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佐久間マリさん

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佐久間マリさんの作品が大好きです。 特に男子がとても魅力的で、物語は大きな出来事がドカンと起こるわけではないですが、心が切なくギュッとなります。 沢山の方にこの切なさを。。。
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#オフィスラブ

29.堂道課長は今夜ヒマ

29.堂道課長は今夜ヒマ

1~5話 6〜10話 11~15話 16~20話 21話 22話 23話 24話 25話
26話  27話 28話 (全31話)

「オイ、榮倉。やり直しー」

「ハイッ」

「尾藤ー、数字間違ってんぞー」

「すんません!」

「椎野ー、まだかー」

「あと十分くらいで……!」

近頃の堂道は少し変わったと糸は見ている。

昼休憩、最近の堂道の変化について明るく考えていたのに、夏実が殺意たっぷり

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28.堂道課長は腹をくくる

28.堂道課長は腹をくくる

1~5話 6〜10話 11~15話 16~20話 21話 22話 23話 24話 25話 26話  27話

「お待たせしました」

糸がシャワーを浴びて出てくると、堂道は所在なさげにベッドを背に床に座っていた。

「……ああ、俺こそお先」

ピンク色のハート型のクッションを抱いている。と言っても、かわいく胸に抱いているわけでは当然なく、手持無沙汰のあまり手慰みに押しつぶしていると言った方が正しい

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26.堂道課長は覚悟している

26.堂道課長は覚悟している

1~5話 6〜10話 11~15話 16~20話 21話 22話 23話 24話 25話

「……布団、オッサン臭いか」

 堂道の寝室にはやたらと大きなベッドがあった。 
 クロゼットの扉が開きっぱなしのままになっていて、糸がシャワーを浴びている間に、それを取り繕おうとも片づけようとも思わなかったらしい。
 
 ベッドサイドライトの調光だけがぼんやりと部屋を照らす。
 互いに一度果て、糸は後ろか

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25.堂道課長は帰宅する

25.堂道課長は帰宅する

1~5話 6〜10話 11~15話 16~20話 21話 22話 23話 24話 

 糸は、定時を過ぎるのを待って、羽切をたずねた。
 二課の課長席は不在だ。堂道は会議中らしい。

「あの、一応、付き合うことに……」

「……え、まじ! うそ、ほんとに!? 玉響さん、すごいじゃん!」

 けしかけたものの、糸たちの進展はどうやら予想外だったようで、羽切のリアクションは、しばらく驚いたのちの祝福だ

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24.堂道課長は変わらない

24.堂道課長は変わらない

1~5話 6〜10話 11~15話 16~20話 21話 22話 23話

「なにやってたんだよ! なんでまだできてねぇんだよ! こんな資料でクライアント納得させられると思ってんのかよ!」

「……堂道は今日も朝から絶好調だなぁ」

 羽切は肩をすくめながら、ちらりと糸を見た。
 パーティションを超えて聞こえてくる怒鳴り声に、一課のミーティングはさっきから何度も中断を余儀なくされている。

 今日

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23.堂道課長は……

23.堂道課長は……

1~5話 6〜10話 11~15話 16~20話 21話 22話

 部屋に着いて、鍵を開け、鞄を置いて、腕時計を外し、ネクタイを緩める。
 堂道がそれらをする間、糸は何も言えず所在なさげに立っていた。
 ヒールの細いかかとが、ふかふかの絨毯に埋まっている。

 上着を脱いで、ワイシャツ姿になった堂道は、ミニバーに置かれていたミネラルウォーターのボトルをひねると、喉を鳴らして飲んだ。

「そう言え

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22.堂道課長は信用できない

22.堂道課長は信用できない

1~5話 6〜10話 11~15話 16~20話 21話

22.堂道課長は信用できない

「腹減ったー。せっかくだし、ひつまぶしでも食ってくか」

 駐車場に停めた社用車に向かいながらそう言って、堂道は首を鳴らした。
 予想以上の展開に、糸は思考が追い付かない。

 堂道とのドライブは行き道だけで、帰りは、車であれ電車であれ一人だろうと思っていた。
 それでも十分すぎる。こんな棚ボタ出張デートを

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