意外と知られていない話。

意外と知られていない話。

 

 

 

1.意外と知られていない話。

先日、ストレートとゲイの友人との食事中に、発覚したことがありました。

いつもの如く、私はトランスに関する質問のあれこれに答えていました。

その時、ちょっとだけ、場が凍った瞬間がありました。

彼らはその事実に驚愕し、私も「あれ?コレって意外と知られていないんだ。」とビックリしました。

その意外と知られていない事とはこちら。

 

「性別変更の為の条件の一つに『生殖機能を永続的に欠く事』という必須項目がある。」

 

つまり

MtF(男性から女性)だと【精巣摘出と陰茎切除】
FtM(女性から男性)だと【卵巣摘出】が絶対条件だという事。

他にも諸々条件はあるのですが、この件は先日裁判にもなっていたので、割と知られている条件だと思っていたので驚きました。

なので今日は、この「性別変更の際の条件」について少し書きます。

 

 

2.日本における、性別変更のための必須条件

日本では2003年に、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(特例法)という法律が成立しました。

その法律によれば、
性同一性障害者であって,次の1から6までの要件のいずれにも該当する者について,性別の取扱いの変更の審判をすることができます。

1.     二人以上の医師により,性同一性障害であることが診断されていること

2.     20歳以上であること

3.     現に婚姻をしていないこと

4.     現に未成年の子がいないこと

5.     生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること

6.     他の性別の性器の部分に近似する外観を備えていること

 

この条件をクリアした人のみが、性別の変更を行えます。

結構条件、シビアなんです。

既に結婚している者は×(結婚したまま性別を変更すると、同性婚状態になる。日本は同性婚が認めてれていないため、×)とかね。

未成年の子供がいる者は、子供の成人を待たなければなりませんし。

手術は実際高額ですし。リスクも伴います。

生まれつき身体が強くないため、手術が受けられないFtMの友人もいます。

何より、どこまで手術を望むかは、当事者によって様々です。

手術を望んでいない当事者にとっては、結構絶望的な条件なのです。

 

 

 

3.先日の裁判

ついこの間、今年の1月23日。

特例法が性別変更の条件に定める「生殖機能を永久的に欠くこと」という規定は、性同一性障害者の自己決定権を奪うものである。憲法13条に反しているとして、岡山県在住の当事者の方が訴えを起こしていた裁判がありました。

最高裁判所は訴えを棄却する決定を出しました。

 Yahooニュース。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190201-00009171-bengocom-soci

 

ただし裁判官から、今後の違憲の判決が出てくる可能性を示唆するような補足意見も記されており、今後に希望が持てる判決内容でした。

 

 

4.私の話

 初めてこの条件、事実を知った方達は、どう思いましたか?

周りに混乱をきたさない為、性適合手術はして当たり前じゃん。とか

トランスジェンダーはみんな手術する、したいもんかと思ってた。とか
色々思い浮かぶと思います。

 私が初めてこの条件を知ったのは、17歳のころでした。

 田舎の図書館で、まだ真新しい言葉だった、「性同一性障害」「トランスジェンダー」等の情報を必死になって調べていた時です。

「男性」として生きられる。男性に戸籍を変更出来る可能性がある!ヤッホウ!と喜んだと同時に、生殖腺のくだりで、少し背筋がひんやりしたのを覚えています。


「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」

 

これは・・・・これは、人に決められなきゃいけない事なんだろうか。

私が嫌だと思ったら、そりゃ取るけれども。

それに、生殖機能を永久的に失うこと、というのは結構なパワーワードで、私は子供が欲しいと思ったことはありませんでしたが、それでも言外に「性同一性障害者は子を残すな」と言われているようで、あまり良い気持ちはしませんでした。

 

私は、手術やホルモン治療は、「当事者がより幸福に生活する為の手段の一つ」と考えています。

だから、本人が望んでいないけれど、性別変更が出来ないから手術する。という本末転倒な事態が起きかねない今の法律には違和感を感じています。

 

 



5.社会は動いている


性別変更の条件の多くは本人の幸福追求の為ではなく、「周囲の人の混乱を招かないため」に設定されています。

しかしだからこそ、昔よりもずっとずっと理解が進んできた今、未来、緩められていくんじゃないかと思っています。

「未成年の子供がいないこと」と言う条件も昔は、「子供が現にいないこと」でした。

希望が垣間見える裁判判決も出ました。

海外では、性別変更に外科手術が必要でない国が増えてきています。

 


 

何より。

友人たちをちょっとびっくりさせてしまって申し訳ないと思ったけれど、ほんの少し凍った空気の後に、私を慮るように「なにそれ!それって変じゃない?」「人権的にどうなの?!」切り込んで貰えて、胸の中がジンワリ暖かくなりました。

ああ、やっぱりこの条件ちょっと変だよねえ。と、笑って、また食べかけの丼メシを頬張りました。

 

私は性別変更の条件や、手術の困難さと言うのは、案外一般に人に知れていると思っていました。

だから多くの人に「何で手術しないの?」「何で性別変更しないの?」と問われる度、丁寧に答えながらも「簡単に言うなよ〜!」と内心でとても険のある表情をしてしまっていたと思います。

ただ今回の友人とのやりとりの中で、
「お互い知らない事多いな」
という事が知れました。

その事実が、とても大きな収穫でした。友人に感謝。

今年一月末、新宿の牛丼屋での出来事でした。

華子

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