見出し画像

知っているだけで学習効果倍増!REALプログラム授業設計の秘密

筆者は大学生・社会人に向けた「英語で教養を学ぶ」実践英語講座・REALプログラムを運営しています。
今回は、REALプログラムの授業設計の背景や意図をみなさんに紹介します。
この授業は、外国語学習の科学(第二言語習得論)などに基づいて、みなさんが最も効果的に英語を習得できるよう設計しています。

「あ〜なるほど〜!そういう意図でこの活動があるんだ〜!」
「こういう意識でこの活動に取り組めばいいんだ〜!」

と、全体の流れや各コンテンツの設計のねらいを知っていただくことで、みなさんの受講体験がより効果的で充実したものになることを願っています。
まだ参加したことがない方は、ぜひ一度REALプログラムを体験しにいらしてください!

全体の流れの意図

まずは90分の全体の流れについて説明していきます。
各回の授業は、

  1. リスニング(穴埋め)+ 音読練習

  2. ペアリスニング

  3. ペアリーディング

  4. プレゼンテーション

という順番・構成になっています。
実は、インプットとアウトプットの比率が

インプット多め→アウトプット多め

段階的にシフトしていく設計になっています。

後半(下)に進むにつれてアウトプットの要素が増えていく授業設計

最初の①リスニング+音読練習は100%インプット活動です。
次の②ペアリスニングと③ペアリーディングは、インプットを踏まえてアウトプットを行う活動です。最後の④プレゼンテーションは、最もアウトプットの比率が大きい活動です。

英語学習においてもっとも大切なのはインプット学習です。

何か話そうと思っても、話すための材料となる知識や考え方、英語での語彙や表現がなければ話せません。「アウトプットの動機・必要性」を感じつつ、インプット学習をメインにする方法がもっとも効果的な習得方法であると言われています。

たとえば、前提となる知識や十分な語彙が備わっていない段階で「facebookがフェイクニュースの温床になっている件についてどう思うか」と問われたところで、英語で話せる内容には非常に限りがあります。必要な知識や表現をしっかりインプットした上でアウトプットすることで、はじめてアウトプットの練習が効果的になるのです。

テーマや教養を重視する理由

REALプログラムの冒頭では、1つのテーマとなる問いをみなさんに共有しています。また最後のプレゼンは、この問いについてのみなさん自身の考え方を伝えてもらう機会になっています。また、問いやテーマは、大学生や社会人のみなさんが興味を持ちやすい内容を選んでいます。

設計の意図としては次の2つです。

1つ目は、インプットやアウトプットの活動に対するみなさんの動機を強めることです。
単に「英語を勉強している」という意識で取り組むより、心から「知りたい!理解したい!伝えられるようになりたい!」と思える内容で学ぶほうが、結果的に英語習得の効率も高まることが示唆されています。

2つ目は、英語をより高いレベルで使えるようになるためには、英語力だけでは不十分だからです。
英語でも日本語でも、高度な理解力や発信力を発揮するためには、さまざまな知識や考え方を蓄えておく必要があります。人は何かを読んだり聞いたりするとき、既存の知識を総動員して「こういう話だろうな」と予測を立て、その予測が正しいかどうかを検証するために文法や語彙の解析を行っています。このため「英語力は高いけど知性は薄っぺら」という人は話をきちんと理解することはできず、実際ほとんど役に立ちません。


ここまで、全体の流れについて説明してきました。
次に、各コンテンツの細かい設計意図や、取り組む際に意識してほしいことを書いていきます。
効果的な復習のしかたなども合わせてお伝えしていきますね。

導入リスニング

1分程度のリスニング動画を、各自で繰り返し視聴しながらリスニングの穴埋めをしていきます。その後、インテンシブな音読練習を行います。

この活動の目的は、以下の4つです。

①:英語のウォーミングアップ

普段は日本語環境で生活をしているみなさんがスムーズに英語での発信に移行するための準備運動という意味合いがあります。導入リスニングにはアウトプットの機会はなく、インプット学習に専念できます。安心して英語の耳や脳を立ち上げていってください。

②:音声認識能力の確認

リスニングの理解は、大まかに以下の3つの作業から成り立っています。

1) 音声認識
 耳に入ってきた音を単語として識別する作業
2) 意味処理
 識別した単語や文構造から意味を組み立てる作業
3) 文脈把握
 これまでの話を記憶したり、先の内容を予測したりして、話の全体像を把握して記憶に残そうとする作業

特に1つ目の「音声認識」はすべての作業の入り口で、多くの日本人が苦手とするところです。穴埋めの作業は、現段階での音声認識能力を把握するための作業でもあります。
現状の自分のリスニング力で「聞き取れない単語」を把握し、音読練習で発音を確認しながら繰り返し練習することで、自分のリスニング力の穴を埋めていくことができます。

