1-7)自社キーワードの抽出

以上を前提に、「目的」「手段」「方針」という、いたって平易な概念で、自社のキーワードを抽出・分類する。もし、抽出・分類に困ったら、「対象」「強み」にも意識を広げて、あらためてキーワードを抽出・分類してみる。


なお、抽出の際は、

・「目的」なら = 「~のため
・「手段」なら = 「~で」「~によって
・「方針」なら = 「~がともなった

と、それぞれを語尾につけると、より分類しやすくなる。

さらに、その際は、たとえば「目的」のキーワードを抽出する場合、

・「笑顔」(のため)= 1ワード
・「子どもの」「笑顔」(のため)= 2ワード
・「世界の」「子どもの」「笑顔」(のため)= 3ワード

のように、できるかぎりキーワードの語句数は1~3ワード以内を目指す。なぜなら、語句数が3ワード以上の語群になってくると、たとえば、

・「世界の」「子どもを」「笑顔にする」「キレイな」「水」(のため)
= 5ワード

というように、前半の「世界の子どもを笑顔」の3ワードまでなら、これらを一括りに「目的」として分類できなくもないが、後半の「キレイな水」の2ワードまで含めてしまうと、

・キレイ=「方針」または「強み
・水=「手段」または「対象

というように、「目的」以外の項目が含まれやすくなってしまうため、できるかぎり3ワード以内での抽出を試みる。そうすることで、企業理念はより整理しやすく、より書きやすくなってくる。

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どうでしょう、「ステップ1」の7つの考え方について。こうして書き出すと長くなってしまいアレですが、実際の現場では数ページの手短な説明で済むんですけど、なんせ当方ごときが行き着いた考え方、「目的手段方針で考えるのね、ウンわかるよ」という具合に、周囲から容易に理解されています。

ステップ2:企業理念の文章化

2-1)3つの概念による文章化

3つの概念、すなわち「目的」「手段」「方針」ごとに自社キーワードを抽出・分類したら、それぞれの概念ごとに、重複文言のマージ、よりよい文言の絞り込みなど「選別」を行う。選別の視点は、もう各社それぞれなのでここでは割愛し、ステップ2では選別した文言を使っていよいよ文章化してみる。


文章化はいたってシンプルで、ヒエラルキーの下位から上位に向かって、

ほげほげな「方針」の
ほげほげの「手段」で
ほげほげの「目的」を達成する

という、3つの概念の「ほげほげ」を埋めるように文章化する。つまり、ステップ1で抽出・分類したキーワードとは、この「ほげほげ」に当てはまる「最適な文言を選別するためのプロセス」となる。

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2-2)自問自答による文章化

もし、2-1)の手法で文章化がイマイチ上手くできなければ、「自問自答」の形式で文章化してみる。やり方としては、

<自問>:(私たちは~/私たちの~)
・どんなこと(目的)の実現・達成で社会に貢献するの?
・存在意義とは?

という、いずれかの問いに対して、

<自答>:(私たちは~)
ほげほげな「方針」の
ほげほげの「手段」で
ほげほげの「目的」を達成する(ことで社会に貢献する)こと

と、こちらも同様に、3つの概念の「ほげほげ」をそれぞれ埋めた答えになるよう、文章化してみる。

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ステップ3:企業理念の基本構文

3-1)理想的な企業理念

企業理念を文章化するための基本構文。つまりそれは「方針」「手段」「目的」という3つの概念を含めながら、文頭は「私たちは~」から始まり、文末は「~で社会に貢献します」というように、

私たちは
ほげほげな方針
ほげほげの手段
ほげほげの目的を果たすことで
社会に貢献します


という構文に当てはまるか、あるいは近しくなっている文章が、最も理想的でわかりやすい企業理念といえる。なぜなら、このような構文で文章化することによって、

・株主・協力会社・社員・地域といったステークホルダー
・取引先・顧客・消費者といったカスタマーやエンドユーザー
・社会・世界・地球(ときには銀河や宇宙までをも)

という「対象」に対して、

私たちは、ほげほげの目的を達成することで、社会に貢献します。


と、「目的」だけを抜き出しても、企業理念として成立する文章になるというのがその理由。このような構図がわかると、「方針」が「強み」に代わり得る(近しい)ことも、「対象」(マーケット・ターゲット)が、場合によっては含まれることも理解できる。


