ガッシュ原作第1話の魅力とガッシュ2page4との比較

実質第1話といっていい盛り上がりを見せたガッシュ2のpage4
そして、別記事で語ったように、原作ガッシュの中で、僕が最も好きなのは第1話。
この2話には共通点がある。

せっかくなので、ガッシュ2から読み始めた人のために、あらすじを紹介してから、原作第1話の魅力を語る。
そして、最後にpage4との共通点と相違点を考えようと思う。

原作第1話のあらすじ

一人目の主人公は、天才中学生高嶺清麿
暇潰しにMIT首席卒業生の論文を読んでしまうほどの頭脳を持つが、その頭脳ゆえに周囲から疎まれ、無気力な生活を過ごしていた。

もう一人の主人公ガッシュは、そんな清麿の元に突然現れる。
謎の本を持ち、口から電撃を放つこの少年は、清麿の父に「腑抜けを叩き直すように」と頼まれたという。

清麿の母にも、清麿に友達を作ってほしいと頼まれたガッシュは、不登校気味だった清麿を無理矢理登校するよう仕向ける。

学校に同行したガッシュが見たのは、退屈そうに授業を受ける清麿と、それを疎むクラスメイトや教師、そして、そんな清麿を慕い勉強を教えてと頼む水野スズメの姿だった。

周囲の視線に苛立ち、まだ昼休みなのに帰ろうとする清麿。
そこでガッシュは、不良を倒すことで友達を作る作戦を提案する。

適当に話を合わせ、ガッシュだけを不良の待つ屋上に向かわせる清麿。
しかし、屋上にスズメも向かったと聞いた清麿は、結局自分も屋上へ向かい、様子を伺うことに。脳裏をよぎるのは、真剣に清麿の友達を作ろうとするガッシュの顔。

屋上で清麿が見たのは、清麿が助けに来ると信じて疑わず、スズメをかばって不良に殴られ続けるガッシュの姿。
「あいつに学校に来てほしいと思ってる奴など誰もいない」と言う不良に対し、ガッシュは怒る。
「清麿は悪くない!だから私は清麿を助けに来たんだ!」
「清麿が変わったんじゃない、清麿を見る友達の目が変わったんだ!」「今日、学校に来た清麿が何をした!?」
※ここは是非原作で、ガッシュの表情を始めとする演出とともに台詞全文を読んでほしい。今なら色んなアプリで無料で読めるはず。

自分の苦悩を見抜き、自分を友達と言い切るガッシュを見て涙を流す清麿。
ガッシュとスズメを守るため、不良の前に立ちはだかる。

当然腕力では敵わない。
使うのは頭脳。
思い出したのは、ガッシュが持つ謎の本。
理解不能な文字の中、一節だけ浮かび上がる自分にだけ読める文字。
ガッシュの口から電撃が出たときの状況から考える。
謎の本が光る。

「第1の術 ザケル!!」

清麿が本を持ち呪文を唱えると、ガッシュの口から放たれた電撃が不良をかすめて校舎を破壊する。
心の殻を破った清麿の勇気と機転で窮地を脱す一方で、大きな不思議を残し第1話は終わる。
この子はいったい…?

第1話としての魅力

連載漫画の第1話は、その作品の自己紹介である。
別に物語の最終目標が現れる必要はない。
ラスボスが顔見せする必要もない。
しかし、その漫画がどんな魅力を持っているか。その漫画を読めば、どういうシーンが期待できるのか。名作の第1話では、これらが必ず明らかになっている。

ワンピースなら、悪魔の実、魅力的な海賊がひしめく海での壮大な冒険。
デスノートなら、人知を越えたアイテムと天才による頭脳戦。

では、ガッシュはどうか。
別記事で解説したとおり、ガッシュという漫画の持ち味は、キャラクターの魅力、魔物と人の絆、これらに裏打ちされた熱くて泣けるシーンである。
第1話にはこれらの要素が凝縮されている。

清麿のキャラクター

清麿の魅力は、他者を思いやる優しさ、自分の危険を省みず正しいと信じることを主張し貫く熱さと勇気、窮地を切り抜ける賢さである。
第1話にして、清麿のこの魅力はしっかり描写されている。

周囲から距離を置かれ、不貞腐れてしまっている清麿だが、それでも慕うスズメの姿から、本質的には優しい性格であることがすぐに分かる。キツい物言いの中に、自分と関わることでスズメに危害が及ぶことへの心配も見える。
ガッシュを邪険に扱いながらも、結局は窮地に陥る可能性から目をそらせず様子を見に行ってしまうところにも、他者への思いやりが現れている。

そして、勝てる算段などなく不良の金山の前に飛び出し、ボコボコにされつつも充実感を感じている姿こそ、今後この物語を牽引し続ける勇気と熱さである。
今後清麿は、人を助けるため、何度も地面に這いつくばる姿を見せることになる。清麿はスマートだけど泥臭いのだ。

最終的に呪文の力で切り抜ける際も、やぶれかぶれではない。
短い間に起きた現象で得られた情報から、術の発動を確信するに足るピースを集め、現状を打破する頭脳。
窮地を機転で脱する頭の回転の片鱗が見え、今後の清麿の活躍が楽しみになる。

