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エドヒガン~旅の支度2

今夏、友人のNanaと旅をする。
その下準備のために色々調べていると物事はあらぬ方向に進んでいく。
(私のあるあるである)

前回はベーグルであった。

そして今回は、旅の前に彼の地の歴史を(軽く・(笑))知りたいと手にした一冊の本が・・・実は壮大な物語であった。

小説仕立てだが、史実に基づいて進められてゆく。
そのごく最初のところで、こんなくだりがあった。

植物学者である慎の父が、日本の多様な桜が凄まじい勢いでソメイヨシノに塗り替えられていくのを嘆いていたことを思い出す。
「その土地だからこそ、そこの桜が美しいのに。ソメイヨシノになってから、いつしか桜はいっせいに咲き、あっという間に散るものだという認識に変わってしまった」
かつては東京で最も多かったというエドヒガンもずいぶん減ってしまって、と嘆いていたが・・・

  また、桜の国で  須賀しのぶ 著

私にとってもまさしく、桜はいっせいに咲き、あっという間に散るものである。東京の家の裏庭に一本の古い早咲きの桜があるにもかかわらず。
それがほとんど桜として私の中でカウントされていなかった証拠に
先日の強風の前の満開時
写真を撮るどころか
見上げることも頭から零れ落ちていた。

強風に耐えて一輪の花が残っていた

今朝ゴミを出した折、ちょうど草を引いていた隣人がこう話した。
桜がもう咲きそうですね、と私が声をかけたのに応じて

そうですね、
エドヒガンは散りましたけれどねぇ。
うちに大きく育ったのはお宅の方からやってきたものですよ。

なんでもうちのエドヒガン桜の根っこが塀の下をくぐってお隣へと伸びていったらしい。

私たちがここに住む前の住人、いやそのまた前の住人が植えたものではないかと思う。

この本に描かれているように第二次世界大戦より前、今いる東京のあたりにはエドヒガンが多く咲いていたのかもしれない。

ご近所に住む東京大空襲を知る女性が、あなたのお家のあたりまで火が来ていましたと言っていたのを思い出す。

それならばこのエドヒガンは空襲を生き残ったのかもしれない。

さて、この本にはかの国で、戦争に向かい戦争に突入していく様子が、私が知っていたのとは全く別の視点で描かれている。

そして現在もまたこの国では戦争への準備をする人々がいる。

たまたま見かけた動画では
銃を購入したり
子供を連れてシューティングレンジに行って練習を始めている人が増えているとあった。
自国を守るために
家族を守るために。

え~!お気楽気分の旅行は大丈夫か・・・?

2024年2月現在、この国はすでに隣国から200万人近い戦争避難民を受け入れているらしい。

私の住むカナダでは戦禍にある避難民のための一時ビザの申請が3月末までと言うことで、駆け込みでその数が増えているという。
戦争が始まって2年。それは終わる気配がない。
ちなみにカナダ政府は戦争が始まってから936,293件のこのビザを発行したとあった。

東京に戻っていると、そんなことがすっかり遠い国の出来事になってしまっている。

しかしそんな日本も、かつて多くのシベリア孤児を救出した事実をこの本を読むまで私は知らなかった。
それが物語でないことが分かったのは、子供たちを預かった施設が現存しているからだ。
同じ機構ではないと思うが、その隣に乳児院があって、私の友人でカナダ生まれで今はオーストラリアに住む彼女が、その乳児院の男の子をひとり養子にしたのである。
広尾のその乳児院を男の子が10歳になった時に一緒に訪れたことがあった。

お気楽な私からすると信じられないことに
現在もなお止まることなく戦争が起きている。

そしてそれはいつもっと身近になってやって来るかわからない。

エドヒガンもそして一斉に咲きほこるソメイヨシノも
この先戦禍に巻き込まれることがないよう祈るばかりである。

祈るだけ・・?
あのね~きみは全く・・・っと
ベトナム戦争に行った夫から言われそうであるが・・・。


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