3-2)企業理念の定義

では、企業理念の定義を結論づけてみましょう。こげんな感じです。

企業理念とは、
企業が社内外も含めた社会に対し、
どんな目的を果たすことで社会貢献するのかということを、
誓約・宣言・コミットとして言語化した、
企業の存在価値や理想となる考えの根幹。

というのが、企業理念の定義です。あ。もちろん、あくまで当方ごときが考えるにいたった定義なんですけど、実際どの案件現場でもこの定義が揺らぐことはおおよそなく、かつこの定義・手法をもとに整理・文章化差し上げた企業理念が採用されてきたので、まあ大きくは間違っていないと思われます。

日米企業でみる企業理念の因数分解

ということで、以降は、日米を代表する大手企業を例に挙げて、

・下位 > 方針
・下位 > 強み
・中位 > 手段
・中位 > 対象
・上位 > 目的

という概念をベースに、「企業理念」を因数分解してみましょう。

※五十音順。
※引用はあくまで企業理念に類すると思われる一文、または一部の抜粋。
※考察はあくまで当方視点による所感で、断定するものではありません。


┗ ➊ Amazon

地球上で最もお客様を大切にする企業を目指しています
・下位 > 方針:大切にする(※1)
・下位 > 強み:地球上で最も(※2)
・中位 > 手段:───
・中位 > 対象:お客様(※3)
・上位 > 目的:───

※1:当社が何よりも重んじる「方針」とみなせるかも
※2:当社が何よりも自負する「強み」とみなせるかも
※3:(当然ながら)マーケット的には「対象」とみなせるかも


┗ ➋ 伊藤忠グループ 

「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」
(略)
「三方よし」は、世の中に善き循環を生み出し、
持続可能な社会に貢献する伊藤忠の目指す商いの心です。
・下位 > 方針:(※1)
・下位 > 強み:───
・中位 > 手段:商い(※2)
・中位 > 対象:売り手買い手世間三方世の中(※3)
・上位 > 目的:よし善き循環を生み出し持続可能な社会に貢献する(※4)

※1:当社が何よりも重んじる「方針」とみなせるかも
※2:(当然ながら)商社に代表される卸売・商社業全般という「手段」とみなせるかも
※3:小売店(toB)、消費者(toC)、社会という「対象」とみなせるかも
※4:「善き循環を生み出し」て「三方よし」を達成することで(企業目的)、「持続可能な社会に貢献する」(社会貢献)という構図とみなせるかも


┗ ➌ ANAホールディングス

安心と信頼を基礎に、世界をつなぐ心の翼で
夢にあふれる未来に貢献します
・下位 > 方針:安心と信頼を基礎(※1)
・下位 > 強み:(※2)
・中位 > 手段:つなぐ翼(※3)
・中位 > 対象:世界(※4)
・上位 > 目的:夢にあふれる未来に貢献(※5)

※1:当社が何よりも重んじる「方針」とみなせるかも
※2:(直後の「翼」にかかることで)姿勢やホスピタリティに代表される「強み」とみなせるかも
※3:(当然ながら)旅客・航空施設に代表される航空業全般という「手段」とみなせるかも
※4:(当然ながら)マーケット的には「対象」とみなせるかも
※5:「夢にあふれる未来に貢献」することが「企業目的」であると同時に、「社会貢献」とみなせるかも


┗ ➍ カネカ 

人と、技術の創造的融合により
未来を切り拓く価値を共創し、
地球環境とゆたかな暮らしに貢献します。
・下位 > 方針:───
・下位 > 強み:創造的融合(※1)
・中位 > 手段:技術(※2)
・中位 > 対象:ゆたかな暮らし(※3)
・上位 > 目的:未来を切り拓く価値を共創地球環境に貢献(※4)

※1:化学製品業周辺における「方針」でありながら、同時に「強み」に重きがあるとみなせるかも
※2:人と技術に代表される化学製品業全般という「手段」とみなせるかも
※3:(やや社会貢献寄りな「地球環境」に対して)マーケット的には「対象」とみなせるかも
※4:「未来を切り拓く価値を共創」することで(企業目的)、「地球環境(とゆたかな暮らし)に貢献」する(社会貢献)という構図とみなせるかも


