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大学生はもう「英語を学ぶ」のはやめよう。「英語”で”学ぶ」に切り替えるべき理由2つ

多くの方は、中学・高校で英語を「教科として」学んできたと思います。英語を学習対象として、英語力を伸ばすことを目的に学んで来たと思います。

しかし、大学生や社会人の英語学習者のみなさんは「英語を学ぶ」では不十分です。英語を学習目的にするのではなく、「英語で興味のあることを学ぶ」にシフトしていくことをオススメします。理科や社会を「日本語で」学んでいたように、英語を学習や議論の単なるツールにしてしまうのです。

この記事では、「英語で学ぶ」にシフトすべき理由を、科学的な見地も交えつつ詳細にお伝えしていきます。

英語力だけでは英語は理解できない

「英語"で"学ぶ」 にシフトすべき最大の理由は、英語での理解力を高めるためには、英語力だけでは不十分だからです。
英語の文法や語彙の知識だけではなく、さまざまな考え方や教養が十分に備わっていなければ、英語で高度な内容を理解することはできません。

これを説明するために、まずは
人が何かを聞いたり読んだりしているときにの理解のメカニズム
を紹介します。多くの人が勘違いしているポイントなので、丁寧に紹介していきます。

ボトムアップ処理とトップダウン処理

人が何かを聞いたり読んだりしているとき、脳は「ボトムアップ処理」「トップダウン処理」という2つの処理を同時に使って理解しようとしています。

「ボトムアップ処理」とは、語彙や文法の知識を活用して下から積み上げていくように意味を構成していく処理です。

「トップダウン処理」は、持っている知識や文脈から「おそらくこういう話だろう」というふうに、上から仮説や予測を立てて理解していこうとする処理です。

おそらく多くの方は、「英文解釈」と聞くと、ボトムアップ処理=語彙と文法から意味を組み上げる能力の話だと無意識に思っているのではないでしょうか。
しかし、トップダウン処理がうまくできなかったとき、人はほとんど情報を理解したり記憶したりすることができません。実際に、成績の良い人ほどトップダウン処理をうまく使っているという調査結果があります。

人の理解は、①まずトップダウン的に「こういう話だろうな」と予測を立て、②予測が正しいかどうかをボトムアップで検証する、という順序で行われています。闇雲に単語や文法を憶えたところで、トップダウン処理ができなければスムーズに理解することはできないのです。

英語力を伸ばすために教養を身につけなければならない理由はここにあります。英語・日本語を含め、たくさんのことを学んで知識や考え方のフレームが豊富な人は、少ない手がかりから「ああ、あの話をしているんだな」「こういう論を展開したいんだろうな」と筋の通った仮説を立てることができます。知らない語彙があっても、「こういう主張の中で出てきている単語だから、どうせ〇〇という意味だろう」と予測することができます。

大切なポイントなのでもう一度言います。
「言葉を理解する」というのは、語彙と文法をもとに1から意味を組み立てる作業(ボトムアップ)ではなく、話の内容や展開を予測(トップダウン)した上で、その予測が正しいかどうかをボトムアップで検証する作業です。

いかに文法知識や語彙やリスニング力があっても、トップダウン処理をうまく使うための背景知識や考え方のフレーム、論理的思考の訓練がなければ理解できないのです。英語力だけ高くて教養がない人は、実際なんの役にも立ちません。

日本語・英語を問わずたくさん学ぶことの大切さ

ここまで説明してきたように、言葉を正しくスムーズに理解するためには、言語能力だけではなく、背景知識や考える力が必要不可欠です。

ふだんから習慣的に読書をしていたり、新聞や記事、勉強会などで見聞を深めたり、簡単に答えの出ないトピックについて人と議論したり、母語である日本語でたくさん教養を深めている人ほど、英語でも高い理解力を発揮できます。

よくある英会話のレッスンで英語力が伸びない理由の1つがここにあります。日常のありきたりな会話の練習だけでは教養は育まれません。ホテルのチェックインができる程度の英語力であれば英会話レッスンで十分かもしれませんが、仕事や学術で使える英語力には届きません。

