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「よいお年を」で締めくくられる、今年の恋。

娘の入院に関して、番外編のような話がある。

(※ちなみに、年末まで娘の胃は不調なのかと思いきや、もう全快。あっというまに食欲も戻ったし、元気で普通の生活にもどっています。)

入院をする時に、必ず必要な「連帯保証人」。これ、世帯を共にしている人には不可能で、必ず世帯が違う人にお願いする必要がある。となると普通は親戚の人にお願いするのだろうが、私は近くに親戚もいないので、あのF氏(職場の上司かつ一時期恋人だった人)にお願いすることにした。

翌日、紙を受け取った時に、支払者との関係を見てしまった。…「上司」上司だけど最近全然話してないと思いにふける。いやまぁ「元恋人」なんて書いてあってもバカバカしいけど(笑)。

娘が退院した翌日は、自宅で娘の様子見だった。その次の日(12/30)、私は買い物ついでにF氏へのお礼をしなきゃなと思い、思い切ってビールの箱を買うことにした。

親戚でもないのに、名前を書いてもらえる関係になったのだ。たった1泊の娘の入院だったけど、今年はお世話になったのもあるし、一言伝えにいかなきゃなぁと思った。

こればかりは、いつものように無言で物を置いておくだけじゃダメだと思った。

ビールを買い、作業所に向かうと、朝仕事に行った母の車はもうなかった。てっきり、いつも通り母がいる所で渡さなくちゃならないと思っていたから。
買い物についてきた娘も、天気が悪いから車の中にいるという。

(あぁ…直接誰もいないところで挨拶しなくちゃならないのか。)

緊張しながら、2階へ向かう。

「すいませーん!」
(…私は苗字を呼ぶことも、緊張してできてない)
「ハイ」

F氏は、事務所のドアを開けた。こんなに近距離で、2人で話すのは夏ぶりだ。別にもう恋はしてないし、自分としては気まずくないんだけど、なぜかこの人との近距離になると、すごく緊張してしまう。

もっとちゃんと話せばよかったけど、言葉たらずになってしまった。

「名前を勝手に借りてしまってすいません。」

主語がない(笑)。どうして考えていることの8割も話せなくなってしまうのだろう。考えていた言葉は、「娘の入院の連帯保証人になってもらい、ありがとうございます。」じゃなかったのか??私。

それでも、F氏は少し笑った顔で分かってくれた。

「あぁ、いいんですよ。こんなにたくさん、お礼しないでください。」

そして、私はビールの箱を置き、別に言わなくていいことまで、言葉足らずに話してしまった。

「今年はお世話になりました。また来年もよろしくお願いします。」

(私はまた、来年もF氏と仕事をするのだろうか。いやできるのだろうか…と言ってから思った。)

「いえ、よいお年を…」

そういって、F氏は私に頭を下げてくれた。その後は、頭が真っ白になって覚えていない。とりあえず渡せたぞという安堵感と、いつも言葉が少ないF氏が自分から「よいお年を」と言ってくれたことを嬉しく感じてしまい、私は走って娘が乗っている車へ向かった。

***

この職場に入って3年目が終わろうとしている。こんなに気持ちのいい、仕事納めを初めて経験した。普段喋らないからこその緊張感。もうすでに終わっている恋。それでも、気持ちの良い年越しができそうだと感じてしまった。

やっぱり私は、少し遠くからF氏を見守り仕事をしていたいのだ。仕事しかできない器用貧乏。人づき合いや距離感が難しい彼。近づきすぎると付き合えなくなる彼だからこそ、ほどよい距離が必要なのだ。

来年、私達はどんな関係になっているのだろう。関係は、はっきりしなくていい。ただこの距離感で、たまに会話すると緊張してしまう関係が好きなのかもしれない。


でもいつか…

信頼してもらえるようになってほしい。心をもう少し許してほしい。

そんな願いは、果たして叶うのだろうか。

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