③:テーマについての前提知識や重要語彙のインプット

上でもお伝えしたように、十分なインプットなしに実のあるアウトプットはできません。各回のテーマについて議論するための前提知識や語彙を身につけておく必要があります。
穴埋め活動と音読練習を通じて、同じ動画を10〜20回反復できます。表現や前提知識をしっかりインプットして、以降の活動に備えてください。

④復習をしやすくする

授業内である程度まとまった音読練習をするのは、みなさんが1週間復習に取り組みやすいようにする意図もあります。
英語はできるだけ毎日触れたほうがよいですが、初めて接する教材にしっかり取り組むのは心理的ハードルが高く、時間もかかるので、毎日続けるのは現実的ではありません。
週1回の授業の中ですでにある程度やり込んだ教材であれば、比較的軽い気持ちで復習に取り組むことができます。
一日10分程度で良いので、毎日コツコツ音読練習を続けることで語彙力やリスニング力をゆっくり維持・向上していきましょう。


ペアリスニング と ペアリーディング

Part A とPart Bの2本の動画が用意されています。
ペアを組み、Part AとPart Bを分担して担当し、それぞれ理解した内容をパートナーに英語で伝えます。

この活動は、第二言語習得論の要諦である「アウトプットの必要性を感じながらインプット学習をする」という原則に基づいています。
「この内容を理解してパートナーに説明できるようにならないといけない」という動機を感じながらインプットに取り組むことで、インプット学習の効果が最大化されます。

また、インプットした内容はアウトプットしてみることで記憶や理解が深まります。
アウトプットの効果は、私自身、教育者として日々強く実感します。読んで理解したつもりになったことでも、いざ生徒の前で説明するとなると「あれ、ちゃんと理解してなかったぞ」と気づくことが多々あります。また、誰かに一度説明したことは、ただ読んだだけの内容より記憶に長く残っています。
英語の学習効率が高まるだけでなく、アウトプットすることによって知識の定着もより深まるのです。

ペアでのリーディングも同様です。アウトプットするという前提で、ある程度緊張感を持ってインプットに取り組むことで学習効果が高まります。

効果的な復習方法

英語学習の要諦は「理解可能なインプット学習の反復」です。
各コンテンツが何の話をしているのかを把握した上で繰り返し読む・聞く・音読するなどのインプット学習に取り組んでみてください。話の大筋を知っていれば、初見の単語や記憶が曖昧だった表現も意味を予測しやすくなり、「理解可能なインプット」に変わります。
「この文章はこういう意味のことを言っている」と把握した上で何度も反復して定着させていきましょう。
ある程度インプット学習を繰り返したら、再度独り言でサマリーしてみてください。


プレゼンテーション

これまでのインプットや自分の知識・経験を踏まえて、問いに対する自分なりの考えを整理して90秒で発信する活動です。

論理や感性、これまでの知識・経験を総動員して、自分なりの意見を作り上げてください。自分の意見を論理的に発信する力はあらゆる分野で求められる力ですが、日本の教育の中では訓練する機会はなかなか得られません。毎週仲間と一緒に鍛えていきましょう。

また、発信してみることで、改めて自分の知識や経験で足りていない部分を痛感することがあると思います。ぜひREALプログラムでの発信をきっかけに、本を読んだりいろんな経験に挑戦したりしてみてください。

90秒のワケ

90秒にしている理由は2つあります。

1つ目の理由は、短い時間で全体像や結論を端的に伝える力を育むことです。
人の集中力はあまり長時間持たないので、
「この人は何の話をしているのか」
を把握するのに5分も10分もかかる人の話を聞くのは非常に苦痛
です。もれなく眠くなります。
このため、きちんと説明して理解させるのに60分かかる内容を話す場合でも、まずは話の全体像や結論を短い時間で端的に伝える必要があります。

ある程度まとまりのある内容を話す際の最小の時間が60〜90秒前後です。
90秒程度の時間でどこまで詳細な情報を伝えられるのか、短い時間で全体像や結論を伝えきるにはどのように話を構築すれば良いのかを感覚的に把握している必要があります。

2つ目の理由は、話をするときの時間感覚を掴むことです。
60秒や90秒で、どれだけの情報量を伝えられるのか、どこまで複雑な内容を伝えられるのかという感覚を身につけてほしいと思っています。
仕事の会議や学会などでは、使える時間が限られています。

「1分にこの内容を盛り込むとパンクするから、今回は省こう」
「3分使えるから、この具体例も盛り込もう」
話し始める前に判断し、論を瞬時に構成しなければなりません。どれだけの時間でどれだけの情報量を伝えられるのかを体で把握していることは強力な武器になります。

リプロダクションの効果

プレゼンの後、聞き手がリプロダクションする機会があります。
「あなたはこういう話をしていましたよね?」と、相手の話した内容を再生する活動です。この活動は、プレゼンターにも、聞き手(リプロダクションする人)にもメリットがあります。