┗ ➎ Google 

Google の使命は、
世界中の情報を整理し、
世界中の人が
アクセスできて使えるようにすることです。
・下位 > 方針:───
・下位 > 強み:───
・中位 > 手段:整理(※1)
・中位 > 対象:世界中の情報世界中の人(※2)
・上位 > 目的:アクセスできて使えるようにする(※3)

※1:IT周辺のテクノロジー業全般という「手段」とみなせるかも
※2:(当然ながら)マーケット的には「対象」とみなせるかも
※3:「アクセスでき」るだけでなく(企業目的)、「使えるようにする」(社会貢献)という構図とみなせるかも


┗ ➏ セブン-イレブン・ジャパン 

私たちは
いかなる時代にもお店と共に
あまねく地域社会の利便性を追求し続け
毎日の豊かな暮らしを実現する
・下位 > 方針:あまねく(※1)
・下位 > 強み:───
・中位 > 手段:共に(※2)
・中位 > 対象:お店(※3)/地域社会(※4)
・上位 > 目的:利便性を追求毎日の豊かな暮らしを実現(※5)

※1:(「対象」とみなせる「地域社会」に対して)当社が何よりも重んじる「方針」とみなせるかも
※2:(「対象」とみなせる「お店」と)「共に展開する事業」とすると「手段」とみなせるかも
※3:フランチャイズ事業(toB)的にはお客様にあたるので「対象」とみなせるかも
※4:マーケット的には「対象」とみなせるかも
※5:「利便性を追求」することで(企業目的)、「毎日の豊かな暮らしを実現する」(社会貢献)という構図とみなせるかも


┗ ➐ トヨタ

トヨタはクリーンで安全な商品の提供を通じて、
豊かな社会づくりに貢献し、
国際社会から信頼される良き企業市民を目指しています。
・下位 > 方針:クリーンで安全(※1)
・下位 > 強み:───
・中位 > 手段:商品の提供(※2)
・中位 > 対象:国際社会(※3)
・上位 > 目的:豊かな社会づくりに貢献信頼される良き企業市民(※4)

※1:当社が何よりも自負する「強み」でありながら、同時に「方針」に重きがあるとみなせるかも
※2:自動車に代表されるモビリティ周辺商品全般という「手段」とみなせるかも
※3:マーケット的には「対象」とみなせるかも
※4:「信頼される良き企業市民」を目指すことで(企業目的)、「豊かな社会づくりに貢献」する(社会貢献)という構図とみなせるかも


┗ ➑ パナソニック 

A Better Life, A Better World

私たちパナソニックは、より良いくらしを創造し、
世界中の人々のしあわせと、社会の発展、そして
地球の未来に貢献しつづけることをお約束します。
・下位 > 方針:より良い(※1)
・下位 > 強み:───
・中位 > 手段:くらしを想像(※2)
・中位 > 対象:世界中の人々地球(※3)
・上位 > 目的:しあわせ社会の発展地球の未来に貢献(※4)
・最上 > 標語:A Better Life, A Better World(※5)

※1:(直後の「くらしを創造」にかかるというより)当社製品に対する「方針」とみなせるかも
※2:(「対象」というより)「くらしを創造する当社の製品」としての「手段」とみなせるかも
※3:マーケット的には「対象」とみなせるかも
※4:(世界中の人々の)「しあわせ」を果たし(企業目的)、「社会の発展」を目指し(社会貢献)、(地球の)「未来に貢献」する(未来貢献)という、3段階的な構図とみなせるかも
※5:企業理念を端的に言い表した、いわゆる「コーポレートスローガン」とみなせるかも


┗ ➒ Facebook

コミュニティづくりを応援し、
人と人がより身近になる世界を
実現します。
・下位 > 方針:───
・下位 > 強み:───
・中位 > 手段:応援(※1)
・中位 > 対象:コミュニティづくり人と人(※2)
・上位 > 目的:身近になる世界(※3)

※1:SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、その周辺ツールの「手段」とみなせるかも
※2:マーケット的には「対象」とみなせるかも
※3:「人と人がより身近になる世界」の実現が「企業目的」であると同時に、「社会貢献」ともみなせるかも


なぜ企業理念は必要なのか


企業理念は「点」と「線」の視点

(狭い範囲ながらも)当方直近案件における相談の割合が急増していると冒頭に先述したとおり、コロナ禍によって「企業理念」を見つめ直す企業は今、決して少なくないのかもしれません。