おそらく多くの方が到達したい英語力は、仕事でキレのある生産的なディスカッションをしたり、プロフェッショナルで複雑な話をすんなり理解したり、情報量の多い学術的な主張をスマートに展開したりできる英語力だと思います。高い英語力を発揮するためには、純粋な英語力だけ鍛えていても不十分なのです。

ぜひ、日本語でも英語でも、たくさん本を読んだりドキュメンタリーやニュースを観たりして、知識や見聞を深めてください。

前提を変える

「英語で学ぶ」にシフトすべきもう1つの理由は、良い意味で英語から意識が逸れるからです。

英語が単なる手段になっていると、
「書かれている内容を理解できているか」
「伝えたい内容が伝わっているか」
という上位目標に意識が向いており、その手段でしかない英語には良い意味で意識が向いていない状態になります。

「英語を学ぶ」状態のときは、無意識に「英語が使えるようになればいいな=まだ自分は英語を使えない」という認識を持っています。脳は無意識な自己認識を現実にするように振る舞うという特徴があります。この現象を「自己成就的予言」と言います。

逆に、英語が手段になると、無意識に「読めて当然」「話せて当然」という前提を持つことになるので、その自己認識を現実にするように自分の能力も成長していきます。

考えすぎて英語が話せなくなる人たち

英語に意識が向きすぎているケースについて考えてみましょう。

「彼女はがんで亡くなった / She died of cancer.」
と言いたい場面で、英語に意識が向きすぎるあまり、"die of"なのか、 "die by"なのか"die with"なのかが急に心配になって固まってしまうことがあります。

十分にインプット学習を積んで "die of"と表現することは無意識レベルで記憶しているのにも関わらず、つまり考えなければスムーズに正しく発話できていたのにも関わらず、意識しすぎることで急に自信がなくなり、フリーズしてしまうのです。
逆に、上手く話せる人や、上達が速い人は、英語にあまり意識が向いていません。

受講者の方の例を1つご紹介します。
その方は完璧主義的な傾向が強く、読んでいる文章のわからない単語や、自分の発話の文法の小さなミスが気になってしまい、学習が効率的に進みませんでした。読解でも発話でも、枝葉末節にとらわれてなかなか前に進めませんでした。

しかし、
「この文章を5分間で読んだあと、その内容を1分以内で私に英語で伝えてください」
とお伝えし、タイマーを表示して厳密に時間の制約を設けると、すんなり理解して要点を押さえたスムーズな説明をしてくださいました。

「5分で理解し1分で伝えなければならない」という目的を設定し、英語をその単なる手段に落とすことで、①英語は使えて当たり前という前提認識が無意識に生まれ、②枝葉末節に気を取られる余裕を(良い意味で)奪われたことで、パフォーマンスも学習効果も向上させることができました。

直感に反するかもしれませんが、英語を上達させたいと思ったら、上位目標を設定して英語から意識を逸らす方が上手くいくのです。

最後に

ということで、「英語を学ぶ」から「英語で学ぶ」にシフトすべき2つの理由をお伝えしてきました。

簡単にまとめると、

①言葉の理解には、知識や教養を活用して予測を立てる力(トップダウン処理)が重要。トップダウン処理を向上させるためには様々なことを(日本語・英語問わず)学び知識や考えを深める必要がある

②上位目標を据えて英語から意識を逸らすことで「英語はできて当たり前」という認識に切り替わり、些細な点にこだわらずダイナミックに英語が使えるようになっていく

ということをお伝えしてきました。ぜひ、英語で様々なことを学び世界への理解を深めていく知的探求を楽しみつつ、ついでに英語も気づいたら伸びていた、という一石二鳥を堪能していただければと思います。

貴重な時間を割いて最後まで読んでくださりありがとうございました。みなさんの英語学習の成功を心から祈っています。

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