プレゼンターのメリットは次の2つです。

①:自分のプレゼンがどの程度伝わったかというフィードバックを得る
「伝えた(と思っている)」と「伝わった」の間には大きな溝があります。相手からリプロダクションをしてもらうことで、実際にどの程度伝わっているのかを客観的に把握する材料が得られます。うまく伝わらなかった部分は2分間の修正の時間で改善してみてください。

②:効果的な表現方法を知る
ペアの相手が英語が得意な人だった場合、自分が表現に苦労した部分をスマートにリプロダクションしてくれることがあります。ぜひ相手のリプロダクションから学んで自分のアウトプットを改善してみてください。

聞き手(リプロダクションする人)のメリットは次の3点です。

①:プレゼンに集中して耳を傾ける動機を持つ
みなさんが大学の授業で先生の話を集中して聞きづらい理由の1つは、集中して聞くことの目的や意味を見出しづらいからです。もちろん学びを深めたり単位を取ったりするという目的はありますが、どうしても遠い先の目的になってしまいます。ヒトは遠い先の未来のために努力するのがとても苦手ですから、「集中して聞かないとすぐに困る」状況を作ることで、みなさんがより集中してプレゼンに耳を傾けやすいようにしています。

②:自分の意見や考えは脇に置いて傾聴する練習
何かを聞いたり読んだりしたときに、話されたとおり・書かれているとおりに理解できる人は希少です。ほとんどの人は、自分の解釈を(無自覚に)織り交ぜてしまったり、価値観や経験に理解を歪まされたりしています。
また、自分の信念やエゴが邪魔をしてしまうため「相手と意見は異なるが、いったん相手の話を虚心に理解するように努める」という姿勢を持てる人も非常に少ないです。自分が間違っている可能性を疑えず、理解しようとする前に反論してしまったり、相手の主張を頭から否定しにかかってしまう人がたくさんいます。
相手のプレゼンを鏡のようにそのまま返すことは、健全な対話ができる人としての素養を磨く練習でもあります。自分の意見は脇に置いて虚心に理解することに努め、相手が話したとおりに返すよう心がけましょう。

③:即興で論旨を把握して発話する練習
おそらくプレゼンのリプロダクションがREALプログラムの中で最も負荷と緊張感の高い活動ではないでしょうか。プレゼンを1回だけ聞いて、準備時間もなく即座にその場で内容を整理して話さなければならないので、非常に大きな認知的な負荷がかかります。
私たち日本人は四六時中、英語のシャワーを浴びることはほぼ不可能なので、英語に触れている時間の密度や集中力を高め、単位時間あたりの学習効率をいかに高められるかを考えなければなりません。

生理学的にも、ストレスやプレッシャーを感じたときに生成されるDHEAなどのストレスホルモンは、脳の神経回路の再配線と強化を助け、経験からの学びと成長を促進することが知られています。

プレッシャーのかかる活動ですが、その分だけ英語学習の効率が高まっていると信じてがんばってください!

プレゼンの復習方法

プレゼンなどのアウトプットの練習は、人間ではなく壁を相手に独り言で同じ内容を何度も繰り返すのがオススメです。(壁じゃなくてぬいぐるみ相手でも虚空に向かってでも何でもいいです)。

ある内容を初めて話すとき、脳内では①何をどういう順序で話すのかを考える、②どういう文構造で表現するのかを選択する、③語彙や表現を記憶から引き出す、など、様々な処理が行われており、限られた認知キャパシティをめぐって競合し圧迫し合っています。

しかし、2回目以降は少しずつ余裕が出てきます。何をどういう順序で話すのかはもう考える必要はありません。1回目に引っ張り出せた語彙は2回目以降は楽に引き出せるようになっています。

繰り返していると、一回目は引き出すのに時間がかかった語彙が、2回目、3回目にはスムーズに引き出せるようになります。(脳科学的には、同じシナプス接続に何度も電流が流れることで神経回路が強化され効率的に記憶を呼び起こせるようになります。)

こうして生まれた認知機能の余力は、「もっと適切な語彙はないか」「発音は正しいか」「文法的なミスはないか」と考える活動に向けることができます。同じ内容を何度も繰り返すことで、改善しながら記憶を定着させていくことができます。

また、人を相手に話しているときは、相手の表情や理解を伺ったりすることにも認知キャパシティが割かれています。間違った箇所を自分が納得するまで何度も言い直すこともできません。
「相手に理解させないといけない」という緊張感の中で話す授業での経験と、自分のペースでリラックスして改善・定着を図れる復習を組み合わせることで、最大効率でスピーキング力を伸ばすことができます。


最後に

というわけでREALプログラムの授業設計の意図を説明していきました。ただ闇雲に受講するより「この活動の目的は何か」「何を伸ばす意識を持てばいいのか」を知って意識することで効果も倍増します。
ねらいや目的を知ってもらうことで、みなさんの授業体験がより充実したものになれば幸いです。

まだ参加したことないよ!!という方はぜひ公式LINEから体験参加してみてください!

貴重な時間を割いて最後まで読んでくださったことに心から感謝いたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?