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ガンダムな時代の子どもたち

ちょうど今60歳位の人たちが子どもだった時代、思春期にちょうどガンダムの主人公であるアムロくらいな年齢の人たちは、自分を含めてちょっと変わった人が多いのかもしれません。

幼少期の日本は高度成長時代で、日本はまだ先進国の仲間入りはしていませんでしたが、「技術さえあれば何でも出来る」という明るい未来が語られていました。少し上の世代の人たちは、どちらかというと自由を謳歌する政治な人たちが多く、大学は勉強するところというよりも立看を作りヘルメットを被るところに見えていました。

ベトナム戦争も続いていましたし、核戦争の恐怖も暗い影を落としていましたが、テレビというデバイスが広まり、これもモノクロからカラーへと進化しつつ、アポロが月に着いたのを自分の家から眺めることができるなんて、自分も大人になればきっと宇宙に行けると信じていたものです。

これに水を指したのがオイルショックでした。石油の値段が政治的な理由で突然上がっただけに過ぎないのですが、宇宙から見た地球を見た副産物として、我々の世界は有限であり、このままいつまでも成長を続けることは出来ない、この限られたリソースをどう活用していくかに大きく舵が切られたのです。それまで成長とは如何に多くのエネルギーを使い多くのものを産み出すのかという尺度だったのに、これを変える必要に迫られたわけです。しかも残り30年で石油は枯渇するので、世界を変えるタイムリミットが設定されたんですね。

この残り30年という数字は、いつまでたっても残り30年だったのは謎なのですが、いつのまにか残りの年数はコスト次第ということになり、今は化石燃料を使うことが問題だという時代になりました。この変化にどう立ち向かうかはいろいろな世界が語られました。人類は宇宙に向かうべきだという拡大路線もあり、エネルギーを核分裂や核融合に切り替えれば解決だという人もいました。逆に成長しすぎた人類は幸福を求めれば古き良き人間的な生活に戻るべきであると技術の進歩を禁止すべきであるという人もいました。それまでフロンティアを拡大してきた世界から、精神的というかインナースペースが注目を浴びるようになったのもこの頃からだと思います。

こんな子ども時代を送った自分たちの世代は、技術の進歩を肌身に感じていたので、新しい時代が近づいていることを知っていました。複雑な処理や手順は経験を積んだ優秀な人間がやるという世の中だったのですが、そのやり方は人間としての限界があるので、もう無理だろうと。もう何とか博士の時代ではないんだよ、と。そこで手順を分解し言葉にして複数の人間で分担して取り組めるようにし、人間は間違いを犯すので、どうそれを防ぐかまたは修正するかこそ、取り組むべきことだと。実は人類はアポロの時代までは何千何万という異なる部品をひとつにまとめ上げる経験をしたことがありませんでした。NASAの功績はロケットを作ることよりも、作るシステムを作り上げたことにあります。これを実現するには別にコンピュータを使う必要はありませんが、コンピュータとは実に相性が良く、半導体技術の発展により、強力なコンピュータという武器を手に入れて、このシステムという考え方が急速に発展していきます。

さてさて、もちろん大人の一部の人たちはわかってはいたものの、今までのやり方をどう切り替えていけば良いのかが、どうもシックリと来ていません。それは経験を重ねて積み上げた判断の基準を変えることが必要だからです。しかしながら当時の子どもたちはまだ経験が無いので、何も困ることはありません。すべてはシステムありきです。みんながみんなという訳ではありませんが、コンピュータにハマり多くのパソコン少年を生み出しました。もちろんハマっていない人の方が多いのですが、ハマっている友人を見て何やら起こっていることだけは気がついたと思います。

初期のマイコンは規模も小さかったですし、能力も限られていたので、一から十までぜんぶひとりで理解することができましたし、ひとりでシステムを作り上げることも出来ました。一度、これを経験してしまうと、規模が徐々に大きくなっていっても、多少の時間がかかるようにはなりますが、対応するのはお手の物で、全部、自分でやるのも大変なので、同じ経験を積んだ人同士で、作業を分担するのも以心伝心です。もちろん以心伝心がダメなことは一番良くわかっているので、これもシステム化することに腐心するようになるわけです。

気がつけば世の中でシステムのことを一番理解しているのは自分たちだけであるということになっていました。どうも上の世代の人たちは、コンピュータというのは何か「わからないもの」であるとか「怖いもの」もしくは「一部の人だけがわかる特別なもの」という認識があるらしいというのは理解したのですが、どうしてそんなコトになってしまったのかは判らずじまいです。自分たちの世代には「新人類」であるとか「しらけ世代」などというレッテルが貼られたのですが、どうやら本当に「ニュータイプ」だと思われていたフシもあります。つまり世の中の進歩の尺度は、物理的なエネルギーであるとか生み出された形のある何かではなくて、情報こそが大事でより多くに人が多くの情報に触れることが出来るようになってこそ、価値が生み出されていくんだよ。と信じている集団を生み出したのです。

そんな自分たちに上の人はなかなかやさしくて、自分たちで出来ないからこそ、多くの仕事を任せてくれました。ちょっとしたお手伝いのつもりが、気がつけば会社を動かすような大きなシステムを作る羽目になったり、あちらこちらから仕事が舞い込むので、とてもひとりでは受けきれず、会社を作ることになった友人たちも多いです。学生時代に友人に何人も社長がいるなんていうのは、今はなかなか想像も出来ないかもしれませんが、あまり特別なことだという自覚はありませんでした。まあそんなのは、お前の周りだけだよという声も聞こえますが、なかなか若い頃から生意気な世代ではあったと思います。


この記事は夏の盛りに勢いに任せて書いたのですが、どうも言い足りないところやしっくりコないところがあったので、そのままにしていました。まさにうってつけのお題が出たので、枝葉を整理して投稿することにしました。

ヘッダ画像は、BingCreatorに描いてもらったのですが、ちょっと心配な画像だなぁ。

#熟成下書き

#起動戦士ガンダム #アポロ計画 #マイコンブーム #システム #1970年代 #新人類

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