とはいえ、あえてここでその必要性を問うてみます、そもそも「企業理念」は必要なのか、と。ちょっとムリヤリですけど、勝手ながら「ジョギング」(走ること)に置き換えてみます(謎)。

・人は、「目標」がなければ、走り終えることは、できない。
・人は、「意義」がなければ、走り続けることは、できない。

たとえば「目標」。100メートルと100キロメートルなら、その方法、配分、気持ちの持ち方が変わるし、そもそも後者なら辞退するかもですし、当然「方向」などの目的地が不明なら、なおさらです。


たとえば「意義」。健康・挑戦・報酬・応援・選考・名誉、何でもいいんですけど、まったく意義なく(まあ「見返りや対価なく」ともいえますが)「無」で走り続ける御仁は、よっぽどの酔狂者です。


この「目標」と「意義」をガッチャンコしたようなイメージが、「目的」です。

・「目標」とは、達成・成就という、地点・時点を示すもの、すなわち「」の視点

・「意義」とは、動機・動因という、持続・恒久を示すもの、すなわち「」の視点


これを「企業理念」にブレイクダウンというか、なぞらえてみると、

・企業理念での「目標」は、「企業として達成・成就すること」

・企業理念での「意義」は、「企業として達成・成就すること」で、「社会に貢献し続けること」


要するに「目標」という「」の視点と、「意義」という「」の視点で、明確にされた「目的=企業理念」がよりどころとなって、向かうべき方向・距離・速度が定まり(目標)、活動を続けるに値する動機が得られて(意義)初めて、法人という人たる企業は「走り」「続ける」ことができるのです。


企業理念の効果と価値

「企業理念」が明確でなければ、向かう方向・距離・速度も定まらず、活動を続ける動機も得られず、企業は走る、つまりは活動を続けることはできません。言い換えれば、企業理念が明確であれば、

社内:同じ方向・距離・速度で行動・活動できるなど、判断・評価・価値観の共有化

社外:活動の原動となる意義への賛同・評価・存在価値など、ブランド価値の均一化

というガバナンスというか、企業として整合性のある統治が行えます。企業が恒久的に走り続けるための源泉。企業に宿る「魂」。それが「企業理念」であり、やはり必要不可欠なのではないでしょうか。


迷うとき。不明瞭なとき。疑わしいとき。みなが自信を持って同じ方向に向かえる判断基準となるのが、本当に有用な「企業理念」であり、それはコロナ禍以前も以後も、不変といえるでしょう。


そして、ここまで延々と記した企業理念一連の考え方は、ヒト(法人・店舗・個人)、モノ(商品・製品・プロダクト)、コト(サービス・イベント・場所)のすべてに通底すると、当方は信じています。


企業理念の添削用フォーマット

では、最後に、おさらいしましょう。

私たちは
どんな方針強み)の
どんな手段
(どんな対象に)
どんな目的を果たすことで
社会に貢献する


どうでしょう、貴社(貴省庁・貴店・貴殿)が掲げる「企業理念」に類する文章は、上記の構文に近しいでしょうか。添削といってはちょっとおこがましいですが、あらためて自社の企業理念と読み比べていただき、何かの一助になれば、これほどうれしいことはありません。なぜならそれは、

その言葉は届いているでしょうか。​
伝えたい決意があるのなら。
行きたい未来があるのなら。
​言葉に起こして差し上げたい。
​​あらゆる言葉を人にやさしく。読みやすく。
お聞かせください。​
届けたい人に必ず届くように、
決意を、未来を、真摯に言語化します。
(という目的を果たすことで社会に貢献する)
・下位 > 方針:やさしく。読みやすく。
・下位 > 強み:真摯
・中位 > 手段:言葉に起こし言語化
・中位 > 対象:言葉伝えたい決意行きたい未来あらゆる言葉
・上位 > 目的:届けたい人に必ず届く
・最上 > 標語:​あらゆる言葉を人にやさしく。読みやすく。

と掲げているとおり、こうして小欄で企業理念をはじめとする一連の知見を共有差し上げることこそ、当方が宣言する個人(事業主)理念に則った、至極当然の活動の一環なのですから。

「企業理念の書き方」サマリー


末筆に、本稿「企業理念の書き方」について、要点をサマッたスライドデータのリンクを貼り付けますので、ざっくりサクッとご覧になりたい方は、こちらをご参考くださいませ。

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(了)

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