ガッシュとの絆


ガッシュは、清麿の優しさ、熱さを更に濃縮したような性格である。
「自分の大切な人のため」という動機は最初から最後までぶれることはなく、「やさしい王様」を目指すのも、他者の苦しみを自分のことのように感じる感受性を持つがゆえに、誰にも苦しんでほしくないと考えるから。
人を全力で信じる純粋さを持ち、嘘には弱いが他者の苦しみや長所を見抜く洞察に優れる。
一度決めたことはどんな障害があっても貫き続け、その心は他者の裏切り以外によっては決して折れない。(純粋さゆえに、信じた者からの裏切りには弱い面がある。)

ひねくれてしまっていた清麿の本質を見抜き、真っ直ぐに信じる純粋さこそ、ガッシュの魅力。
清麿に同行し、清麿と同じ視点で生徒と教師を見たことで、清麿の苦悩に共感し、その優しさを引き出して友人としての絆を結ぶガッシュの姿は、この先、数多の魔物の心を溶かす主人公の優しさに溢れている。

展開

とにかく魅力的な主人公2人。
第1話の展開は、この魅力を存分に描写してくれている。
ガッシュが屋上で清麿を待つところまでで、「清麿は本当は優しいやつなんだな。妬まれてて可哀想なんだな。」ということは読者にも分かる。反面、清麿の態度もちょっと悪いよね…素直になればいいのに…という思いも抱く。

そんな中、清麿が抱え続けた苦悩全てを受け止め、友達への侮辱は許さないとガッシュが啖呵を切る場面は、作中屈指の名シーン。
雷句節ここに極まれり。
清麿がどうしてここまでひねくれたのか、何に苦しんできたのか。

友が勝手に離れていったから、自ら心を閉ざすしかなかった。
迷惑を掛けなくても人からは疎まれる。
誰にも理解してもらえなかった清磨の心情を露にする真っすぐな言葉。

これに応えて、体裁を気にせず、勝ち目など考えずに友を守るために立ち向かったことが、清磨にとっての大きな転機になる。
熱い言葉に応え、それまで押し込んできた感情を開放して主人公が覚醒する。
この転機が、最後まで清磨の心の支えとなる。
第1話として完璧な展開だと思う。

ガッシュ2page4との比較

ここからが始まりだ!という意味で、「第一の術 ザケル!!!」のシーンとその周辺は、原作とpage4で重なっている。いくつかの要素から比較してみる。
雷句先生の演出力の凄さに驚かされること請け合いである。

比較1 ガッシュの表情

原作のこの表情は、清麿が来るから大丈夫とスズメに話すシーンのものであり、二人揃った逆転のシーンであるpage4のザケル直前のコマとはタイミングが異なる。しかし、角度、表情が明らかに重なっている。

複数の意味が込められた表情だが、両者に共通するのは清磨への信頼。
ただし、信頼という意味では同じでも、その厚さが違う。
・原作第1話での二人の関係は、清磨の本質を捉えたとはいってもほぼ初対面。
・page4での二人の関係は、戦いを乗り越え、大きくなって再開すると誓った親友。

これにより、2つのシーンの意味合いが変わってくる。
・原作では、ガッシュの純粋で真っ直ぐな性格を印象付けるシーン
・page4では、離れていた期間はあっても変わらず信頼し続けていたことを示すシーン。

同じようなコマなのに、別の役割を果たさせつつ、原作と2のつながりを感じさせる描写となっている。

比較2 破るもの

抽象的な表現になるが、どちらも何かを破って閉塞的な状況を打破するシーンである。

原作で破ったのは清麿の心の殻。
本来の優しさに蓋をし続けた清磨が、明確に心情を変えたことで、清磨自身の道が拓けた。

page4で破ったのはミイラの外郭。
読者もフラストレーションを感じていた、原作主人公のガッシュが現れないという展開。
「それでも面白いし、しばらくは登場は諦めるしかないのかな…」と思いかけていたところで、ミイラの中から復活したガッシュ。
ミイラの外郭を破るという登場シーンは、復活の媒体という設定上の意味に加えて、「現状を打破する」という意味も持たされている。

比較3 ザケル


ザケルという術によって、窮地を脱するという意味では同じシーンだが、page4ではガッシュは気を失っていない。
ガッシュの成長を表すシーンであることは間違いないが、それ以上に、状況に流されていた原作第1話の清磨と、明確に自分の意志で敵に立ち向かうと決めている2での清磨のスタンスの違いも表れているように思う。

まとめ

読み返すと、原作第1話のクオリティに改めて驚かされる。
魔界の王を決める戦いという設定は、第1話では紹介されていない。
しかし、この第1話を読んで面白いと感じた人が、続きを読んで絶対後悔しない、そんな自己紹介になっている第1話だと思う。
「謎の本」という十分に興味を惹く存在があることで、舞台設定について急いで説明する必要がなくなっているのもうまい。

ガッシュ2は、続編ということで、原作ほど急いで魅力を伝える必要がなかった。ほとんどの読者はガッシュが面白いことを知っている。
そう考えると、page4までが、通常でいう第1話と考えてもいいだろう(page3まででも存分に楽しめていたが。)。

ならば、ここまでで出てきた読者に期待を持たせるシーンについては、実現されると考えていい
ミイラと石の魔本が多数あるということは、原作の魔物も多数復活するということだ。
淡い期待ではなく、彼らの成長した姿が見られるという確信を持って、page5以降を楽しみにしたいと思う。

過去感想
page1
page2①清麿編
page2②ワイグさん編
page3
page4①雷句先生ありがとう編
page4②遺跡考察編

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